躍進続ける大手IT企業に浸透する「絆」の強さ 3度目の入社も!再入社したくなる魅力とは

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セールスフォースのブーメラン入社社員たち
別の企業に転職したのち、古巣の職場に戻ってくる「ブーメラン人材」。長らく新卒一括採用・終身雇用が当たり前だった日本社会において、こうした「出戻り」はネガティブな事柄で、いまだ「ありえない」という不文律がある企業は少なくない。しかし、世界最大級シェアの顧客管理ソリューションシステムを提供するSalesforceは、むしろこうしたブーメラン人材を積極的に受け入れている。なぜ、そうした採用方針を実施しているのか。また、それぞれの目的を持って退職した人々はなぜ戻ってこようと考えたのだろうか。現在、Salesforceで活躍する3人の「ブーメラン人材」に話を聞いた。

再入社を決断することが自己実現の近道だとわかった

よりよい労働条件や収入、就労環境の改善など、転職を希望する理由はさまざまだ。向上心の高さから、理想的なキャリアパスを築き上げようと転職を視野に入れるビジネスパーソンも少なくない。そうした自己実現のチャンスをつかもうと行動した結果、「古巣こそ今の自分に最適な職場だ」という事実に気づいたというのが、Salesforceの新サービスや機能活用の提案を中心に営業活動を展開している大橋氏だ。

そもそも大橋氏は、中途採用組だ。情報通信企業と営業支援事業を手がける企業で営業職として経験を積んだ後、知人の紹介でSalesforceに入社。当初は六本木ヒルズが勤務地であることや給与体系などの条件に惹かれていたが、転職の決め手は面接にあったと振り返る。

「当時は28歳。前職で誇れる営業成績を残していたので、それなりに自信がありました。ところが面接で営業のロープレを行ったところ、費用対効果や顧客事例紹介に関してのフィードバックなど、面接官から徹底的にダメ出しをされたのです。自分では気づけなかった多くの視点に気づかされ、『こういう人がいる会社で働いたら、もっと強い営業パーソンに成長できる』と直感し、Salesforceで働いてみたいと強く感じました」(大橋氏)

セールスフォース・大橋氏

想いが叶い、その面接官の下に配属。「入社1年目は苦労した」というが、Salesforce流のロジカルな提案のスキル、伝わりやすい提案書のデザインなどを吸収していく。

それから6年、大橋氏は中堅・中小企業向け営業として頭角を現していくものの、「大手企業向けの営業にもチャレンジしてみたい」との意欲が高まり、知人から声がかかったこともあって再び転職を決意。「もっと強い営業パーソンになる」という自己実現の近道だと考えての行動だったが、転職先では思い描いていたような経験を得られなかったという。

結果を出すまでは辞められないと踏ん張りつつ、チームで助け合いながら成果を出すSalesforceとの営業スタイルの違いにうまくなじめない日々を過ごすことに。Salesforceを退職後も頻繁に交流していたSalesforceの元同僚が楽しそうに仕事を語る姿が、まぶしく映った。そしてSalesforceを離れて3年余りが経った頃、元上司から「君の力が必要だ」と請われ、再入社を決意した。

「再入社にあたり本当に迷いました。競合に転職したわけなので、再び受け入れてもらえるのか不安もありました。でも、元上司や先輩、仲のよかった元同僚たちに再入社を報告したときに、皆から『Welcome back!』と声をかけてもらえて本当にうれしかったです」(大橋氏)

キャリアパスを引き直し、理想へ向けて着実に形成していこうと決意。Salesforceで能力を磨くことが今の自分に必要なことだと理解した。

また「ブーメラン」を果たすことで、同僚たちの能力の高さや温かな人柄、またそうしたメンバーが集まる組織としての価値に気づかされたという。

「Salesforceには、『1人で勝つな。1人で負けるな』という助け合いの文化があります。成果を出すには貪欲でなければならず、甘えは禁物ですが、一人でできることに限りがあるのも事実。協力し合いながら成果を出せるよう、教育からサポートまで盤石の体制を整えているところもSalesforceの特徴だと感じています」(大橋氏)

わずか5カ月のブーメランで気づいた合理的な社内体制

大橋氏と同じように、転職をきっかけにSalesforceの強みやカルチャーの魅力を再認識したのがヨウ氏だ。それも、わずか5カ月という短い期間でのブーメランを果たしている。

「Salesforceを辞めてたった5カ月での再入社に、正直恥ずかしい気持ちがあったのですが、皆『おかえり』と温かく迎え入れてくれました。変なプライドに邪魔されず、自分の気持ちと正直に向き合ってよかったと痛感しています」(ヨウ氏)

セールスフォース・ヨウ氏

ヨウ氏も、自己実現に向けて格別な想いを抱いたビジネスパーソンの一人だ。大学卒業後は日系大手IT企業に就職して予算実績管理部門に勤務するも、30歳の節目に「“会社員”として成長・成功するために必要なこと」を考え抜いた結果、キャリアを見直すことに。起業家とは異なるルートで世界的リーダーになった人物について、徹底的にリサーチしたという。

「彼らに共通しているのは、プロダクトマネージャーとして革新的なサービスやプロダクトを作って世界に変革を与えていたという点。正直、新卒のときはあまり深く考えずに就職活動をしていたのですが、今後のキャリアを改めて見直したとき、成長と成功を手に入れたいなら、会社員として成功した人物たちのたどった道を参考にすることがベストな戦略ではないかと考えました」(ヨウ氏)

