「マイナンバーカード」日本での普及拡大に期待 国際ジャーナリスト蟹瀬誠一氏が語る

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マイナンバーカードの表見本
蟹瀬誠一氏は、「日本の国際競争力を高めるためには、官民の違いを問わず、デジタル化対応が必須」と指摘する。その大きなカギを握るのがマイナンバーカードだという。

デジタル行政サービスの基盤となる国民ID制度

蟹瀬誠一氏は欧米の通信社などを経て、国際ジャーナリストとして活躍。日本の報道番組で数々の番組キャスターを務める。その傍ら、明治大学で教鞭を執り、2008年より13年まで国際日本学部の学部長も務めた(現在は同学部名誉教授)。

国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏
蟹瀬 誠一 
国際ジャーナリスト、明治大学国際日本学部名誉教授、「賢者の選択」キャスター。 元米AP、仏AFP通信記者、『TIME』誌東京特派員。 外交政策センター(FPC)理事

国際情勢に精通する蟹瀬氏が注目するのが、各国のデジタル政策だ。「社会全体のデジタル化への対応が国際競争力を左右する時代になっています。デンマーク、エストニア、フィンランド、スウェーデンなどは、デジタル行政の推進に力を入れ、存在感を発揮しています」。

日本でも国、地方自治体ともに、行政のさまざまな手続についてデジタル化を進めている。これらの先進的な国々との違いがあるとすればどのような点なのだろうか。

「行政のデジタル化に成功している国の多くは、その基盤となる国民番号(国民ID)制度が整備されています。デンマークが国民ID制度を導入したのは1968年です。ICTよりも前に国民ID制度があったのです」。同国では、ICTの進化に伴い、さまざまなサービスをその基盤の上に構築していった。

「私の娘(女優・ダンサーの蟹瀬レナ氏)がデンマーク人と結婚したこともあって、デンマークは何度も訪問していますが、生活のさまざまなところでデジタル行政が定着していることを感じます。住所変更や結婚・離婚の届け出、税金、年金、医療・福祉など、多様なサービスがオンラインで可能です」。デンマークは、国連の世界電子政府ランキング調査でも、2018年度に続き最新の20年度と連続でトップの評価を受けている。

蟹瀬氏は「日常的な届け出だけでなく、有事の際にもID制度により素早く行政サービスを提供できます。コロナ禍において、台湾ではIDにひも付けて、マスクの配布を迅速に行いました。韓国でも短期間でスムーズに給付金を支給できました」と紹介する。

国民ID制度というと、国によって管理されるという印象を持つ人も多い。「確かに、早くから制度を導入したデンマークでも、『国民一人ひとりに背番号を付けるとはいかがなものか』と、当初は反対の声もあったのです。しかし、その利便性から、今ではなくてはならないものになりました。最近では、アジアやアフリカの新興国でも、国民ID制度を導入する国が増えています。これらの国では、固定電話のネットワークがなくても一足飛びに携帯電話が普及しています。国民ID制度の活用も一気に広がるでしょう」と蟹瀬氏は話す。

目指しているのは「便利な暮らし、よりよい社会」のイメージイラスト
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広報誌「総務省」2019年1月号を基に作成

日本でのマイナンバーカードの普及拡大に期待

日本の国民ID制度、すなわちマイナンバーが行政サービスなどに広く活用されるためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。例えばセキュリティー面のリスクはないのだろうか。

「セキュリティーという点では、日本のシステムは世界でも極めて高度な部類に入ります。マイナンバーの番号がわかっても、それだけでは個人情報を引き出すことができません」と蟹瀬氏は紹介する。マイナンバーでのひも付けはできるが、その先の情報へのアクセスは各省庁、自治体、医療機関、民間企業などによって区別されているという。プライバシーを守るために細心の注意が払われている。

「ただし、そのためにも、マイナンバーカードが欠かせないのです」。マイナンバーカードは顔写真付きの本人確認書類として使えるだけでなく、内蔵されたICチップに公的な個人認証サービスの電子証明書が搭載されているため、データの改ざんによるなりすましを防ぐことができる。

マイナンバーカードの表裏見本

「行政の効率化だけでなく、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現という3つの目的がマイナンバーにはあります」。住民票の写しをコンビニで取得したり、児童手当や給付金の申請などの手続がオンラインでできるようになる。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、医療機関で薬や特定健診結果の情報を共有できるので便利だ。

蟹瀬氏はさらに「国や自治体などの公共機関だけでなく、民間企業でもマイナンバーカードを活用したさまざまなサービスが創出される可能性があります」と語る。すでに、ある大手キャッシュレス決済サービス会社では、本人確認にマイナンバーカードを活用している。複数の小売店が連携し、マイナンバーカードを利用した共通ポイント化に着手している例もある。

サービス拡充のためには、マイナンバーカードの普及が不可欠だ。22年7月31日現在の普及率(人口に対する交付枚数率)は全国で45.9%となっている。さらなる普及率向上に向けて、政府は今年6月30日から「マイナポイント第2弾」のキャンペーンを本格スタートさせた。マイナンバーカードの新規取得で最大5000円分、健康保険証としての利用申込み、公金受取口座の登録にそれぞれ7500円分の、最大2万円分のポイントがもらえる。まだカードを作っていない人には、オンライン申請が可能なQRコード付きの交付申請書が7月以降配布されている。

「マイナポイント第2弾」は6月30日の本格スタート以降、半月余りで申込みが500万件を超えたという。関心の高さがうかがえる。

「コロナ禍の給付金などのように、今後もさまざまな制度の利用機会があるでしょう。民間企業の利用も広がると思われます。将来的には持っているのが当たり前というスタンダードになり、それが日本の社会全体のデジタル化を推進することになります。マイナンバーカードの普及に大いに期待しています」と蟹瀬氏は話す。

最大2万円分のポイントがもらえる「マイナポイント第2弾」の詳細はこちら

マイナポイント第2弾の対象となるマイナンバーカードの申請期限は、「令和4年9月末」から「令和4年12月末」に延長となりました