識者が語る「人的資本の開示」対応の"第一歩"とは 加速する「可視化の流れ」、乗り遅れないために

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企業の競争力や価値創造の源泉としての「人材」の重要性に、企業経営者や人事から注目が集まっている。政府も人への投資に注力する方針で、その一環として有価証券報告書での開示義務化も視野に、人的資本情報の可視化を企業に促している。一方で、対応を求められる企業の中には「何をしたらいいかわからない」と悩む声も聞かれる。人的資本開示をめぐる国内の動向や、開示に向けて行うべき取り組みについて、この分野に詳しい山形大学学術研究院産学連携教授の岩本隆氏に聞いた。
※このページは、2022年11月18日に公開した内容に一部加筆、修正を加え再公開しました。

「定量的な可視化」により、自社の課題が見えてくる

企業価値のうち無形資産の占める割合が高まる昨今。人材をコストではなく成長やイノベーションを生み出す無形の資本と捉え、人材の価値を最大限に引き出し競争力の向上を目指す経営手法「人的資本経営」を推進する企業が増えている。

それと同時に強まっているのが、国や投資家からの人的資本の開示要請だ。2022年8月には、内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表。人的資本に関する株式市場への情報開示のあり方にフォーカスしたガイドラインで、基本的な考え方や開示に向けた準備方法などを示したことで、人的資本情報を可視化させる流れが加速するとみられている。

人的資本の可視化に当たっては、前提となるビジョンの設定や、ビジネスモデルや経営戦略の明確化が欠かせない。

山形大学学術研究院 産学連携教授 岩本隆氏
山形大学学術研究院
産学連携教授 岩本隆
東京大学工学部金属工学科卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻で博士号(Ph.D.)を取得。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月から22年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。18年9月から山形大学学術研究院産学連携教授を務める。(一社)ICT CONNECT 21理事、(一社)日本CHRO協会理事、(一社)日本パブリックアフェアーズ協会理事なども兼任している

「経営戦略に人材戦略を連動させるためには、中長期的な視点で経営戦略を立て、それを実行するための人材ポートフォリオをつくることが重要です。また、具体的な施策の検討に向けては、自社の人的資本のデータを収集・分析する必要があります」

そう話すのは、企業の人材戦略やテクノロジー分野に詳しい、山形大学学術研究院産学連携教授の岩本隆氏。開示に向けた初めの一歩としては、18年に国際標準化機構(ISO)が発表した人的資本に関する情報開示のガイドライン「ISO 30414」への理解を深めることが役立つと語る。

「ISO 30414では人的資本の開示のメトリック(測定基準)が体系的にまとめられ、各メトリックを定量的に可視化する方法も記されています。この方法に従ってデータを収集し、議論のテーブルに載せるだけでも、自社で何が課題かが見えてくるはずです。例えば、従業員エンゲージメントのスコアなどは最低3年分のデータを整理すると、改善点が見えてくると思います」(岩本氏)

急速に関心が高まる「人的資本経営」だが、キャリアウェルビーイング(キャリアの幸福)を重視する最近の若い世代との親和性が高いことから、その注力度合いが採用競争力にも影響する可能性を岩本氏は指摘する。人的資本の情報開示の流れが加速する今、改めて自社の人材戦略を見直し、人材への投資を強化していくことが重要になるだろう。

ここからダウンロードできるModisの資料では、岩本氏への取材を基に、人的資本開示をめぐる動向や情報開示に必要な取り組み、人的資本経営の推進に向けて経営者が持つべきマインドセットなどを解説している。Modisは国内企業としては3例目、「技術系人材サービス業」としては初めて、人的資本に関する情報開示のガイドライン「ISO 30414」認証を取得している。人的資本経営に関心のある企業経営者はぜひこの資料を役立ててほしい。
※同社調べ