会計士YouTuberが考える「経理の2024年問題」 山田真哉氏「自力での請求業務はもう限界」

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経理業務を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。背景にあるのは、2022年1月に改正された電子帳簿保存法(電帳法)と、2023年10月に開始されるインボイス制度だ。「経理の2024年問題」とも呼ぶべきこの変化を受け、公認会計士でYouTuberとしても人気の山田真哉氏は「請求業務に関して、企業が自力のみで対応するのはもはや厳しい」と指摘する。その真意はどこにあるのか。請求業務のアウトソーシングを手がけるマネーフォワードケッサイ 取締役の田中謙太朗氏との対談で、企業が直面する課題が浮き彫りとなった。

経理人材が不足していると、請求業務が困難になる?

――インボイス制度の開始まであと1年を切りました。インボイス制度によって、経理業務はどう変わるのでしょうか。

山田真哉(以下、山田) インボイス制度を理解するために、消費税のカラクリからおさらいします。事業者が商品やサービスを提供して得た消費税から、事業のために購入した商品やサービスの消費税分を差し引いて国に納めるのが消費税の仕組みになっています。これまでは買い手側に請求書が届かなくても、「〇〇円を何月何日に振り込む」などといったやり取りの記録を帳簿にさえ残せば、その消費税分を差し引いて納められていました。ところが、今後は国の定めた適格請求書(以下、インボイス)が手元に届かないと、消費税の仕入税額控除を受けられず、最悪の場合、取引先と国に二重に消費税を支払わないといけなくなるのです。

公認会計士・税理士 芸能文化税理士法人 会長 山田 真哉 氏
大阪大学文学部卒。東進ハイスクール、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て独立。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は165万部突破のベストセラーに。個人のYouTubeチャンネルは登録者数48万人(2022年9月現在)

田中謙太朗(以下、田中) 売り手側がインボイスを発行するためには、「適格請求書発行事業者」(※)に登録する必要があるという点も重要ですよね。
※適格請求書発行事業者になるには、国税庁に登録申請しなくてはならない。2023年10月のインボイス開始に間に合わせるには、原則として2023年3月31日までに登録申請手続きを行う必要がある

マネーフォワードケッサイ 取締役 兼 ケッサイカンパニー カンパニーCRO
田中 謙太朗 氏

山田 おっしゃるとおりです。これまで課税売上高1000万円以下の事業者は消費税の納税を免除されていたのですが、「適格請求書発行事業者」に登録すれば、納税する必要が出てきます。納税を避けるために「適格請求書発行事業者」に登録しない方も一定数いらっしゃるでしょう。

買い手側の事業者からしてみれば、取引先が「インボイスを発行できる、できない」を確認するだけでも一苦労です。例えばイベント会社は毎回外部スタッフが変わりますし、必ずしも継続的な取引ではありません。経理担当者がある程度の人数いるならまだしも、専任の経理担当者がいなかったり、いても1人だけだったりする企業は対応しきれないのではないでしょうか。

――インボイス制度開始から3カ月後の2024年1月には、改正電子帳簿保存法の宥恕期間が終わり、「電子取引」に関するデータ保存が完全義務化されて紙保存ができなくなります。

山田 インボイス制度は取引のやり取りをすべて保存することが前提になりますから、デジタル化と大変相性がいいんですね。そのため本来はインボイス制度の前にデジタル化を完了させる狙いで2022年1月に電子帳簿保存法が改正されたのですが、世の中のデジタル化が思った以上に進んでいなかったので2年延期になり、インボイス制度開始が先になりました。デジタル保存に対応できている企業はいいですが、まだ紙保存で経理業務をしている企業は大きく戸惑っているのが現状です。

自動化が難しい「消込」のラストワンマイル問題

――とにもかくにもデジタル化が急がれているということですね。

山田 一方で、デジタル化が企業の負担をすべて解決できるかというと、そうではありません。企業の現場が最も苦労しているのは入出金情報と売掛金、買掛金を照らし合わせていく消込(けしこみ)業務ですが、これはクラウド会計システムや請求書発行システムを導入しても自動的には処理できません。マネーフォワードグループの田中さんを前にして申し上げにくいですが(笑)。

田中 いや、おっしゃるとおりです。いくら優れたシステムでも、消込業務の「ラストワンマイル問題」は解決できません。最後の最後はどうしてもメールや電話で取引先とやり取りをする必要があるからです。こういった消込業務の工数削減ニーズは高く、当社グループでも消込に特化したサービスがあるくらいです。

会計システムは、取引先への督促までは網羅していない

山田 生産性がないのに、重要度が高いのが消込業務の厄介なところです。取引先への督促となると繊細な話になりますから、従業員数十人規模の企業でも社長やCFOが動くことが多いのですが、もっと重要な経営課題に集中させてあげたいと思うことがあります。

