カメラオフの会議でも相手の反応がわかるツール 日立グループの知見を生かした新規事業

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オンラインコミュニケーション
オンライン会議が普及した今ならではの、コミュニケーションの課題とは?
コロナ禍を機に、急速に進んだワークスタイルの変化。リモートワークの広がりを受けて、オンラインコミュニケーションは欠かせないものとなった。その一方で、オンライン会議に、対面で話すときとは違った難しさや課題を感じている人もいるだろう。多くの人が感じているオンライン会議の課題とは何か、それを解決するにはどうしたらよいのか。日立の知見を生かした次世代コミュニケーションツール「Facilex」を開発した日立ドキュメントソリューションズ 新事業企画開発本部 本部長の小川哲也氏に話を聞いた。

便利だけど反応が見えにくい
オンライン会議に感じる課題

毎日オフィスに出社する。会議室に集まって会議をする。顧客のオフィスを訪問する──。こうしたこれまでのワークスタイルが、コロナ禍を機にガラリと変わった。それに伴い大きく変化したのが、コミュニケーションのあり方だ。顔を合わせて話すことが当たり前だったが、オンラインコミュニケーションへ移行している。

こうした中、オンラインコミュニケーションに関する悩みも増えている。

「コミュニケーション」「オフィスワーク」「モノづくり」「IT」の事業分野で、主に日立グループの事業拡大と業務効率向上、価値創造に貢献してきた日立ドキュメントソリューションズ。同社の新事業推進を担う新事業企画開発本部 本部長の小川哲也氏はこう指摘する。

日立ドキュメントソリューションズ 新事業企画開発本部 本部長 小川哲也氏
日立ドキュメントソリューションズ
新事業企画開発本部 本部長
小川哲也氏

「対面で話すとき、人は相手のしぐさや目線など、言葉以外の反応をくみ取っています。しかし、オンラインコミュニケーションでは、言葉以外のコミュニケーションが取りづらいもの。とくにオンライン会議はカメラオフで行う場合も多く、相手の反応が見えにくいと感じている方が多いようです。テレワーク下におけるコミュニケーション実態についての独自調査では、オンライン会議の困り事として57.9%の方が『相手の反応がわかりにくい』、49.6%の方が『微妙なニュアンスが伝わらない』と感じていることがわかりました」
 

日立ドキュメントソリューションズは2019年ごろから、日立製作所研究開発グループや日立コンサルティングと共同で、人と人、場、情報をつなぐコミュニケーション基盤の研究に取り組んできた。そこで、デジタルの力を使ってオンライン会議におけるコミュニケーションを補完し、リアルなコミュニケーションに近づける新規事業として開発されたのが、次世代コミュニケーションツール「Facilex(ファシレックス)」だ。

Facilexの画面例
Facilexの画面例(本ページで使用している画面は、実際の画面と異なる場合があります)

「Facilexはオンライン会議の際に参加者の反応を可視化し、コミュニケーションを補完するツールです。オンライン会議ツール*とは別に、参加者がブラウザーでFacilexにアクセスすると、参加者の反応が『反応マップ』として表示されます。会議のファシリテーターやプレゼンターは、『反応マップ』で参加者の反応を把握することで、対面のように反応を見ながらコミュニケーションすることが可能になるのです」
*Microsoft Teams

オンライン会議参加者の反応を
把握できる「反応マップ」

実際にFacilexを使ってみた。オンライン会議ツールで会議を設定したら、同じようにFacilexも同時刻で設定し、会議参加者に通知する。参加者はオンライン会議の開始に合わせてブラウザーでFacilexにアクセスし、ヘッドセット(マイク付きイヤホン・ヘッドホン)を着ける。ファシリテーターとプレゼンターのFacilex画面には「反応マップ」が表示され、参加者が話の内容を理解しているのかどうかがわかる。実際に会議中、あるメンバーが「なるほど」とうなずくと、そのメンバーのアイコンが「理解」を表すエリアに移動した。

