モビリティの未来をつくる人は、どこにいるのか その挑戦の積み重ねがイノベーションを起こす

拡大
縮小
モビリティの世界が大きく変わろうとしている。「自動運転」「電動化モビリティ」の開発に欠かせないソフトウェア開発・検証ソリューション分野で躍進を続けるdSPACEという会社をご存じだろうか。本社はドイツ。2005年に日本に進出して以来、高い技術力を持つエンジニア集団は日本の各メーカーにとって今や大切なパートナーとなっているようだ。実際、顧客満足度は90%以上(同社調べ)。その強み、そして日本法人が独自にパーパスを作った意味とは。dSPACE Japan代表取締役社長の宮野隆氏に話を伺った。

コロナ禍でも止まらないモビリティ革新への動き

dSPACEは自動運転技術や電動化技術開発のパートナーとして、世界的な自動車メーカーや自動車部品メーカーをはじめとした多くのクライアントを持ち、日本での存在感も高まっている。目下、世界の自動車産業は、カーボンニュートラルに向けた開発ペースを加速させており、革新的なイノベーションである自動運転に対しても実現へ向け挑戦を続けている。同社の日本法人であるdSPACE Japan代表取締役社長の宮野隆氏は次のように語る。

dSPACE Japan代表取締役社長 宮野 隆氏

「半導体の能力も向上しており、自動運転技術の開発は加速傾向にあります。しかしながら、自動運転を実現するには、数十億キロメートルという膨大な量のテストが必要だといわれています。そのテストをいかに効率的に実施するかが、1つのキーとなっているのです」

膨大な量のテストをシミュレーションにて高速に行い検証することで、自動運転中のさまざまな運転条件(道路状況、天候、周りの車両など)での安全性を確認できる。つまり、自動運転技術の開発・検証にはシミュレーションは必須である。また自動運転に必要な技術はソフトウェアで実現されており、そのソフトウェア開発・検証ソリューションで重要な役割を担っているのが、dSPACEなのだ。

一方、電動化車両の開発を加速させるためには、コンピューター上でシミュレートして検証した膨大な事例を実際に自動車に搭載し、さらに検証しなければならない。そのとき必要なツールとなるのがHIL(Hardware-in-the-Loop)システムだ。このHILシステムを使えば、実際のモーターを使わず多様な電動化の組み合わせを検討することが可能となる。このHILシステムについて、業界ですでに高いシェアを持っているのもdSPACEである(同社調べ)。

「これからは、プロダクトのアイデアから、テストや認証に至るまでの一連の流れをカバーするプラットフォームを確立していきたい。私たちが、ソリューションプロバイダーとして、お客様を成功に導くためにも、さまざまなご要望に対応できるように技術力の向上に努めるとともに、他社とのコラボレーションのほか、M&Aで新技術を獲得するなどフレキシブルな戦略で強化を図っていきます」

“挑戦し続ける”ことが世界を変える

dSPACEは2005年に日本に進出して以来、自動車メーカーを中心に長期的かつ信頼できるパートナーとして着実に地歩を築いてきた。そんなdSPACE Japanが2020年から新たに提唱しているのが「世界を変える『if』に挑む。」というdSPACE Japan独自のパーパスだ。同社はこのパーパスを基にさらなる進化を遂げようとしている。

「私たちdSPACE Japanは単なる現地法人ではなく、日本のお客様の要望に真摯に応えていく日本の企業でありたいと思っています。日本のお客様からは、ソフトウェアにフォーカスしたいが、どうアプローチしていいのかわからないといった話をよく聞きます。私たちはお客様に寄り添って、共に考えていきたい。そのためには私たち自身の姿勢が非常に重要なのです。お客様とキャッチボールをしながら課題解決のためのアイデアを提案していく。お客様のどんな細かいニーズでも拾い上げ、どんなご要望にも応えていく。そうした挑戦を続けていくことが『世界を変える“if”に挑む。』ということであり、そうした積み重ねがバタフライエフェクトのように世界を変えるきっかけとなると信じています。このような組織でなければ、日本企業が世界に伍することはできません。お客様の潜在的な要望を引き出すためにも、私たちはこのパーパスを基に、ソリューションプロバイダーとして日本のお客様との信頼関係をより深化させていきたいと考えているのです」

日本で存在感を高めているdSPACE Japanは、グループ現地法人の中でもトップの売り上げ規模を誇る。トータルで150人以上の社員のうち約8割を占めるのはエンジニアで、大学院修了者も多い。高い調整力を持つ技術者らがクライアントのさまざまな要望に対応している。

同社がソリューションプロバイダーを標榜できる理由の1つが、ソフトウェアとハードウェアを両方提供していることだ。例えば、高い技術力を誇る同社のHILシステムにおいては、顧客のさまざまなニーズに応えながら、一つひとつ違ったシステムをオーダーメイドで作っていくのがdSPACE Japanの流儀だ。こうした一連の業務の量と質を日々強化するとともに新たな技術を導入し進化し続けているところに強みがある。

「HILシステム分野において、弊社はマーケットリーダーであると自負しています。この部分を維持、活用しつつ、現在はソフトウェアの開発・検証ビジネスの拡大を図っています」

強みはそれだけではない。同社の調査で、顧客満足度97%と高い数値を獲得した。顧客満足度の数字は毎年上昇傾向にあるというが、残りの3%の顧客についてもフォローするなどきめ細かい対応も欠かさないという。

「お客様からはdSPACEの技術を活用すると、したいことができるようになるとよく言われます。実際、弊社にはこだわりのあるエンジニアが多く、彼らの技術力は高い。私は、そんな社員たちが生き生きと仕事ができるような、つねに挑戦する元気な会社でありたいと思っています。これからもお客様とのコミュニケーションの機会を増やし、よりきめ細かい対応に注力するとともに、技術的な課題解決についても、スピーディーに対応できるような体制を構築しようと思っています」

宮野氏は「つねに挑戦する元気な会社でありたい」と強調する

次世代モビリティがもたらす豊かな社会に向かって

dSPACEが目指すモビリティの未来とは何か。これから自動運転が大きくシフトすると予想されている。すでに倉庫内物流といったロジスティクス分野やトラクターなど農機具分野の自動運転技術の開発は高いレベルを実現しようとしている。また、CO2削減に向けた電動化への急激な流れ。地球環境を守るためには待ったなしの対応が求められており、自動車だけでなく、航空機など幅広いモビリティへの適用の検討が進んでいる。

「私たちは自動車メーカー向け以外でも、自社で開発したツールを日本のさまざまな業種、そして世界に向けて展開し、お客様の成功をお手伝いすることで、人にやさしい、地球にやさしい世界の実現により、社会をもっと豊かにしたいと考えています。新しいことに挑戦し続けるモチベーションを育む『世界を変える“if”に挑む。』を胸に、これからも日本を元気にしていきます」

新たなモビリティ社会を実現させるためには新たな技術が必要になってくる。重要性を増すソフトウェア開発に対応するために、シミュレーションと検証試験が、そのカギを握っている。

dSPACE Japanでは2022年9月28、29の両日、Japan User Conference (JUC)をオンラインで開催する。今年も「JUC2022Digital」として自動運転技術や電動化技術における各メーカーや学術分野のキープレーヤーらが集結し、モビリティの未来を占う最新技術動向について紹介する。参加費は無料(事前登録制)、昨年は約1000名が参加した。今年も多数の関係者が参加する予定だ。これから到来するモビリティ社会の将来像を見通す機会となるだろう。

「JUC2022Digital」の参加申し込みはここから

お問い合わせ