「宿泊クーポン返礼品」がもたらす新たな旅行の形 楽天が仕掛ける「地域活性化の起爆剤」その正体
楽天がユーザーに提供する「新しい旅行体験」
宿泊クーポン返礼品は、ユーザーが特定の自治体にふるさと納税を行うことでクーポンを受け取れる仕組みだ。クーポン額は寄付金額の最大30%相当で、全国旅行支援との併用も可能となっている(2022年11月時点)。
「楽天トラベルクーポン返礼品」を21年9月に立ち上げたメンバーの一人である、楽天グループ 地方創生事業 ヴァイスマネージャー・山田穂高氏は、サービス開始の経緯をこう語る。
「全国各地の宿泊施設を網羅する『楽天トラベル』と、楽天会員が便利にふるさと納税を行える『楽天ふるさと納税』の2つを掛け合わせることで、地方創生や地域活性化に大きく貢献できるのではないかと始めたのが『楽天トラベルクーポン返礼品』です。ユーザーは好きな地域を選んで、旅行を楽しみながらふるさと納税という形でも応援でき、自治体にとっては寄付金の増加や旅行者の滞在によって、経済効果の恩恵を受けられる。楽天グループの強みを生かし、双方に大きな価値をもたらしたいという思いで企画しました」
楽天トラベルクーポン返礼品には実に約400の自治体と、1万8000軒以上の宿泊施設が参画する(22年10月現在)。以前から多くの自治体や宿泊施設と連携している楽天のスケールメリットを生かした、他に類を見ないサービスといえるだろう。国内の多くのエリアで利用が可能な点は、ユーザーにとって大きなメリットとなる。
また、手続きの簡便さも楽天トラベルクーポン返礼品の特長の1つだ。ユーザーはまず、寄付額や対象の自治体、宿泊施設などの条件を基に好みの宿泊クーポンを選び、寄付を申し込む。すると通常2~3日後、早くて翌日にユーザーのアカウントにクーポンが付与される。あとはクーポンをクリックして宿泊施設を予約し、現地に赴くだけだ(※宿泊施設の予約期限は、クーポン付与後89日以内)。
「発送の手配が生じる実物の返礼品と違い、オンラインで完結するため、返礼品を送る側にとっても受け取る側にとっても便利な仕組みです。クーポンを利用することで、普段はなかなか利用できないホテルなどに宿泊するユーザーの方も、多くいらっしゃいます」(山田氏)
域内のさまざまな事業者に波及する「経済効果」
ふるさと納税を通じて、地域を応援しながら旅行が楽しめる。ユーザーにとってはまさに「一石二鳥」のサービス。対して、自治体にはどのような価値が生まれたのだろうか。サイト開設当初から参画する自治体の1つである、函館市 経済部経済企画課長 嶽本政弘氏は、こう振り返る。
「当市の主要産業である観光は、コロナ禍によって大きなダメージを受けました。その回復を図るための1つの手段として考えたのが、ふるさと納税です。とくに『楽天ふるさと納税』からの寄付は圧倒的なシェアを占め、年度によっては全体の件数の4割を占めるほどに。宿泊クーポン返礼品においても、集客力が極めて高い『楽天トラベル』との提携が、当市への旅行者を増やす決め手になると考えました」
函館市が楽天トラベルクーポン返礼品に参画して1年余り、宿泊クーポン返礼品を扱う宿泊施設は約130軒に増加した(22年11月現在)。22年度には、宿泊クーポン返礼品の平均寄付額がふるさと納税全体の平均寄付額の約4倍に上るなど、想定を大幅に上回る実績を残した。また宿泊クーポン返礼品による観光客の増加は、想定を超える好影響をもたらしたと嶽本氏は話す。
「宿泊施設と私ども自治体だけでなく、域内のさまざまな事業者に『経済効果』が発生するのが、楽天トラベルクーポン返礼品の非常によくできた仕組みです」
函館山への観光を例に挙げてみよう。山頂へ登るためにはロープウェーやバス、レンタカーを使うことになる。到着後は周辺のレストランでの食事や土産物店でのショッピングなど、そこでしか手に入らないものを購入したくなるだろう。このように宿泊施設だけではなく、旅行に関連した多くの関係者が恩恵を受けることができるのも、楽天トラベルクーポン返礼品の大きなメリットだ。
さらに、地域に活力を生み出すユーザーの“応援消費”は、旅行後も末永く続く可能性がある。
「一度訪れることで“なじみ”や“愛着”が生まれ、旅行から戻った後も、その地域のモノやコトにお金を使う可能性が一層高まります。もちろんリピートで旅行をしたり、その地域で新たにビジネスを始めたり、移住ということにもつながりえます。楽天トラベルクーポン返礼品をきっかけに、その地域の『交流人口』になる形も今後の展開として考えられます」(山田氏)
クーポン返礼品が描く「人と地域の未来像」
楽天トラベルクーポン返礼品は、旅行者と自治体のみならず、宿泊施設や多くの域内事業者を取り巻き、壮大な「Win-Winの相乗効果」をもたらす仕組みとなりうるだろう。地方創生を強力に推進する、まさにふるさと納税の意義を体現した制度ともいえるサービスの今後について、函館市と楽天はどのような展望を持っているのだろうか。
「返礼品クーポンを、宿泊施設だけでなく飲食店や観光施設、ゴルフ場などさまざまなアクティビティにまで拡大できれば、より地域の活性化へダイナミックにつなげられます。利用者をさらに広げていく取り組みと合わせて、ぜひ幅広い領域で事業展開する楽天のお力を借りながら、実現していきたいですね」(嶽本氏)
「幅広い事業を展開する楽天グループの強みを生かして、楽天トラベルクーポン返礼品の利用範囲を広げるとともに、ユーザーには地域を応援するための最適な手段の1つとしてぜひ利用してもらいたいですね。そしてより多くのユーザーと地域の自治体、宿泊施設から支持を得られるよう、改善を重ねていきたいと思います。今後の取り組みにもぜひご期待ください」(山田氏)
「その場所へ足を運ぶこと」のハードルは、決して低くはない。だからこそ、そのハードルをひとたび越えることで旅行者は得がたい体験ができ、地域は複層的・継続的に潤い、活力を得る。楽天トラベルクーポン返礼品は、旅を通して人と地域の“未来”を変える、大きなきっかけとなりうる、希有な取り組みといえるだろう。