LINEミニアプリの「会員証」で顧客接点強化へ 2社の事例にみる店舗DXの効果と可能性

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集客や販促のツールとして活用される「会員証」。紙からアプリへのデジタル化を検討している企業や店舗は少なくないだろう。しかし、自社アプリをダウンロードしてもらえなかったり、利用者数が増えなかったりと、ユーザーとの関係性構築やリピート促進といった会員証の本来の目的を達成する前段階で苦戦するケースも多い。
こうした課題に対する新たな打ち手として、今注目されているのがLINEミニアプリの「会員証」機能だ。QRコードを読み取るだけで利用開始できるため、ユーザーは登録の手間が省けるだけでなく、新たなアプリを別途ダウンロードする必要もない。さらに、店舗側はPOS(販売時点情報管理)システムとの連携で会員管理をしやすくなるなど、さまざまなメリットがある。実際に利用している企業や店舗は、どのようにLINEミニアプリを活用し、課題を解決しているのか。2社の事例を取り上げる。
LINEミニアプリの概要
国内利用者数9,200万人以上(2022年3月末)のLINE上で、順番待ち受付・会員証・店内注文・予約などの機能を持つサービスの提供が可能。ユーザーは自社アプリのインストールや会員登録をしなくても、LINEアプリ内でサービスを利用できる。LINEミニアプリを導入する際は企業の要望に合わせて一から構築する「個別開発」と、必要な機能を簡単に導入できる「パッケージ」が利用可能。パッケージ利用の場合、店舗は新たにアプリを開発・導入する手間やコストを削減できるなどのメリットがある。

【小売店】手軽に利用開始できるから小規模店でも会員を増やせる 

2021年11月、兵庫県三田市にオープンしたガーデニング店「tlahus(トラハス)」。北欧のガーデンライフを通じてサステイナブルな考え方を持ち続けようというコンセプトの下、植物や雑貨の販売、ガーデニングの相談、ワークショップまで幅広いサービスを展開している。

北欧のガーデンライフを提案する「tlahus」

オープンに当たっては、来店客にポイントを貯める楽しさを感じてもらい、再来店につなげるために会員証の導入を決めていた。エコを追求する店舗のコンセプトからも、紙やプラスチックのカードは選択肢になく、最初からデジタル会員証を検討していたという。ただし、オープンまでの日数も少なく、手間もかかることから会員証の自社アプリを導入する選択肢はなかった。tlahusを運営するグリーンポット貿易部代表の古川琢也氏はこう話す。

「そもそも単独店舗だと、自社アプリを開発したとしても顧客に活用してもらうに当たってのハードルが高いと感じました。大手のアパレルやドラッグストアのように多店舗展開していれば、自社アプリを日常的に活用してもらえるかもしれませんが、あまり現実的ではないと考えました。また、現場のオペレーションを考慮すると、自社アプリを新たにダウンロードしてもらうための働きかけも負担になるだろうと思いました」(古川氏)

LINEミニアプリを活用したtlahusの会員証

そこで採用したのがLINEミニアプリの「会員証」だ。パッケージ化されているため、導入に手間がかからないだけでなく、LINE上で会員証が発行できるため、顧客の利便性も高いと感じたという。会計時に新規登録する客が多いとレジ待ちで混雑してしまうおそれがあるため、会員証登録用のQRコードを店内の各所に貼り、事前の登録を促しているそうだ。

会員登録を促すPOPを店内各所に掲示している

「店舗ではPOSレジ『スマレジ』を導入しています。スマレジの会員管理機能と、会員証機能を持つ連携システム『EDWARD(以下、エドワード)』のLINEミニアプリを利用することで、LINEミニアプリを利用された方はスマレジの会員として自動追加されます。会員の個人情報や購入情報は『エドワード』のLINEミニアプリに蓄積されるので、購入金額に応じてディスカウント率やポイントの付与率を変えることもできます。その他、店舗のLINE公式アカウントも運用しているので、現在は月1〜2回ほどワークショップのお知らせなどのメッセージを配信しています」(古川氏)

tlahusのオープンから半年、1日の平均来店客数は100~150人前後で、会員数は2100人ほどに増えているそうだ。物販だけではなくワークショップなどを通じてライフスタイルを提案することにも軸足を置いているため、ファンづくりは重要な戦略の1つ。「今後は『エドワード』のLINEミニアプリをマーケティング基盤として活用し、会員の属性に応じて最適なメッセージを配信していきたい」と古川氏は展望を語る。

