逆境でも好調な企業に共通する「顧客への対応」 注力すべきは、新規獲得か既存顧客の維持か

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コロナ禍は、規模の大小を問わず多数の企業を苦境に陥れた。とりわけ、外出自粛の影響をもろに受けたのが“リアル”のビジネスだ。ところが、同じ業種・業態であっても、ダメージを受けるどころか逆に売り上げをアップさせている企業は確かに存在する。彼らはどんなマーケティングを展開しているのか。
中小企業のマーケティングに詳しい小阪裕司氏と、システムと人の両面によるマーケティング支援でコロナ禍でも着実な成果を上げているシナジーマーケティングのクラウド事業部 セールスディレクター、中本真佑氏がその共通点をあぶり出した。

軽視されてきた「既存顧客」こそ、収益増のカギ

――コロナ禍で苦境に陥る企業が続出しています。そういった企業に何か共通点はあるのでしょうか。

中本 真佑(以下、中本) 多いのが、慌ててデジタル化に対応しようとして、資金やリソースを投下しすぎてしまうケースです。多様化したチャネルに合わせて複数のSNSを展開し、ECサイトも構築するなどいろんなことを試みるのですが、デジタル化することだけに追われてしまい、戦略なく予算を投下してしまっているために回収が難しく、ビジネスが停滞し困っているという声をよく聞きます。

つまり、売り上げが向上しない企業に共通していることは、戦略がないことです。戦略を定めていないのに、デジタル化という「手段」のみにとらわれているので、結果につながらないのです。戦略を定めるには顧客を見ることが重要ですが、そこをないがしろにしている企業が多いと感じます。

シナジーマーケティング クラウド事業部 セールスディレクター
中本 真佑
2006年にシナジーマーケティングに入社後、15年以上にわたりあらゆる業界のCRM
(顧客情報管理システム)支援に従事。同社でデジタルマーケティング支援事業を立ち上げ、コンサルティングや、BPO(業務アウトソーシング)など年間200社を超える企業のデジタルマーケティング支援を実行している。また、金融業界やEC業界に向けた業界特化型の組織も組成し、幅広い専門性と支援経験を持つ

小阪 裕司(以下、小阪) 確かに経営が厳しくなると「手段で打開しよう」とする企業は多いですね。商品やサービスの見直しで何とかしようとするのもよく見られます。コロナ禍でも売り上げを向上させた企業は、中本さんが指摘したように顧客、とりわけ「既存顧客」をしっかりと見ているように思います。

オラクルひと・しくみ研究所代表/博士(情報学)
小阪 裕司
山口大学人文学部卒業。1992年に「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「感性」と「行動」を軸としたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰している。近著に『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』(PHPビジネス新書)など

――顧客といえば、新規獲得というイメージが根強くあるように思います。なぜ「既存顧客」が重要なのでしょうか。

小阪 売り上げは、顧客が「買いたい」気持ちになり、「購入する」という行動がなされて初めて発生します。「顧客の行動だけが売り上げをつくり出す」と私は提唱していますが、戦略を立てるには買ってくれた人、つまり既存顧客を見なければなりません。

ところが、長い間、既存顧客は軽視されてきました。高度成長期で人口も増えていた頃の名残で、新規獲得だけを意識してきたんです。だから、いまだに顧客リストを作成していない中小企業は決して少なくありません。誰がどのくらいの頻度で購入もしくは来店し、誰がいつ頃から買わなくなったかも把握できていないのです。

中本 新規顧客だけを重視する傾向は、最近ようやく薄れてきましたね。少子高齢化でマーケットの縮小が確実視され、新規顧客の獲得が困難になることが周知され始めました。加えて、コロナ禍でリアルの接点が減ったことによる危機感も大きいようです。

そもそも、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の収益性アップを図るよりはるかに高くつきます。そのことに気づき、「どうしたら既存顧客の売り上げをアップできるか」を真摯に考える企業が増えています。

老舗も取り組む「ファン化」のコツは

――具体的には、どのように既存顧客との関係を構築していけばいいのでしょうか。

小阪 まずするべきは、顧客とつながり、コミュニケーションを取ること。そのための顧客リストの作成と、購買履歴や来店履歴のマネジメントです。そうしないと、一度売って終わりの「フロー型ビジネス」にとどまってしまうからです。顧客はどこで買うかつねに選んでいます。逆に言うと、売れないのは選ばれていないから。

選ばれる関係性を育み、継続的に購入してくれる「顧客」をストックし、「ストック型ビジネス」となれば、買ってくれるだけでなく口コミや紹介にもつながります。しかも、企業側が勧めたものを買ってくれるので、売り上げも立てやすくなるのです。

――「ストック型顧客」というと、そのお店の「ファン」ということですね。「顧客のファン化」は近年注目されていますが、シナジーマーケティングが支援している企業で、「ファン化」の成功事例はありますか。

