躍進が続く伊藤園「TULLY’S COFFEE」の舞台裏 10年でブラック比率約2倍、トレンドの背景は

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タリーズコーヒーのボトル缶
仕事の合間に一気に飲む、甘いコーヒー。日本ではそんなイメージが強かったコーヒー飲料の世界が、ここ数年で大きく変化している。ブラックコーヒーの需要が拡大しているほか、コーヒーを飲む目的やシーンも多様化してきた。
変化するコーヒー飲料市場で今、存在感を増しているのが伊藤園の手がける「TULLY’S COFFEE」ブランドだ。「TULLY’S COFFEE BARISTA’S BLACK(バリスタズ ブラック)」は、販売金額において前年比10%増、「同 無糖LATTE(ラテ)」は前年比70%増※1 を記録。熾烈な戦いが続く市場において、いかにして支持を獲得したのか。好調の理由と近年のコーヒー飲料のトレンドを同社に聞いた。

在宅時間が増え
ドリップなどの「コーヒー本格派」が台頭

清涼飲料水の販売金額のうち、約20%以上を占めるのがコーヒー飲料だ。茶系飲料とトップを争うその市場規模は約8050億円に上る※2

「TULLY’S COFFEE」ブランドの製品企画を担当する伊藤園の井上信一氏は、近年のコーヒー飲料市場の傾向をこう語る。

「健康志向のトレンドから、無糖飲料の需要が拡大しています。清涼飲料水全体で見ると無糖が54%を占めており、コーヒー飲料に絞って見ても、無糖ブラックの割合が30〜33%まで高まっています。ここ10年でブラックの割合は約2倍にまで伸びているのです」(同社調べ)

伊藤園 マーケティング本部  新ブランド育成・コーヒーブランドグループ 商品チーフ 井上信一 氏
伊藤園 マーケティング本部
新ブランド育成・コーヒーブランドグループ 商品チーフ
井上信一 氏  
2003年に伊藤園入社。広域流通営業本部に所属し、量販店の店舗担当を経て、後に本部営業を担当。08年、広域流通CVSに異動。コンビニエンスストアの本部営業を担当。10年、商品企画部に異動。コーヒー飲料商品企画担当。15年、商品企画チーフ。「無糖LATTE」などを企画開発

また、飲み方の多様化も進んでいる。

「以前は出社前や仕事の合間の息抜きとしてパパッと飲まれることが多かったのですが、今は家でくつろぐ時間のお供としてコーヒーを飲まれる方も増え、ワンランク上の味わいを求める『本格派』が目立ってきました。ドリップコーヒーの市場では、以前は低価格が重視されていましたが、現在は中価格帯や高価格帯へと少しずつシフトしています」

背景には、コロナ禍で在宅時間が増え、手間や時間をかけてコーヒーを味わうようになり、「コーヒーのおいしさ」に目覚めた人が増えたことが考えられる。一方で、手軽に楽しめるようなコーヒー飲料も受け入れられている。

「コーヒー飲料といえば喉の渇きを潤す飲み物というより、嗜好性の高い飲み物とされてきました。しかし、2017〜18年ごろからはペットボトル入りの商品が発売され、水代わりに飲むといったライトな飲まれ方も出てきています」

つまり、家でコーヒーをドリップして本格的な味わいを楽しむ場合もあれば、外出先で喉を潤すためにコーヒー飲料を購入する場合もある。目覚ましの意味で飲む人もいれば、癒やしを求めて飲む人もいる。このように、コーヒーを飲む目的やシーンは多種多様だ。

ドリップコーヒーのイメージ
(イメージ)

毎朝、自分でハンドドリップしたコーヒーを飲むという井上氏は、その魅力をこう語る。

「コーヒーは掛け算の世界です。浅煎りか深煎りか、粗挽きか細かく挽いているか、お湯の量や温度はどのくらいか……。焙煎具合、粉砕粒度、抽出条件の掛け算によってその味わいは無限に広がります。

ブラックは苦いというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、良質な苦みは心地よいもの。コーヒー豆は果実ですから、ブラックなのに果実由来の甘さがほんのり香るものと出合うことも。そうした無限に広がる世界で、自分の好みを探る楽しみがあるのです」

「ショップクオリティー」への追求

さて、伊藤園が手がける「TULLY’S COFFEE」ブランドにおける傾向はどうか。井上氏はこう解説する。

「ここ数年で最も伸長率が高いのはやはりブラックコーヒーのカテゴリーです。とくに伸びているのがボトル缶の『BARISTA’S BLACK』と『BARISTA’S 無糖LATTE』 ですね」

コーヒー飲料市場の状況と見通し

2020年以降は金額ベースで横ばいが続くコーヒー飲料市場において、その販売数量は「BARISTA’S BLACK」が前年比10%増、「BARISTA’S 無糖LATTE」は前年比70%増と驚異的な伸びを見せた。また、「BARISTA’S BLACK」は5年連続ボトル缶コーヒー売上No.1※3を維持している。その要因を井上氏はこう分析する。