反応マップに表示される参加者のアイコン
反応マップに表示される参加者のアイコン

それにしても、なぜ参加者の反応がここまでわかるのだろうか。

「Facilexではパソコンのカメラの映像からうなずきや首振りといった動作を分析し、ヘッドセットの音声では発話を分析し、文字起こししています。この映像分析と音声分析の結果を複合的に判断し、人の反応をマップに表示しているのです。こうした映像・音声分析などには、日立製作所研究開発グループの研究成果が使われています」

概念実証(PoC)の積み重ねで
言行不一致もしっかり把握

では、具体的にどんな情報がどう処理されているのか。

「具体的に言いますと、参加者が首を縦に振れば『肯定』、横に動かせば『否定』と判断します。しかし、実際には、その人のしぐさと発する言葉が一致しない場合がありますよね。それをどう分析するかがFacilexの肝となります。そのため、当社と日立製作所研究開発グループでは実際にFacilexを使ってさまざまなオンライン会議を実施し、会議中の反応を可視化したものと、参加者の意図が整合しているかどうかの概念実証を積み重ね、精度を高めていったのです」

Facilexはコミュニケーションに必要な相手の情報を補完するツールである。顔の見えない相手の反応に合わせて説明を補足したり、キーパーソンの反応を確認しながら的確な発言やプレゼンテーションを行うこともできる。なかなか発言できない参加者に発言を促し、議論を活性化することも可能だ。

金融業界オンライン会議
金融業界など、顧客の反応を把握することが重要な場での活用可能性が広がる(写真はイメージ)

「ただし、業種によって使われる専門用語も異なるうえ、会議の種類やシーンごとに、コミュニケーションのあり方もそれぞれ違います。だからこそ、さらに精度を上げていこうと考えています。今後はしぐさや言葉だけでなく、表情や感情、さらには血流などの分析によって高度化する研究開発を重ねていきます。しかし、精度向上は私たちだけでできることではありません。ユーザーの皆様にご協力をいただきながら概念実証を積み重ね、一緒に課題を解決しながらより顧客価値の高いサービスを提供したいと考えています」

オンライン会議だからこそ
できる効率化をサポート

Facilexにはコミュニケーションを円滑にする機能がほかにもある。それが「進行ステータス」だ。これは、会議のタイムスケジュールとともに、各アジェンダの内容を設定できるというもの。Facilexの画面に表示され、アジェンダが完了するごとにファシリテーターがボタンをクリックすると、どのアジェンダにどのくらいの時間がかかったのかが記録に残る。会議の進行の仕方についても、後から振り返りができるのだ。

さらに、コミュニケーションを効率化する機能もある。参加者の発話が文字起こしされ、「発言録」として残るのだ。メモを取らずに済むため、会議に集中できる。加えて、会議終了後に「発言録」から重要な発言を編集して「議事録」を効率よく作成することも可能だ。

左:発言録 右:議事録
左/発言録、右/議事録

「Facilexに関する事前調査では、個人顧客とのコミュニケーションが多い金融業界などの皆様に強い関心を持っていただいています。オフィス向けに開発したツールではありますが、セミナーやイベント、教育の現場でも活用していただけるはず。今後は蓄積したデータから次のアクションを支援するコーチング支援機能や、最適行動予測の支援機能も実装できたらと考えています。その会議がうまくいったのかどうか、データから自己分析評価する機能も実現させたいですね」

すでになくてはならないコミュニケーションスタイルの1つとなったオンライン会議。今後はオンラインでも、よりリアルに近いコミュニケーションが求められていくだろう。オンラインコミュニケーションを補完するツールの存在感は、今後さらに強まっていくはずだ。

次世代コミュニケーションツール「Facilex(ファシレックス)」はこちら

※反応マップ・発言録の正確度や結果表示までの時間は利用環境などにより変わることがあります
※現バージョンの反応マップでは、発話による日本語キーワードと、日本の慣習を基にしたジェスチャーの検知から総合的に判断し反応を表示します
※Facilexは、株式会社 日立ドキュメントソリューションズの登録商標です
※本製品は、株式会社 日立ドキュメントソリューションズにより特許出願中です
※Microsoft Teamsは、米国Microsoft Corp.の商標または登録商標です