中小企業との資本提携を通じ「地域創生」を実現 地域密着型の中小企業が抱える課題を解決

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地域社会の活性化のためにはその地域の企業が持続的に成長することが不可欠だ。だが、その担い手となる地域の企業、中でも中小企業の中には、時代の変化に応じた変革ができていない企業や、後継者不足などにより経営の危機に直面しているケースも少なくない。これらの課題の解決に向け、新たな手法で取り組んでいるのがメイホーホールディングスだ。大きな特長は資本提携(M&A 企業の合併・買収)の後、「稼ぐ力」を身に付ける支援を行う点だ。2030年には300社体制を構築し、ネットワーク化を目指している。同社の取り組みを取材した。

地域を支える中小企業と資本提携しグループで大きな力に 

岐阜県を拠点に日本・海外で16社930人の事業を展開しているメイホーグループの大きな特長は、地域の中小企業に対してM&A(合併・買収)を通じた積極的な応援をしていることだ。

メイホーホールディングス
代表取締役社長
尾松 豪紀 氏

「地域の中小企業は長年その地で事業を行い、行政などとの信頼関係を築いているところが少なくありません。ただし、経営は成り行きで、年に一度、決算で締めてみて『今年は儲かった』『赤字だった』とやっているところも多いのです」と、メイホーホールディングス 代表取締役社長の尾松豪紀氏は語る。

そこでメイホーグループ入りした企業には、売り上げや経費の管理などを徹底し、月次で目標を立てPDCA(計画、実行、評価、改善)を回すことで、「稼ぐ力」を身に付けてもらう。

「メイホーグループという同じ組織の仲間として、一つひとつのグループ会社が経営基盤の再構築を実現し、収益力を高めて再生するお手伝いをするのが当社のM&Aです」と、尾松氏は力を込める。それを通じて、地域経済の活性化にもつなげたいという思いなのだ。

一般的にM&Aでは、買収した企業に経営陣を送り込んだり、事業の統廃合やリストラを行ったりすることが珍しくない。だが、メイホーグループでは、社名はそのままで、経営者も買収先企業の社員から登用されるケースがほとんどだ。従業員の雇用も維持する。買収先企業と「共に成長しよう」とする同社の姿勢は注目に値する。

「中には債務超過に陥っている企業もありましたが、それは、それまで経営の管理がしっかりできていなかったからです。当たり前のことを当たり前にやれば必ず稼げる会社に変わることができるんです」と尾松氏は語る。

経理や人事などでグループ共通のシステムを活用できるので、管理会計も定着するという。実際に、メイホーグループに加わったほとんどの企業が、売り上げや利益が改善している。業績の向上に伴い、人員を大幅に増員した企業もある。地域での雇用を創出しているという点でも意義深い。

尾松 豪紀氏の著書

日本では地方経済を活性化させ元気にする「地方創生」が叫ばれて久しいが、これといった解決策は見いだせていない。そこで筆者が提唱するのが「地域企業支援プラットフォーム」という地域企業によるネットワーク構想である。プラットフォームに参加する企業が連携することで経営力・生産性を高め、各企業が持つ高度な技術・ノウハウを結集することで新たなビジネスモデルの創造を目指す。「真の地域創生とは何か」を問い直すための書である。

上場効果による採用力アップと総力を挙げて人材支援

メイホーグループは現在、建設コンサルタントなどの「建設関連サービス事業」「建設事業」、人材派遣などの「人材関連サービス事業」「介護事業」の4つのセグメントで事業を展開している。グループの経営企画、総務・経理・人事・法務を統括した管理、内部監査などを、メイホーホールディングスが統括して行っており、2021年6月には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)および名古屋証券取引所セントレックス市場(現ネクスト市場)に上場した。

「求職者の方やご家族にとっても、上場企業のグループの一員になるという安心感があると思います。上場の狙いの1つはそこにあります」と、尾松氏は話す。

また、メイホーグループではカンボジアに自社拠点を有し、CADから測量・GISなどのデータ処理ビジネスの海外アウトソーシング事業を手がけているが、同国からの技能実習生をグループ内で採用・活用し、建設業や製造業、サービス業における人材不足解消、人材育成にも力を注いでいる。