タリーズコーヒーの「BARISTA’S BLACK」

「私たちは『タリーズコーヒー』のショップクオリティーを追求した淹れたてのような本当においしいコーヒーをお届けできるよう、原料や製法にこだわってきました。お客様にこだわりの味わいを認めていただけた結果なのではと考えています」

コーヒー豆には、タリーズのバリスタが監修した「アラビカ種」のみを100%使用。栽培に手間がかかる品種だが、風味豊かで高い評価を得ており、レギュラーコーヒーでも使用されている品種だ。製造工程では、ショップで楽しめるような香り高いコーヒーの味わいを目指し、「焼きたて、挽きたて、淹れたて」を貫いている。

そのおいしさへのこだわりとなるキーワードは「鮮度製法」。

街でよく見かける茶褐色の焼いたコーヒー豆だが、実は空気に触れることで時間の経過とともに風味が落ちてしまう。そこで、原料となる豆は、伊藤園の静岡相良工場をはじめとした国内工場で焙煎後、2週間以内に飲料工場に運ばれ豆は挽かれる(粉砕される)。

そして粉砕後、豆と空気に触れる表面積が増えるため、焙煎後以上にいっそう風味が落ちてしまう。そこで豆を挽いてから24時間以内に抽出する。その後、酸素を通しにくいアルミのボトル缶に詰め、キャップを閉める前に窒素で酸素を追い出してパッキングすることで、光や酸素の影響を受けずに済む。こうして、ゆっくり飲んでもおいしい、いつでも淹れたてを味わえるコーヒー飲料が完成するのだ。

「コーヒーが主役」というこだわりを貫く

さて、大きく伸⻑した「BARISTAʼS 無糖LATTE」のこだわりは、意外にもブラックコーヒーそのもののおいしさだという。カフェラテ飲料といえば“ミルクたっぷり”が定番とされる中、この商品はコーヒーの苦みをまろやかに引き立てるため、少量のミルクしか入れないという真逆の道を行く。

タリーズコーヒーの「BARISTA’S無糖LATTE」

「『TULLY’S COFFEE』ブランドの商品ですから、味の主役はコーヒーです。大切なのはブラックコーヒーをちゃんとおいしく感じること。ミルクはサブ的な位置づけなのです。カフェや喫茶店だと無糖のカフェラテは当たり前でしたが、容器入りのコーヒー飲料でカフェラテといえば砂糖入り。無糖のラテは、ありそうでなかった商品でした。

私たちはコンビニ展開で10年をかけてじっくりと市場を育てることで、飲んでくださるお客様が増えました。2021年からはスーパーマーケット・量販店などにも販路を広げたところ、健康志向トレンドが追い風となってご支持をいただくことができました」

あくまで主役はコーヒー。その根底にあるのは、「TULLY’S COFFEE」ブランド全体で貫くこだわりがあってこそだ。さて、9月に「BARISTA’S AMERICANO(バリスタズ アメリカーノ)」が新登場した。その狙いを井上氏はこう語る。

タリーズコーヒーの「BARISTA’S AMERICANO」
「このパッケージデザインには、ボトル上部の激流のような現実世界で生きる人々に、コーヒーのおいしさ、ミルクのやさしさ、砂糖の甘さで癒やされ、ボトル下部の清流のような落ち着いた気持ちになってほしい、という思いが込められています」(井上氏)

「コーヒー飲料市場に占めるブラックの割合は伸びてはいるものの、30〜33%です。残りの約7割はミルクや甘みのあるコーヒーが占めている、ということ(同社調べ)。そこで、ミルクや砂糖が入ってもきちんとコーヒーの味わいを伝えられるものにチャレンジしました。アメリカーノを選んだのもそのためです」

「BARISTA’S AMERICANO」は、豆の甘みや苦みをぎゅっとエスプレッソ抽出したコーヒーをベースに、ミルクと砂糖を程よく加えている。「コーヒーが主役」は変わらず、エスプレッソならではの奥深いほろ苦さを楽しめるという。

「タリーズコーヒー」ブランドのシリーズ商品

 「昨今、コーヒー豆の価格が高騰していますが、『TULLY’S COFFEE』ブランドを育ててくださったお客様を裏切るわけにはいきません。豆の質も量も変えず、品質を守っていきます。ボトル缶のほかにもホームユースサイズの紙パック、そしてドリップタイプ、粉タイプのコーヒーも幅広くそろえていますので、それぞれのライフスタイルに合う製品を手に取っていただけたらうれしいですね」

忙しい日々に自分らしさを取り戻す時間をくれるコーヒー。肩の力を抜いて、その味わいと香りを楽しんでみてはいかがだろうか。

【関連サイト】

伊藤園 TULLY’S COFFEE ブランドサイト

TULLY’S オンラインカフェ

公式Twitterアカウント タリーズ ブラック&ラテ【RTD公式】

「TULLY’S COFFEE BARISTA’S BLACK」TVCM

※1 伊藤園調べ:2021年5月~2022年 4月(販売金額)
※2 伊藤園調べ:2021年1月〜12月(販売金額)
※3 インテージSRI/2017〜2021年/缶・ボトル缶全業態(自販機除く)/600サイズ以下