クライアントのその先を見据え
もう一つの顧客満足度にフォーカスする新機軸
大和ハウス工業
防犯配慮型賃貸住宅が
女性から大きな支持を獲得
賃貸住宅事業の顧客は、土地を有効活用したいと考えるオーナーである。緊密なコミュニケーションによってオーナーと向き合い、さまざまな要望や条件を調整しながら賃貸住宅を建設していく。
だが、大和ハウス工業の堀福次郎取締役常務執行役員はふと思った。オーナーのその先に、もう一人の顧客がいるのではないか、と。
「賃貸住宅を建てた後、オーナー様が最も喜ぶことは何かと突き詰めていくと、それは満室経営にあるのではないでしょうか。高い入居率を実現するためには、そこに暮らすご入居者が喜ぶ住まいを提供しなくてはなりません。つまり、オーナー様の向こう側にいらっしゃるご入居者も、私どもの大事なお客様なのです」
大和ハウス工業では、建設した賃貸住宅をグループ会社が一括で借上げるスキームも提供している。そうした場合、オーナーは賃料収入を確保することができるのだが、それでも高い入居率は将来への大きな安心感をもたらすはずだ。
では、選ばれる賃貸住宅とは……。「私どもが管理している賃貸住宅を調査した結果、単身の方が入居されている部屋の女性比率は27%でした。しかも、1階に住んでいる女性は、全体の19%程度だったのです。ここに一つのポイントがあると考えました。賃貸住宅全体のマーケットを見渡しても、女性に選ばれるという要素は大きな競争力になると確信したのです」。
防犯上の理由から女性は1階を避けている。ならば、そうした不安を払拭すれば、女性からの支持を得られるのではないか。
狙いは当たった。2010年に業界に先駆けてホームセキュリティのシステムを各戸に標準装備する防犯配慮型賃貸住宅をリリース。センサーが異常を感知した際や居住者が非常ボタンを押した際に、大手警備会社の警備員が駆けつけてくれるという安心感がうけて、大ヒット商品に。翌年には、女性の住み心地をより強く意識した新シリーズがデビューし、ロングセラーへの歩みを始める。
「セキュリティ面での配慮はもちろん、賃貸住宅としては広めの一坪タイプのユニットバスやドレッサータイプの洗面化粧台、ウォークスルークローゼットをはじめとする収納スペースも専有面積の10%以上を確保するなど、女性向けのアイテムやきめ細かな配慮をちりばめています」