そうした考えから、革新的なCRM製品を提供しているSalesforceに大きな将来性を感じ、転職を果たすことに。営業戦略部門に所属し、データを活用した営業戦略策定や組織設計などの業務を担当するようになった。

順風満帆に思えたが、入社から3年目を迎えたころに「グローバルで働くプロダクトマネージャー」という自ら描いたキャリアパスを早急にかなえたい想いが募り、それを実現できそうな別の外資系IT企業に転職。ところが……

「一言で言うと、企業のカルチャーが肌に合いませんでした。転職先は、皆が競争しながら成長するカルチャーだったのですが、それよりも僕は、コラボレーションが前提となったSalesforceのほうが合っていると感じたのです」(ヨウ氏)

Salesforceでは、メンバーの成功体験の共有(サクセスシェアリング)や情報共有、ちょっとした雑談もSlackのオープンな場所で気軽にやり取りされているという。社内のビジネスツールが合理的に機能し、あらゆる手続きをストレスなく遂行できる体制が備わっていることも、そうした風通しのよい社風を下支えしている。残業時間ゼロスタイルでワーク・ライフ・バランスの取れた働き方を重視しているヨウ氏の目には、ビジネスに集中できるよう社内業務の円滑化に本気で取り組むSalesforceの姿勢が改めて魅力的に映った。

無事に再入社を果たした今は、革新的かつ社会をよりよくする製品を提供している会社で働けることの誇りを感じていると話す。

2度のブーメランへ導いた、家族的な "絆"

さらには、Salesforceでのブーメランを2度経験した人材もいる。現在、Salesforce製品に関する有償のトレーニングや資格試験を提供するTrailhead Academy部門のリーダーを務めている前川氏だ。

最初に入社したのは2003年。まだ社員が少なく知名度もなかったが、CRM製品に可能性を感じた前川氏はベンチャー企業からSalesforceへと転職。頻繁に日本支社を訪れていた創業者マーク・ベニオフ氏の話を聞く機会にも恵まれ、彼のカリスマ性にも魅了された。

入社後7年間、営業としてがむしゃらに走り続けた前川氏は、いったんキャリアの小休止でフリーランスに。しばらくすると、当時、本社で成功していた「営業で入社した新入社員向けのトレーニングプログラムを日本でも立ち上げてほしい」と上司から依頼され、再入社を決断。営業としての経験と製品理解の深さ、両方を兼ね備えた前川氏はまさにうってつけの人材で、その後は新卒向けのプログラムの構築にも携わっていく。

そうして再入社から7年が経ち、一定の貢献ができたと感じていたころ、エグゼクティブ向けプログラムの立ち上げを計画する企業を知人から紹介され、新天地での挑戦を決意した。「それが……転職してみて改めてSalesforceのよさを再認識しました。とくに考えを新たにしたのが、ビジョンの大切さ。どれだけ立派で壮大なビジョンを掲げていても、それが従業員に浸透していなければ絵に描いた餅にすぎません。Salesforceはビジョンに関するメッセージをつねに発信しており、それによって全従業員のマインドセットが自然と似てくるんですよね。同じ価値観を持てるようになるとスムーズにビジネスを回せますし、喜びも苦しみも皆で共有し合えるのです」(前川氏)

セールスフォース・前川氏

そして、Salesforceに3度目の入社を果たすこととなった。

「ブーメラン巧者」となった前川氏に、当事者本人として、Salesforceがブーメラン人材を快く受け入れる理由を伺ってみた。

「Salesforceには、転職の際に『さようなら』ではなく、『いってらっしゃい』と送り出す雰囲気があります。それは、転職を成長の機会だと捉え、社員を家族のように大切にするカルチャーがベースにあるからでしょう。昨今はSNSの発達もあり、退職してしまった人たちと交流を維持しやすいのもブーメランが活発な理由の1つかもしれません。たとえブーメランで戻ってこなくても、いつかまたどこかで関係性を持つことができるはずですから」


 

三者三様のブーメラン経験談を通して見えてきたのは、たとえ退職というバックグラウンドを持っていたとしても、それをことさら特別視するわけでもなく受け入れる寛容さと、従業員エンゲージメントの高さだ。

セールスフォース・ジャパンの採用マネージャーによると、同社では「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」「サステイナビリティ」という5つのコアバリューにフィットしているかどうかを重要視し、さらにこれまでに培ってきたスキルよりも、優れた成果を創出できる能力や行動特性を示すコンピテンシーに注目しているという。そうした人材だからこそ、自ら成長を促す過程で「Salesforceを離れる」というキャリアパスを描く可能性があることも企業として受容できる。社員が一度は自社を離れ、別の企業で働く選択をしたとしても、そこに学びがあることを理解したうえで、Salesforceにすでにフィットしていた人材が戻ってくることを積極的に受け入れている。

セールスフォースのヨウ氏、大橋氏、前川氏

実際、今回紹介した3人とも、出戻りにあたっては多少なりとも気まずさを抱えていたのは事実だ。しかし、家族のような社員同士のつながりを大切にし、多様性を重んじるという価値観が根付くSalesforceならではの文化が彼らの懸念を払拭。いっさい肩身が狭い思いをすることなく、最前線で活躍している。

自らの能力を高めて自己実現を果たすことは、多くのビジネスパーソンにとって不可欠な取り組みだ。「ブーメランも可」という余地を含めて果敢にチャレンジできるというのは、かなり大きなアドバンテージといえるだろう。「出戻りはありえない」というネガティブな風潮に縛られず、さまざまなバックグラウンドを持つ人を受け入れるSalesforceは、自分らしいキャリア形成を大切にしたい人にとって生き生きと働ける組織の1つだ。

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