「エンジニア応援プラットフォーム」で成長目指す 建設・プラント業界の人材派遣の実績を強みに

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コプロ・ホールディングスは、主に建設・プラント業界向けに施工管理技術者などを派遣する人材サービス企業である。技術者といっても建設現場で働く職人ではなく、職人と同社の顧客企業であるゼネコンとの間に入る、いわゆる現場監督が主な職種だ。同社の大きな特色は、派遣技術者を労働力の一時的な補完と捉えるのではなく、「派遣技術者が主役」となる取り組みを積極的に進めている点である。2022年5月に初めて発表した5カ年の中期経営計画において、「エンジニア応援プラットフォーム」を通じた独自の価値提供により事業を拡大し、成長を目指すとした。実現に向けた手応えを代表取締役社長の清川甲介氏に聞いた。

「エンジニア応援プラットフォーム」を確立する

コプロ・ホールディングスは2022年5月に、23年3月期〜27年3月期の5年間にわたる中期経営計画(以下、中計)「コプロ・グループ Build the Future 2027」を発表した。その席上で同社代表取締役社長の清川甲介氏は、「コプロ・グループはいよいよ、(三段跳びの)ホップ・ステップ・ジャンプで大きく成長する時期にさしかかってきた」と力強く語った。

コプロ・グループは06年の創業来、建設・プラント業界向けの技術者派遣事業をメインビジネスとし成長を遂げてきた。19年3月に東京証券取引所マザーズ市場および名古屋証券取引所セントレックス市場に上場、20年9月に東証1部および名証1部へ市場変更している(22年4月の市場再編により東証プライムおよび名証プレミアに移行)。

技術者派遣業界では競合企業がひしめいている。その中でコプロ・グループが着実に事業を拡大してきた理由はどこにあるのか。その問いに清川氏は次のように答える。

代表取締役社長
清川 甲介氏

「かつて、人材派遣の業界イメージは労働力の一時的な補完、のようにネガティブに捉えられがちでした。私はそういったイメージを払拭し、派遣技術者が主役になる会社をつくりたいという思いから創業したのが、このコプロ・グループです。その理念を守ってきたことが、派遣技術者の質の高いサービスにつながり、お客様に評価されたのだと考えています」

中計でも、その思いが計画策定のロジックになったことを説明され、具体的な目指す姿も明示された。「コプロ・グループのパーパス(存在意義)を"最高の『働き方』と最高の『働き手』を。"とし、当中計期間において目指す姿に『エンジニア応援プラットフォーム』を掲げました」と清川氏は紹介する。

「エンジニア応援プラットフォーム」とは、新卒や業界未経験の若手をはじめとした技術者に対し能動的にキャリア形成を支援することで、業界の経験有無を問わず技術者が長く活躍できるよう支援していく仕組みのことだ。

人的資本が企業成長を大きく左右する人材サービス業界で、「『技術者一人ひとりのキャリア形成支援』を通じて、当社独自の価値を提供し、事業を大きく成長させていく」と清川氏は自信を見せる。

エンジニアを応援する幅広いサービスや仕組みを構築

「エンジニア応援プラットフォーム」の構築において、具体的にどのようなサービスや仕組みを構築しようとしているのか。

「技術者としてのキャリアアップに向け、ロードマップの見える化や、その実現に向けた研修機会の提供、配属先企業とのマッチングを含めたキャリアコンサルを行うのも1つの取り組みです」と清川氏は話す。例えば建設技術者の場合、建築士、建築施工管理技士などの国家資格取得はキャリア形成における目標の1つとされるが、いずれも試験の難易度が高く一定期間の実務経験も必要だ。

「20代前半の技術者に国家資格取得を目指せと言うのは、いきなりフルマラソンを走れと言うようなものです。そうではなく、社内独自の『コプロ検定(仮称)』を設定し、段階的に技術者としての素養を醸成、実務経験を積みながらコプロ・グループ内のキャリアステップを積み重ねていく。さらに技術社員の評価に合わせて、給与や報酬などで還元していきたい。このような仕組みがあれば、技術者のモチベーションも維持できると考えます。また、顧客企業と技術者の希望がマッチすれば、有料職業紹介(顧客企業が求める人材の紹介)も行っていいと考えています。長期間にわたり活躍できる優秀な人材を輩出していくのも私たちの役割です」と清川氏は話す。まさにコプロ・グループならではの姿勢といえるだろう。

技術者を支援するためのデジタル化にも注目したい。「以前から技術者一人ひとりにスマートフォンを貸与し、コミュニケーションツールのみでなく、勤怠管理や当社独自のアプリを導入し、生産性の向上や福利厚生の拡充を行ってきました。勤怠管理ではファックスや電話による報告を廃止し、データ管理を行うことでバックオフィスの事務作業の大幅削減に成功しています」。

