ロードサイドの風景を変えた
圧倒的なスケール
「流通店舗事業を本格的に展開し始めた1970年代半ばから現在まで、施工実績は3万6500棟を超えています」と大和ハウス工業の藤谷修取締役専務執行役員は語る。
藤谷 修
きっかけは、同社の創業者である石橋信夫氏にある土地オーナーから寄せられた、保有する土地の有効活用についての相談だった。一方では、外食産業をはじめ、従来の商店街ではない出店立地を希望する商業店舗が現れてきた。住宅地が郊外に形成され始めていた当時、通勤や産業などに利用する幹線道路沿いでのビジネスチャンスを確信していた大和ハウス工業は、両者が抱える課題を解決する答えとして、ロードサイドでの商業施設の開発という新しい事業をいち早くスタートさせたというわけだ。
藤谷氏は続ける。「住宅事業を展開している弊社は、全国各地に営業拠点がありますから、全国展開を視野に入れていた外食産業などのテナント様のニーズにも迅速に応えることができたのです」。
土地オーナー(LandOwner)の要望や課題に真摯に向き合い、立地条件や敷地面積、周辺環境などを総合的に検討して、テナント(Company)のニーズとつなぐ。それが、大和ハウス工業が確立した「LOC(ロック)システム」だ。誘致するテナントは外食産業にとどまらず、衣料品販売、ドラッグストアなど幅広い業種に広がっている。事業スキームも土地オーナーがテナントと直接契約して土地と建物を賃貸するスキームのほか、土地オーナーがテナントに期限付きで土地のみを賃貸するスキームなどさまざま。それぞれのニーズに対応した提案を繰り広げている。
現在、大和ハウス工業がリレーションを持つ土地オーナーは、実に約4万人。テナントとして継続的に出店している企業は約4000社に及ぶ。現在では当たり前ともなっている商業施設が建ち並ぶロードサイドの風景は、大和ハウス工業がその多くを担っていると言っても過言ではないだろう。
土地オーナーとの信頼関係が
次の仕事を生み出す
こうした圧倒的な実績は、一つひとつの緻密な仕事が積み重なった結果であることを見逃してはならない。土地オーナーが抱える課題は、一人ずつ異なる。丁寧に耳を傾けながら信頼関係を構築し、相談される存在とならなければ始まらないのだ。さらに、事業計画を立て、最適なテナントを誘致する一連の仕事は、どれも大和ハウス工業の担当者が直接、交渉などを担う。「ですから、土地オーナー様に対して建築および税務に関するご相談から、テナント様の状況のご説明など、一気通貫のきめ細かい対応が可能になるのです。そして、契約期間(たとえば20年間)の長期にわたって土地オーナー様と緊密なリレーションを維持し続けるのが私どもの仕事の進め方なのです」と藤谷氏。
そればかりではない。
全国にオーナー会を組織して運営。人的にもコスト的にも経営リソースを割かなくてはならないが、多くの土地オーナーから、ほかの保有物件の利用相談や契約満了を視野に入れた次の相談を受けることが多く、知り合いの土地オーナーを紹介してもらうことも珍しいことではない。
もちろん、こうした長期的かつ緊密なリレーションを構築する姿勢は、テナントに対しても貫かれている。「テナント様とのリレーションを担う専門部隊があり、それぞれに担当者をつけています。テナント様の出店戦略を理解し、戦略の遂行を支援するために最適な土地を提案していくのです。もちろん、店舗の施工やオープン後のメンテナンスなどさまざまな面で長期的にフォローをさせていただいています。テナント様には、出店に関する実務を私どもにアウトソーシングするつもりでご活用くださいと伝えています。おかげさまで、数多くのテナント様から継続的にご相談をいただいています」と藤谷氏は力強い。
ネットワーク力、コンサル力、誘致力、
営業力、そして総合力
このようにビジネスパートナーから絶大なる信頼を勝ち得ている流通店舗事業のもとに、最近では店舗以外の業態から引き合いが増加。「中でも目立つのが、地域の特性を活かした事業がしたい、社会貢献度が高い土地活用をしたいという理由から、介護施設および店舗付賃貸住宅を要望される土地オーナー様が増えていることです」と藤谷氏。
さらに、より広大な土地を一括して任せたいという複数のオーナーや法人地主からの相談も、大都市の近郊や地方で多くなっているという。このようなケースでは、大規模な複合商業施設や住宅・賃貸住宅などを組み合わせた事業計画を提案。そうした総合的な企画を提案できるのは、大和ハウス工業が住宅事業や賃貸住宅事業、建築事業なども展開しているからだ。「お客様とのネットワーク力、多様な要望や条件に応じて最適な事業プランを提案できるコンサルティング力、テナント誘致力、全国に拠点を展開する営業力、そして建築事業や賃貸住宅事業といった幅広い事業やグループ会社と連携した総合力……。これこそが、私どもの強みだと言えるでしょう」と藤谷氏は締めくくった。
そして今、これまで培った経験とノウハウを活かして、台湾や韓国をはじめ東南アジアなど海外への展開も始めている。これからも、さまざまな土地の風景を変えていくに違いない。