日本進出120年、貫いた米金融大手シティの矜持 「責任と持続性のある金融」で顧客を支援する

シティバンク、エヌ・エイ東京支店 日本における代表者、東京支店長 兼 CEO
シティ・カントリー・オフィサー兼ジャパンCEO
金融業界での30年を超える経験を通じて培った米国および海外のリテール、債券、株式、トランザクション・バンキング分野の高い専門性のほか、トレードおよびポスト・トレード業務にかかる幅広い知識も有する
120年で培った現地に根を張るネットワーク
――シティグループが日本に参入して120年です。
ウェイト 1902年、横浜に日本で最初のオフィスを構えました。当初は金融に関する幅広いビジネスを展開していましたが、2015年以降は法人、機関投資家の顧客を中心に4つのサービスに注力しています。

債券や株式などの伝統的な市場業務を行う「マーケッツ」、国際的な資金移動などのキャッシュ・マネジメントや貿易金融業務を担う「TTS(トレジャリー&トレード・ソリューション)」、ファンドサービス業務や資産管理などの「証券サービス」、そして投資銀行業務、コーポレート・バンキングを行う「BCMA(バンキング・キャピタルマーケッツ&アドバイザリー)」です。シンプルな事業体系に焦点を絞って事業を展開しています。
――伝統的な金融業はもちろんのこと、グローバル市場とローカル市場をつなぐ事業にとくに強みを持っているんですね。
ウェイト われわれは世界96カ国にオフィスを展開しています。それぞれの市場において、深く根を下ろして長年にわたってビジネスを行ってきました。
インフラや人材、専門性、資本、証券取引所のメンバーであることなど、さまざまな条件を満たさなければなりません。長い歴史の中で、こうした枠組みを各国に構築してきたからこそ、われわれならではの支援ができるんです。
例えば国ごとに契約に関する規定などが異なるため、国をまたいだ資金管理はオペレーションが複雑になりますが、私たちは国が違っても一貫した形でサービスを提供できます。
――日本の顧客が抱える課題解決にはどのように強みが生かされているのでしょうか。
ウェイト まず、日本の顧客から「海外に焦点を当てた成長戦略」がテーマに上がらない日は、ほぼありません。しかも、世界の投資家は日本市場にとても高い関心を持っています。
グローバル市場で難易度の高い資金管理を長く経験し、その中で能力を洗練させてきたことから、各国の政府や市場を熟知しています。日本からどの海外市場に進出する顧客にも支援ができると自負しています。
証券サービスやTTSを通して顧客の業務やオペレーションを深く理解して、課題を解決していくことが求められることが多いです。加えて、そこからバンキングやマーケッツなどほかの分野に発展することもあります。数年前から、米国や英国、ブラジル、タイなど世界13カ国でジャパンデスクを運営しています。ジャパンデスクは、日本でトレーニングを受けたスタッフを海外に派遣して、顧客が海外でビジネスを拡大する際の支援を行うもの。日本独自のネットワークを世界に展開し、グローバルとローカルの両面から顧客をサポートしていきます。

ESG目標の実現が最重要課題
――世界的に関心が高まっている「ESG」についてはどのように捉えていますか。
ウェイト われわれ自身が、最も注力していることの1つとして、30年にはシティ自体がネットゼロを実現することを目標として掲げています。
グローバルの代表であるジェーン・フレイザーは、就任初日にこの目標を表明し、組織一丸となって取り組んでいるところです。日本でも、多くの顧客がESGに関心を寄せています。そこで、日本独自の組織として、ESGを含む企業のトランスフォーメーションを支援するための専門チームを設けるとともに、ESGを全社的な取り組みとすべく、各ビジネス、管理部門から選出したメンバーからなる社内横断的なチームを設けました。定期的に議論を重ね、新たな知見を蓄積して社内外のESGの取り組みを支援しています。さらに、世界各国のシティにいる専門家と連携し、あらゆる角度から顧客にアイデアを提供できる体制を整えてきました。
――グローバルな視点からのアイデアには独自性がありそうです。ファイナンス面ではどのようなサポートを提供していますか。
ウェイト 化石燃料にはいっさい融資をしないという立場を取る判断もありますが、必ずしもそれが適切であるとも限りません。とくに、ESGに対する意識や現状は国ごとに異なり、つねに進化している領域で、顧客が抱える課題もそれぞれ。そうした中で大事にしているのは、顧客が設定した目標を確実に達成できるように支援することです。
例えば、顧客が環境分野で資金を調達するために独自の債券を発行する際のサポートもしています。ただし、それらはケーキの上の飾り。われわれとしては、最後に形になって目立った部分より、そこに至るまでの「基盤づくり」に価値があると考えています。
――今後のビジネスの展望を教えてください。
ウェイト 市場には必ずサイクルがあります。実際、過去5年間も大変な市場環境でした。しかし、その中で日本におけるシティは大きく進展して、日本の多くの顧客と強いパートナーシップを築いてきました。今後も拡大余地は十分にあります。今後、さらにそれを強化していきたいですね。