同社独自のアプリ「コプロ・マイレージ倶楽部」は、在籍年数が長くなるにつれてマイルが蓄積され、電子ギフトなどに交換できる福利厚生プログラムだ。

「このほかシステム化の推進によるさらなる生産性の向上を目的に、現在もプロジェクトを推し進めています」と清川氏は語る。

5年後にグループ売上高400億円の達成を目指す

中計では5年後の売上高および営業利益の目標も示された。「27年までの中計では『エンジニア応援プラットフォーム』を核とした各種施策により、グループ売上高400億円、ノンギャップ(非GAAP)営業利益(減価償却費・のれん償却・株式報酬費用を足し戻した本質的な利益)50億円を実現する計画です」(清川氏)。

対象期間5年で売上高を年平均約20%成長させるという大きな目標だ。その根拠となる外部環境について、どのように予想しているのか。

「当社の推計ではありますが、建設・プラント技術者派遣市場は、21年に2823億円だった規模が、30年には6052億円に拡大していくと見込んでいます」。10年間で2倍以上、年平均成長率ではプラス8.8%に達する計算になる。

背景には、少子高齢化に伴う各分野での技術者不足も挙げられるという。「ビル建設や道路の改修工事など建設投資額は今後も上がっていく一方で、そこで働く人員は減少傾向にあります。このギャップが私たちのサービス提供の機会となります」と清川氏は説明する。

むろん、AI(人工知能)や工事用ロボットなどの普及も進むだろうが、これらがすぐさま人間に取って代わることは考えがたい。「工事品質や安全管理など、人がやらなければならない部分は必ず残ります。建設業界は就業者の高齢化と若手人材の不足により構造的な人手不足を抱えています」。

一方、競合企業との差別化をどう図っていく考えなのか。

「一口で言えば『圧倒的な顧客志向』です。これまではお客様のためにと言いながら、人員確保が主眼になりがちでした。本当に顧客企業が求める人材を派遣できたのか、技術者が理想とする働き方を提供できたのか。マッチングのギャップ解消も含め、顧客企業のみならず技術者にとっても『圧倒的』といえる顧客志向でサービスを磨き上げていきたい。そのために、エンジニア応援プラットフォームを必ずや確立しなくてはなりません。技術者・顧客企業双方から選ばれる企業に成長し、技術者のさらなる採用や勤続年数の伸びにつなげていきます」と清川氏は胸を張る。

M&Aや海外展開も中計への貢献が期待される

グループの屋台骨は建設・プラント技術者派遣だが、さらなる市場シェア拡大や第2、第3の主力事業・収益源の育成に向けた投資も行っていく予定だ。

「やみくもに事業ポートフォリオを拡大するつもりはありませんが、市場成長性が高く、付加価値の高い技術者に特化した人材サービスを営む企業はM&A(合併・買収)の対象として積極的に検討したいと考えています」と清川氏は話す。

建設・プラント技術者派遣領域では22年4月、高砂熱学工業の100%子会社であるヒューコスの労働者派遣および有料職業紹介事業を吸収分割により承継した。「高いスキルを保持する技術者約120名が当社グループに加わり、当社の技術者集団としての成長と顧客企業との関係性強化につながりました」(清川氏)。

新たな主力事業・収益源の育成としては、21年4月に買収した機械設計開発技術者派遣事業を営むアトモス、同年9月に買収したシステムエンジニアリングサービス事業を営むバリューアークコンサルティングを考えている。

「非連続な成長を実現するために、M&Aは重要な施策であると考えています。ただし、コア事業である建設技術者派遣のオーガニック成長が大前提です」と清川氏は加えた。

アフターコロナを見据えた取り組みも始まっている。「21年4月に、グローバル事業としてベトナムに現地法人を設立しました。優れた高度人材を日本国内の当社顧客企業に派遣するほか、ベトナムに進出している日系ゼネコンに対して、日本で経験を積んだ高度人材をUターン派遣するスキームの構築も検討していきます」。将来的にはほかの東南アジア諸国への進出も検討したいという。

「コプロ・グループは創業以来16年間、顧客企業、求職者と向き合い、人が持つ力を信じて成長してきました。ここからさらに業績を上げ、世の中に広く私たちのサービスを提供していきたいと考えています。そのためにも、顧客企業、当社グループの社員をはじめ、コプロに関わるすべてのステークホルダーに対し、圧倒的な顧客志向で寄り添っていきたい。その結果、私たちの企業価値は必ず向上していきます」と清川氏は語る。コプロ・グループの新たな挑戦に、引き続き注目していきたいところだ。

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