田中 そこで、単一のサービスだけでは網羅できない課題を解決するために開発したのが、「マネーフォワード ケッサイ」です。インボイス制度によって請求書の受領や発行、保存も従来以上に重要となりますが、消込業務のように、実はその前後にもいろいろなペインポイントがあります。そこで、「マネーフォワード ケッサイ」では、請求書の発行・発送だけでなく取引先企業の与信審査から代金回収、入金管理などの消込業務、代金回収までの請求・決済業務を一括して代行します。取引データを入力するだけで自動的にすべて行われますので、忙しい経理担当者の負担を大幅に減らすことができます。現在、サービス登録社数は20万社を突破しています(※)。
※2022年7月28日時点における「マネーフォワード ケッサイ」の審査を通過した買い手企業数

マネーフォワードケッサイ仕組み

最短数秒の与信審査から入金管理まで一括代行

――経理担当者が苦労する、煩雑な事務作業を代行いただけるということですね。不確実性が高まっている中で、与信審査が受けられるのも魅力ですが、これはどういう仕組みなのでしょうか。

山田 調査会社の与信データを見ても、中小やスタートアップ企業の情報はあまり載っていないですよね。社名と所在地、昔の売上高などの寄せ集めの情報だけでは与信審査ができません。

田中 ご指摘のとおり、中小企業が約300万社ある中で、いわゆる与信データは、1〜2割程度しかカバーできないともいわれています。残りの8〜9割に対応するため、マネーフォワードグループのコア技術である「データ収集・分析力」をフル活用しています。これまで多数のお客様に会計ソフトなどを提供して培われた知見の下、さまざまな統計データを組み合わせたり機械学習を駆使したりしています。最短数秒で審査を完了させるほか、営業予定先への掛け売りが可能か判断する事前審査にも対応していますので、営業ロスを防ぎ、スムーズな新規顧客獲得を後押しします。

山田 インボイス制度にはどのように対応しているのですか。

田中 適格請求書(インボイス)および適格返還請求書は必須項目が6項目あります。これまでの請求書と大きく異なる部分としては、発行者の氏名または名称だけでなく「適格請求書発行事業者の登録番号」や「税率ごとに合計した対価の額および適用税率」、「税率ごとに合計した消費税額」などがありますが、そうした細かい項目も漏れなく記載する機能を搭載しました。

山田 請求書の控えもデジタル保存されるのであれば、電子帳簿保存法にも対応できますね。

田中 おっしゃるとおりです。第三者機関であるJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の「電子取引ソフト法的要件認証制度」の認証も取得していますのでご安心ください。また、請求書の受取先(買い手企業)に対しても、請求書をクラウド管理できる「マネーフォワード ケッサイ インボックス」を無償提供しています。「マネーフォワード ケッサイ」経由での請求に限られますが、取引先企業も自動的にインボイス制度および改正電子帳簿保存法に対応できます。

与信審査や督促までお任せでき、インボイス制度や電帳法にも自動で対応

「消込に追われる」は経理の本質ではない

――代金回収まで代行するということは、「マネーフォワード ケッサイ」から入金があるということでしょうか。

田中 はい。当社が売掛債権の譲渡を受ける形式ですので、未回収リスクが発生しません。与信審査を通過すれば確実(※)に入金されます。
※表明保証違反が審査通過後に発覚した場合等、例外的な場合は対象外。

山田 そうするとキャッシュフローも安定しますよね。入金がなかったらどうしようという心配をしなくても済みますから、とくに社長自らが営業や資金繰りに走り回っている企業にとっては魅力的です。

田中 成功報酬型のビジネスが多い業界だと、入金のタイミングが安定しないことはよくあります。期日にきちんと入金があって、消込の負担もおかけしないので、業務負荷だけでなく不安やストレスの軽減にもつながります。お客様企業からは、「2人分の人件費削減効果があった」「目まぐるしく変わる法改正や制度変更を気にする必要がなくなった」「本業に集中できるようになった」といった声をいただいています。

山田 経理の本質は、消込や督促ではなく、お金をどう有効に回すかを考えることだと思うんです。「自力で何でもやりたい」という人もいますが、アウトソースできるところは割り切るべき時代がやってきたのだと思います。

田中 便利に使っていただけるよう、システム連携にも力を入れています。CSVやAPI連携が可能なほか、受発注システムやECカートシステムとの連携は、ECでも初回取引から掛け売りができるためビジネスチャンスを逃さないと好評をいただいています。これからも時代の変化に合わせ、請求業務のお悩みを解決できるサービスであり続けたいと思っていますので、ぜひ今後もご期待ください。

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