中本 はい。「ファン化」のご支援は弊社の得意とするところで、業種業態を問わずたくさんの成功事例があります。

例えば数百年の歴史を誇る老舗ブランドは、顧客の顔や名前、趣味などをすべて記憶しているカリスマ販売員の存在が強みでした。まさに「ファン化」をしてきたわけですが、どうしても属人化するため、提供できる顧客体験が限定的になります。

そこで、弊社のCRM(顧客情報管理システム)を活用し、顧客データを全販売員が連携・共有できるようにしました。結果、オンラインでもこまやかな気配りが可能となるなど、どのチャネルでも同様に「ファン化」できる仕組みが整いました。

同様に、製造から小売りまで自社展開している企業で、直営店と同じようなOne to Oneコミュニケーションをデジタルで実現した事例もあります。

――デジタルで行うコミュニケーションとは、具体的にどのようなものでしょうか。SNSやメルマガなどで継続的にメッセージを発信すればいいように思いますが……。

中本 いえ、すべての顧客に対し、SNSやメルマガなどで単一的なメッセージを一方的に発信しても、「ファン化」させるのは難しいです。企業が提供する価値観に共感し、応援したいという意識が生まれて初めて「ファン」になってくれるわけですから。

よくあるのが、「お客様に感動を与えたい」と言いながら、具体的にどんな感動を与えたいのか明確になっていないケースです。まずはそこを深掘りして具体化しないと、共感は得られません。

大切なのは、顧客を深く知り、理解することです。そうすれば発信すべきメッセージが明確になりますし、どう届けるかの戦略や成功のヒントも自然に見えてきます。先ほどお話しした成功事例も、同様のアプローチをしてきました。

小阪中本さんの指摘する「深く知る」は非常に重要です。大切なのは、顧客とコミュニケーションを深め、価値を共創していくことです。例えば、こんな話があります。

ある都内の飲食店は、以前は周りのお店のメニューや単価に影響されてメニューを決めていました。それが、お客さんと積極的に話すようになり、好みやニーズを把握できるように。そこに自分たちが本当に提供したい料理が合わさって、お客さんが喜びそうな新メニューを思いついた。

結果、小さな店ながら年間1300食も出る大ヒットメニューになりました。ちなみにその店は、それからも次々にヒットを生み出し、5年間で平均客単価を倍増させました。

中本 結果を見るとメニュー開発の話かと思ってしまいますが、そうではなく、顧客を深く理解したからこそ、成功のヒントをつかめたということですね。

実家の紳士服店の業績を伸ばした
「メールマーケティング」から始まった

――やはり大切なのは顧客理解ということですね。

中本 はい。伝えたいメッセージをきちんと顧客に届けるには、顧客の情報を適切に収集・分析することが重要です。弊社のCRM「Synergy!」は、その一連のプロセスを仕組み化し、コミュニケーションが最適化できるように設計されています。

大きな強みとしては、約20年前から国産CRMの草分けとして取り組んできましたので、成功体験を機能に随時反映しているのがまず1つです。もう1つは、システムありきではなく、お客様企業とつねに伴走する意識を大切にしていることです。

弊社は「101点のサービス」を目指していますが、これは一度きりの120点ではなく、継続して「+1点」を提供し、お客様の期待値を超え続けるサービスを提供したいという思いからです。これは顧客理解を深めることにもつながる価値観だと思っています。

小阪 とてもいいですね。顧客との共創で価値を生み出していくのに、そういった思想に基づいたシステムは親和性が高そうです。なぜそういう価値観が醸成されたのでしょう。

中本 実は弊社の創業者の実家が街の紳士服店で、まだそういう手法が珍しかった頃にメールマーケティングを展開して売り上げ増を達成しました。その喜びを伝えたくて起業し、「Synergy!」の開発につなげた経緯があります。

ですから、顧客の声を聞くというのが基本的な姿勢としてありますし、使いやすさを重視したUI(ユーザーインタフェース)にこだわるのもそのためです。

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「Synergy!」の画面サンプル
シンプルで操作しやすいのが特徴的だ

小阪 興味深いですね。規模を問わず、これからの時代はデジタルツールの活用が欠かせませんし、まだ顧客リストの作成もできていない企業にとっては、取り組みやすいように感じました。

中本 ありがとうございます。CRMには「機能が多すぎて使いこなせないのでは」「デジタルに強い人材がいないと難しそう」というイメージがあるかもしれませんが、「Synergy!」は必要な機能に絞って提供し、使いやすさにこだわっています。

とくに、サポートに関しては、製品仕様や操作方法といった基本的な部分から、お客様企業に合わせた最適なプランのご提案、お客様が自走できる体制づくりまでカバーしています。システムと人の両面から手厚くサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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