経済不安の中で「越境EC」が活況を保つ納得理由 複雑に変化する「消費行動」のトレンドを分析

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長期化するパンデミックは、経済にも大きな影響を及ぼした。加速するインフレやサプライチェーンリスクの高まりによって、世界的な景気後退も懸念される。そんな中でも活況を維持しているのが越境ECだ。その理由はどこにあり、どのような「消費行動」の変化が背景にあるのか。ユーザー数約4.3億人のグローバルオンライン決済サービスを展開するペイパル(PayPal)が発表した「2022ペイパル海外通販レポート」を基に、トレンドを読み解いていく。

EC市場は980兆円規模へ拡大する予測も

インフレの加速が止まらない。米国および中国の2022年4~6月期の実質GDP伸び率は年率換算でマイナスを記録した。不確実性を増すサプライチェーンの問題もあり、経済不安は高まっている。ビジネスの先行きが見通せないと感じている人は多いだろう。

だが、どんな状況下でも「消費」は行われる。そして、消費者はいつでも価値を見いだしたものを選択するものだ。予測不可能な時代だからこそ、そうした消費者の行動を的確につかみ続けることが重要となる。

では今、消費者はどのような行動をしているのだろうか。まず、行動の場はオンラインへ大きくシフトした。市場調査会社のStatistaによれば、2020年から2021年にかけてオンライン販売は7000億米ドル(約93兆円、1米ドル133円の場合。以下同)も増加している。

言うまでもなく、オンラインに場所や空間の制限はない。消費者は、世界中のどの事業者からも商品を購入することが可能だ。買いたいものがそこにあって、セキュリティー対策や支払い方法などの障壁をクリアできるのなら、国境を越えての購入を妨げるものはない。

実際、ペイパルが2021年12月から2022年1月にグローバルで実施した調査に基づく「2022ペイパル海外通販レポート(※)」によれば、「2020年の時点よりも海外通販を利用することに抵抗がなくなった」消費者は42%に上った。市場調査会社のeMarketerは、オンラインショッピングの売上高が2025年までに50%増加して7兆4000億米ドル(約986兆円)に達すると予測している。これは英国、ドイツ、香港のGDPを合計したよりも大きな額であり、国境を越えたeコマースを含めオンライン販売に大きなビジネスチャンスがあることは明白だ。円安基調が強まっている現在は、とりわけ参入しやすい状況だといえるだろう。
※ペイパルが委託したIpsos MORI PayPal クロスボーダー Insights 2022。 n=14,000、14市場(オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、香港、フランス、ドイツ、イタリア、日本、メキシコ、シンガポール、スペイン、英国、米国)。 2021年12月~2022年1月に成人(過去3カ月間にオンラインで購入したことがある18歳以上)を対象としたオンライン調査

世界のオンライン小売業の売上高は、 2025年までに50%増加すると予想されている
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「2022海外通販レポート」のエグゼクティブサマリーから抜粋。EC市場拡大の背景が解説されている

消費者は価格と柔軟性、社会的責任にも着目

越境ECを利用する際、消費者はどこに価値を見いだすのだろうか。ペイパルの調査によれば、何よりも優先されるのは「価格」。消費者の61%が「価格が安いなら配送に時間がかかっても待ちたい」と回答し、77%が価格上昇に懸念を示している。

とはいえ、安ければ売れると考えるのは早計だ。ペイパルの「2022海外通販レポート」によれば、直近の消費行動には主に3つの変化が見られるという。

1つ目は、決済や返品ポリシーに「柔軟性」を求める傾向が強まったことだ。背景には、「The Great Resignation(大辞職時代)」と呼ばれる現象がある。米国と英国を中心にキャリア転換を図る人が急増し、より自由な暮らしや働き方へとシフトすることで、ショッピング体験にも柔軟性が求められるようになった。具体的には、46%の消費者が「分割払い」を受け付ける小売業者を利用したいと考え、28%は購入後に返品可能な返品ポリシーを希望している。

2つ目は、家族や友人と楽しみを「共有」できる商品や体験が優先されるようになったことだ。消費者の57%が、「家族や友人と一緒に楽しむ製品により多く出費した」と回答。この変化についてペイパルは、「新型コロナウイルスの大流行は、消費者の考え方や優先順位を根底から変えました。中には、自分よりも他人に目を向けるべきと考えるようになった人もいます」と分析。消費行動と社会・経済の状況が深く結び付いていることが、改めて浮き彫りになったといえる。

3つ目の変化は、ブランドや企業に「社会的責任」を強く求めるようになったことだという。消費者の59%が「環境と社会に有益な取り組みを行う企業を優先して利用したい」、48%は「小売業者が地域社会を支援しているかどうかを検討してから購入を決める」と回答している。不確実性がかつてないほど高まっているからこそ、価格や決済方法といった自ら選択できる要素だけでなく、持続可能な社会の構築に取り組もうとする姿勢を評価しようとしているとも読み取れよう。

社会に有責な取り組みを行う企業を優先して利用したいと考える消費者の割合59%
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「2022海外通販レポート」から抜粋。消費行動のトレンドがわかりやすくまとまっている

越境ECはすでに世界のスタンダードに

ペイパルの調査によれば、日本では、海外通販利用率は31%。2020年と比べて9%上昇しているものの、まだ越境ECは一般的とは言いがたい。ところが、「2022海外通販レポート」に掲載されている14市場のうち、9市場は60%以上。イタリア、スペイン、シンガポール、メキシコ、香港、ブラジルの6市場は70%を超えており、ショッピングで越境ECを利用するのは“当たり前”となりつつある(ちなみに、日本は14市場中最下位)。

メキシコの「概況」「消費者基本データ」「観点別の消費者動向」「押さえておきたい3大ポイント」
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2022海外通販レポート」から抜粋。14市場はそれぞれ「概況」「消費者基本データ」「観点別の消費者動向」「押さえておきたい3大ポイント」がまとめられているので、各国別の戦略を練るのに役立つ

各市場の価値観や特有のニーズを理解すれば、より大きな成果も期待できるため、こちらから無料でダウンロードできる「2022海外通販レポート」は要チェックだ。全97ページとボリュームたっぷりで、14市場の概況とともに、「海外通販を利用する理由」「海外通販で購入するもの」「購入先の国」など、簡単に得られない生きた情報が満載だ。越境EC戦略を練る際に欠かせない参考資料として、ECの売り上げをさらに伸ばしたい人だけではなく、一から始めたい人やスモールビジネスを展開する人にもぜひ活用してもらいたい。
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