ECサイト「日本語だけ」でも海外売上伸びる訳 もう言語や商習慣の違いを気にする必要はない

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コロナ禍で急拡大したEC市場。特定の国や地域だけでなく、グローバル全体をターゲットとする越境ECへの関心も高まっている。他方で、言語や商習慣の違いを気にする事業者も多いだろう。ローカライズの準備不足を理由に参入をためらっている人もいるかもしれない。ところが、ペイパルの瓶子昌泰氏によれば、「日本語のページしかないECサイトや、日本語のSNS投稿だけで爆売れするケースが増えている」という。いったいどういうことなのか。越境ECの現状を詳しく聞いた。

オンラインシフトで国境の壁が消えつつある

「ECは何がきっかけで売れるのか、本当に計算できなくなってきました。『なぜこれがこんなに伸びているの?』と私たちも理由がわからない動きが増えています。テストマーケティングのつもりが爆売れした例も多いので、現状分析や戦略構築に時間をかけることなくEC展開を急ぐ事業者が増えています」

ペイパル東京支店シニア・ディレクター兼副代表瓶子昌泰氏
ペイパル 東京支店
シニア・ディレクター 兼 副代表
瓶子昌泰氏

そう話すのは、オンライン決済サービスを展開するペイパル東京支店シニア・ディレクター 兼 副代表の瓶子昌泰氏。予測不能な売れ方を最初に実感したのは、コロナ禍に突入した直後だという。

「驚かされたのは、ゲームソフトです。世界中で爆発的に売れましたが、従来のパッケージ版ではなくダウンロード版の割合が増えたのが特徴的でした。コロナ禍の巣ごもり需要によりオンラインシフトが急速に進み、消費者のマインドが変わっていくのを肌で感じました」

消費者のマインドが変わったのは、働き方を含めたライフスタイルの変化も影響している。家で過ごす時間が増えたことで、生活必需品からエンタメ系のコンテンツまで「家族で用いる・楽しめる」ものが伸びた。加えて、オンラインでの買い物が日常になったことで、キャッシュレス決済への受容性も高まった。瓶子氏は、これらの変化がグローバルで同時に起こったことで、越境ECのあり方が変わったと指摘する。

「越境ECとして取り組んでいるわけではないのに、急に海外の売り上げが伸びたという事例が増えています。最近加盟店様からよく聞くのが、『日本語ページしかないのになぜか海外で売れている』という話です。不思議に思って、その国のペイパルの同僚に聞いてみたら、買い手は翻訳アプリを活用していると言うんです。欲しいものがあれば、どこの国のECサイトでも構わずアクセスして買う時代になってきました」

ペイパルの決済ボタンを貼るだけで売り上げが急増

従来、海外進出の際には言語や商習慣の違いが高い壁となっていたが、言語に関してはテクノロジーが解決しているというわけだ。では、商習慣の問題はどうか。とくに「決済」と「入金」は、ビジネスにおいて極めて重要。国内においても決して簡単ではなく、国境を越えれば難易度は格段にアップする。それでいて、事業の本質的な価値とは直結していないのが厄介だ。

「そうした問題をクリアするのがペイパルです。自前で決済システムを構築しようとすると、新しい決済方法が出てくるたびに開発しなければなりませんし、案内のテキストなども国に合わせてローカライズする必要があります。しかしペイパルならば、随時進化して決済方法を拡張していきます」

ペイパル決済
国や地域に応じてさまざまな決済手段に対応、加盟店は決済業務をペイパルに任せられる

実際、米国などでは後払い(BNPL:Buy Now,Pay Later)や暗号資産を利用した決済にもすでに対応済み。日本では銀行口座での支払いも可能となっているなど、国や地域に合った決済手段が用意されている。消費者にとって利便性が高いのはもちろん、事業者側のメリットも大きい。

なぜなら、どこの国で誰がどういう支払い方法で購入したかにかかわりなく、ペイパルから支払いを受け取ることができる。支払い情報の管理が不要で、即時にアカウントに入金※1される。そのため、事業者は決済周りの煩雑な業務はペイパルに任せて、コア業務により集中できる。
※1アカウントに制限がない場合

「ペイパルの決済ボタンが加盟店様の売り上げに大きく貢献しているという話はよく聞きます。とくにゲームやアニメなどのデジタルコンテンツの場合、売り上げの海外比率が高まる傾向にあります」

