次の50年へ「未来環境デザイン企業」として飛躍 不動産にとどまらず「人と地球の未来を幸せに」
新社名「MIRARTH」に込めた進化への決意
MIRARTHホールディングスはこれまで、タカラレーベングループとして創業以来、新築分譲マンションや戸建ての開発・企画・販売、中古マンションの買い取り・再販などの不動産事業を中核にビジネスを展開してきた。とくにマンションブランドにおいて、「LEBEN(レーベン)」ブランドは市場での認知度も高い。
一方で、近年は事業の多角化も積極的に推進。太陽光発電をはじめとするエネルギー事業や、不動産・再生可能エネルギーをはじめとしたアセットマネジメント事業は、不動産事業に次ぐ第2、第3の柱として位置づけられている。
今回の持株会社体制への移行は、このように事業領域が拡大してきたことが背景にある。代表取締役の島田和一氏は次のように説明する。
「事業領域が広範にわたってきたことで、事業セグメントを整理する必要があると考えていました。2021年に発表した25年3月期までの中期経営計画では長期ビジョンとして『ナショナルブランドの確立』を掲げ、それに向けた『7本の柱』を策定しています。コア事業のさらなる拡大に向けて不動産事業を集約することで、グループシナジーを発揮する狙いです。事業ポートフォリオの最適化を実現し、企業価値を高めることで、安定的な事業活動につながると考えています。
また、東京証券取引所プライム市場の上場企業として、ガバナンスやESG経営の強化を図ることも不可欠だと認識していました。それらを踏まえると持株会社体制への移行が最適であると判断し、創業50年という節目のタイミングで実施しました」
事業セグメントの整理は、持株会社体制への移行に備えて、22年4月に実施している。それまで不動産の販売・賃貸・管理で分かれていた事業セグメントを「不動産事業」として統合。「アセットマネジメント事業」を新設し、「エネルギー事業」「その他事業」と合わせて4つの事業セグメントに区分した。
新体制への移行に伴い、社名も変更した。「『MIRARTHホールディングス』という新たな社名は、Mirai(未来)とEarth(地球)を組み合わせた言葉です。住まいだけでなく商業施設、オフィス、ホテル、環境、エネルギーなども含め、『不動産総合デベロッパー』の枠を超えて『未来環境デザイン企業』へ進化していくという、私たちの決意を込めています」と島田氏は語る。
とはいえ、広く知られている「タカラレーベン」というブランドがなくなるわけではない。旧タカラレーベンの一部の事業を除いて100%子会社である旧タカラレーベン西日本が承継したうえで、10月1日付で同社の社名を「タカラレーベン」に変更した。同社はタカラレーベン東北も吸収合併しており、全国で展開する新築マンション分譲事業などを新生タカラレーベンに集約した形となっている。
時代の変化に対応しながら成長し、事業の多角化を推進
今年9月に創業50年を迎えた『MIRARTHホールディングス』。その前身である「宝工務店」は1972年、東京・板橋区で誕生した。設立メンバーは新タカラレーベン取締役会長の村山義男氏を含む6人だった。
「ベンチャー企業と言えば聞こえはいいですが、戸建ての新築分譲住宅の企画・開発を行う、小さな工務店だったと聞いています」と島田氏は振り返る。ただし、創業当初から守っている「想い」があるという。
「『誰もが無理なく安心して購入できる理想の住まい』が当時からのコンセプトでした。住宅の1次取得者層がターゲットとなりますが、だからといって『安かろう、悪かろう』では、信頼を獲得することはできません。『幸せを考える。幸せをつくる。』という企業ビジョンの下、あくまでもお客様に支持される住宅づくりにこだわってきました。過去にはバブルの崩壊やリーマンショックにより経営が苦しくなる時期もありましたが、ビジョンを拠り所にし、社員全員で共有できたことで、短期的な利益を追わず、長期的視点に立ったぶれない経営ができたと考えています」
島田氏は98年に取締役開発部長に就任以降、常務取締役開発本部長、本社開発部長 兼 建築部長などを経て2006年に副社長に、14年に社長に就任しているが、副社長の頃から注力してきたのがエネルギー事業だ。「再生可能エネルギーを活用したエネルギー事業は、温室効果ガスであるCO2排出量の削減に貢献するだけでなく、不動産事業のようなフロー型ビジネスとは異なり、ストック型のビジネスであるという特徴があります」と語る。
12年には再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がスタートしたことを受け、同社もメガソーラー事業に参入。22年3月末時点で、総発電規模は約310MW(売却分含む)に達している。
再生可能エネルギーや不動産に関するアセットマネジメント事業への進出にも注目したい。16年にはタカラレーベン・インフラ投資法人がインフラファンド市場に第1号上場、18年にはタカラレーベン不動産投資法人が不動産投資信託証券市場(REIT市場)へ上場している。
このように近年は不動産事業にとどまらない複数の新規事業を立ち上げて推進し、実績を重ねてきた。エネルギー事業では太陽光発電だけでなく、バイオマス発電や風力発電にも進出。「新規事業に参入するという当時の決断があったから今に至っているというのは非常に大きい」と、島田氏は評価している。
「人と地球の未来を幸せにする」を軸に次の50年へ
創業50年は、MIRARTHホールディングスの新たな門出であり、大きな転機でもある。次の50年に向けて、変わらないこと、変えていくことはどのような点なのだろうか。
「MIRARTHホールディングスの発足に当たり、新たに『サステナブルな環境をデザインする力で、人と地球の未来を幸せにする。』というパーパスを策定しました。これはタカラレーベンの企業ビジョンである『幸せを考える。幸せをつくる。』をさらに進化させたもので、すべての人々の幸せを考えて事業に取り組む姿勢はこれまでと変わりありません」と島田氏。
ただし、時代の変化は速く、社会が直面する課題も複雑化している。「これまでのように、単に建物を建てるだけで地域の課題を解決することはできなくなっています。今ではインフラにIoTを取り入れるなどのデジタル化や、地域マイクログリッドなどを視野に入れた再生可能エネルギーの創出、官民連携のスキームの活用、さらには人の交流も含めた活力とにぎわいある街づくりなど、まさに『不動産総合デベロッパー』の枠を超えて取り組む力が求められています」と強調する。
その点でMIRARTHホールディングスはこれまでも、住まいの提供だけにとどまらず、幅広い事業分野で社会に貢献しようとしてきた。パーパスの「人と地球の未来を幸せにする」には、これまで以上に、「住まい」だけにとどまらない事業領域で地域の活性化を促し、持続可能な社会の実現を目指すという強い思い、ESG経営の推進やSDGsの達成に向けて本気で取り組む姿勢がうかがえる。
「これまでの50年もそうだったように、今後の50年も、パーパスに基づいてやるべきことをしっかりとやっていくほかありません。それにより結果は後からついてくると思っています。人々が安心して暮らせる街をつくり、持続的な社会を実現することを目標に、これからも邁進していきます」と話す島田氏。次の50年に向けて新たな一歩を踏み出したMIRARTHグループの今後の動向に注目したい。