大阪・梅田にある和食店に来ている。ランチの「祝会席」を予約して、印鑑と朱肉はペンケースに入れて持参した。
これから入籍予定の酒井聡さん(仮名、44歳)と関根典子さん(仮名、39歳)に婚姻届の証人になってほしいと頼まれたのだ。筆者はライター業のかたわら、男女を引き合わせて結婚までをお手伝いする「お見合いおじさん」をしており、彼らは7組目の成婚カップルとなる。
「典子さんは実際に会ったほうがかわいらしい、いやかわいいと思いました」
「私はZoomお見合いのときから、あ!と見つけた気分になりました。聡さんは清潔感があっていい感じの男性だからです」
昨年末までどんよりしていた2人がなぜ…?
前菜に箸をつける間もなくのろけ始める2人。お見合いをしたのは今年1月で、真剣交際に入ってから4カ月でゴールインした。
そんなに短い期間だとは思えないほど濃いお付き合いができているとさらにのろける2人。しかし、どちらも昨年末までは笑顔も出にくいような精神状態だったことを筆者は知っている。
聡さんは、従業員40人ほどの中小企業で働く会社員。中高大といわゆるお坊ちゃん系の私立校で育った聡さんは、おっとりした性格もあって、お金持ちではないのに友人たちに「ぼん」というあだ名で呼ばれている。
そんな聡さん、結婚相談所で出会った4歳年下の女性と婚約寸前で別れたばかりだった。原因はお金。
父親が他界したのをきっかけに実家に戻った聡さんは、母親と暮らす実家をリフォームしており、そのローンを負っている。相続対策はどうなっているのか、会社で出世する可能性はあるのか、などを何度も聞かれて気分が落ち込むようになってしまったという。
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