瓶子氏の言葉は決して大げさではない。ペイパルは世界200以上の国と地域で利用されており、アクティブユーザー数は2022年9月時点で約4億3000万人。決済ボタンを貼るだけで、それだけの人数にチャネルが開かれる効果は多大なものがある。

グローバル会員数
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グローバルで4億人以上の顧客にチャネルが開かれている

「一例ですが、日本のペイパルのユーザー数があるとき、急に増えたことがありました。調べてみると、韓国のアイドルグループがバーチャルライブを開催し、そのチケットをペイパル経由で販売していることがファンの中で広まり、1日にものすごい数の新規ユーザー獲得につながったということがわかったんです。オンラインシフトが進んだことで、そうしたつながりが生まれやすくなっています」

オンライン化が進む前であれば、そういった情報の拡散スピードはもう少し緩めだっただろう。ところが今は情報伝達速度が格段に上がり、情報に触れた瞬間に購入することが可能だ。そのため、予測のつかない動きも起こる。国内の事業者の売り上げ上位国に中南米やアフリカなどがランクインし、理由を調べてみるとSNSで現地のインフルエンサーが話題にしていたということも珍しくないそうだ。

「依然として『メイド・イン・ジャパン』の信頼度は高いですが、商材にこだわる必要はないと思います。どんな商材でも、いつ何がきっかけで売れるかわからないからです。新たにECサイトを構築するのに時間がかかるのであれば、それまでの間はSNSにペイパルの請求専用リンクを貼るだけでも十分に成功する可能性はあるでしょう」

円安などの為替リスクにも柔軟に対応できる

ペイパルを利用することで、一気に参入ハードルが下がる越境EC。今、たとえ見切り発車であっても取り組むべき理由の1つに、円安が進んでいることもある。瓶子氏は次のように説明する。

「グローバルで見ると、コロナ禍で売り上げが伸びた分の揺り戻しが少なからず出ています。ところが日本は円安なので、本来なら2022年はそこまで伸び幅がなかったはずなのに、20年、21年と変わらず伸びています。そして、海外から見れば非常に割安なので、越境ECは大チャンスだといえます」

売り上げをペイパルのウォレットに入れたまま仕入れに使うなど、適宜運用できるのも大きなメリットだ。複数の通貨をペイパルのアカウントに設定すれば、急な円安や円高などの為替リスクにも柔軟に対応できる※2。決済と同時にアカウントへ入金されるキャッシュフローの早さも見逃せない※3
※2 日本のペイパルアカウントで受け取れる通貨は22通貨(詳しくはこちらを参照)。
※3 即時入金はアカウントに制限がない場合。残高を銀行口座へ引き出すには最短3日(利用する銀行によって異なる)。

「不確実性の高い時代ですので、事業者のリスク低減につながる取り組みにはさらに力を入れていきます。ウォレットの機能を随時進化させて通貨のボラティリティーに対する柔軟性を高めるのに加え、万一のトラブルから消費者と事業者の双方を守る『売り手保護』『買い手保護』制度も整えています」

ペイパル自身がこれらの取り組みに積極的なのは、ビジョンとして掲げる「金融サービスの民主化」を実現するためだと瓶子氏は力を込める。

「世界には銀行口座を持っていない人が多い国や、高い手数料などが理由で思うように海外送金ができない国がまだまだたくさんあります。お金のやり取りを安全かつ自由にできれば、そうした問題は解決しますので、ペイパルは現地の決済手段への対応を続けてきました。今後もよりシームレスなショッピング体験への貢献を目指し、デジタル決済のイノベーションを進めていきたいと思っています」

利便性が向上すれば、マーケットは成長する。実際、瓶子氏が挙げた中南米やアフリカなどの国々への越境ECは驚異的な伸びを見せているのだという。たとえ見切り発車で参入しても、そうしたマーケット別のニーズを理解すれば、より盤石な基盤づくりにつながり、さらなる飛躍が期待できるだろう。その準備のためにチェックしておきたいのが、「2022年ペイパル海外通販レポート」だ。世界14市場の概況や消費行動のトレンドが、豊富なデータとともに解説されている。こちらから無料ダウンロードできるので、これから参入しようとする人も、さらにECの売り上げを伸ばしたい人もぜひ参考にしてほしい。

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