「売り上げや利益の確保もさることながら、中小企業にとっては人材の確保も大きな課題です。大げさでなく、人が採れないために事業が継続できないという中小企業も増えています」(尾松氏)。各地域経済の担い手である中小企業を支えることで、地域経済の活性化に貢献したいと考える同社の姿勢がうかがえる。

2030年に全国300社のグループ化を目指す

M&Aについて、尾松氏は「メイホーホールディングスの売り上げ・利益拡大のみを目指すシナジーは考えていません。押し付けのような『統合』をするつもりもありません。元気な中小企業を全国に増やし、結果として、グループ全体の収益拡大につながればいいと考えています」と語る。

背景には尾松氏自身の体験がある。尾松氏は大学卒業後、大手企業に勤務の後、父親が創業した建設コンサルタント会社のメイホーエンジニアリングに入社した。その後、代表取締役に就任するが、「事業を拡大しようとしても、とくに公共工事などでは新参者には仕事がなかなか回ってこない。頑張った中小企業が報われる社会でなければならないと強く感じました」と振り返る。1社1社は小さくても、力を合わせることでそれが可能になると考えたのだ。

「30年にはグループ企業を300社にしたいと考えています」と尾松氏は目標を語る。雇用の創出や地域経済の活性化にも寄与することができる。ただしそこでも「決して、ホールディングスの指示に従うだけのグループを目指してはいません」と尾松氏は念を押す。あくまでも、個々の企業がその地域の中核企業として成長してほしいと願っているのだ。

「現在4つの事業セグメントがありますが、そこにもこだわっていません。全国の元気な中小企業が加わってくれることで、当社グループの市場やセグメントもどんどん広がっていくでしょう」と尾松氏は話す。

そこで重要なのが「同じマインドを持つこと」だという。同社グループには「メイホーグループの弾み車」と呼ぶ考え方がある(下図参照)。その開始点には「グループ理念に共感し志ある人を増やす」と記されている。この弾み車が勢いよく回転することで「地域創生の輪が広がる」のだ。

「この考え方に賛同する中小企業経営者が増えることで、全国各地での地域創生が実現し、日本全体が元気になると確信しています。ぜひ全国から参加していただきたい」と語る尾松氏。その推進に注目したい。

グループ企業の経営者に聞く①

従業員の経営への意識が大きく変化


アルト
代表取締役社長
小森 薫 氏

介護事業を手がけるアルト(岐阜市)は、愛知県、岐阜県に6カ所の介護センターを運営している。2016年、M&Aによりメイホーグループの一員となった。

それを機に代表取締役を務めることになった小森薫氏は、介護スタッフから抜擢された。

小森氏が代表に就任し、最初に手がけたのが従業員の経営意識の醸成だ。「介護サービスはニーズが高まる一方で競争も激しくなっています。当社が選ばれるためには何が必要なのか、日々議論するようになりました」。サービスの拡充や品質の向上などにも努めているという。

「スタッフには女性も多いため、働きやすい環境づくりも進めています。このあたりはメイホーグループの知見やノウハウが生きています。多様な人材が活躍できる仕組みや社風をつくっていきたいと考えています」

グループ企業の経営者に聞く②

管理会計が定着し経営目標が明確に


スタッフアドバンス
代表取締役社長
渡辺 龍也 氏

福島県二本松市に本社がある人材派遣会社スタッフアドバンスは、2015年にメイホーグループに加わった。

経営を引き継いだ渡辺龍也氏は次のように振り返る。「尾松社長に教わりながら、損益計算書や貸借対照表の見方から勉強し直しました」。その結果、管理会計に基づく計画や行動が定着してきたという。「月次などの短いタームで目標を立て、その実現に向けてどこまでできているか、できないならばどこに原因があるかを見極め、改善するようになりました」。目標も着実に達成できるようになった。

「現在は東北地方が事業の中心ですが、メイホーグループのネットワークを生かし、東海地方など他の地域への進出も検討しています。グループ企業のお客様への提案もできるので、参入障壁が低いと考えています」と渡辺氏は、さらなる成長に意欲を見せる。