北海道デジタル・アンド・コンサルティングが提供する「EDWARD(エドワード)」のLINEミニアプリについて、詳しくはこちら

【美容サロン】新規友だちは毎月1000人超。
予約のドタキャンも減少

東京・首都圏で、まつ毛や眉毛の最先端美容を手がけるアイサロンを展開する「ダイヤモンドアイズ」。従業員は厳しい研修をクリアした美容師免許取得者のみで、一人ひとりの要望や悩みに寄り添った丁寧な接客と、安心・安全な施術を徹底することでコアな顧客基盤を構築してきた。

アイゾーン専門サロンとして関東近郊に展開する「ダイヤモンドアイズ」

同社では、LINEミニアプリの「会員証」を導入する約1年半前の2020年5月に、顧客と“友だち”としてつながれるLINE公式アカウントを開設した。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言を受けて、全店休業を余儀なくされたことがきっかけだったという。マーケティングを統括する川崎友華氏は、当時の課題について「POSを活用すればお客様にメール送信はできるものの、配信停止にされる方もいてコミュニケーションツールとしては弱かった」と振り返る。そこで、圧倒的なユーザー数を誇るLINEに注目したという。

「予約やキャンセルなどの連絡やクーポン配信の際にはLINE公式アカウントを活用するように。無料で使えるLINE上のショップカード機能(現在は利用停止)も功を奏し、全店で毎月200〜400人ほど友だち数が増加していきました」(川崎氏)

ダイヤモンドアイズ
取締役 営業本部長
川崎友華

LINE公式アカウント導入により顧客接点の強化に手応えを感じたことで、「会員証」機能を持つLINEミニアプリを導入して、オンライン施策を強化。実は、ダイヤモンドアイズではかねて会員証機能を有する自社アプリを利用していた。それまで予約経路は自社アプリが最も多かったが、アプリユーザーと顧客情報とひも付けられなかったため、顧客属性に応じたセグメント配信ができないなどの課題があった。

「弊社では、従来から使用していた理美容サロン専用のPOS・顧客管理・予約システム『SalonAnswer(以下、サロンアンサー)』のLINEミニアプリを利用しています。また、そもそも自社アプリはお客様ご自身に新たにダウンロードしてもらわないといけません。その点、LINEミニアプリならすでにインストールしているLINE上からワンタップで使用できるので、利便性の高さは明らかです」(川崎氏)

LINEミニアプリを活用したダイヤモンドアイズの会員証

かくして2021年9月に自社アプリを完全廃止し、LINEミニアプリへの切り替えを実行。店舗のオペレーションや移行のプロセスなどは、「サロンアンサー」の担当者と二人三脚で計画した。不安はあったというが、コストや会員基盤の盤石化を踏まえるとメリットのほうが大きいと判断したという。

現在はサロンアンサーとの連携により、自社のLINE公式アカウント経由でユーザーに予約のリマインドを自動送信するなど有効活用している。使い慣れたLINEで連絡が取れることで、ドタキャンの減少も実感しているそうだ。

さらに、LINEミニアプリの利用時に自社のLINE公式アカウントをスムーズに友だち追加してもらえるため、同サービスの導入後は毎月平均1000人程度、友だち数が増加している。また、LINE経由で予約する際のポイント付与率は外部の予約サイトより増やすことで、リピーターの囲い込みにも手応えを感じているという。

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友だち追加したユーザーに、LINE公式アカウントから予約のリマインドメッセージを自動配信したり、 お得なキャンペーン情報を手動配信している

LINEを戦略的に使うことで、コロナ禍の困難を乗り越えてきたダイヤモンドアイズ。今後の展望について、同社社長の黒沼いずみ氏は次のように語る。

ダイヤモンドアイズ
代表取締役
黒沼いずみ

「薄利多売の文化が根強い日本の美容業界ですが、われわれは顧客に高品質なサービスを提供し、それに見合う単価でビジネスをしたいと思っています。当社も外部の予約サイトを利用していますが、新規顧客の集客には有効な反面、価格競争に陥ってしまいがちです。そうならないためにも、LINE公式アカウントや『会員証』機能を持つLINEミニアプリで、継続的に顧客接点を持つことが、ビジネスの戦略上重要だと考えています。今後は物販のECサイトとも連携させて、商品を購入された方向けのメッセージ配信にもトライしたいです」(黒沼氏)

エクシードシステムが提供する「SalonAnswer(サロンアンサー)」のLINEミニアプリについて、詳しくはこちら

 

今回、異なる課題を抱えていた2社にフォーカスして、LINEミニアプリの「会員証」の導入効果を深掘りしたが、共通しているのは課題解決だけではなく「攻めの施策」に役立てていることだ。既存の方法に執着せず、LINEの法人向けサービスを積極的に使いこなすマインドでビジネスを前進させ、顧客とのつながりを深めて強靭な経営基盤を築き上げようとしている。そうした基盤づくりに当たって、LINEミニアプリは強力な武器になるだろう。

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