EC市場が日本も越境もブルーオーシャンな訳 コロナ禍で変化した購買行動や決済方法も影響

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スマートフォンの普及により、オンラインショッピングは当たり前のものとなった。では、EC市場が飽和状態かといえば決してそうではない。ユーザー数4億人以上のオンライン決済サービスを展開するペイパルが2021年に発表したレポート(※1)によれば、日本のEC市場は、金額ベースでは世界第4位だが、日本の小売業全体に占める割合はわずか13%。さらに同社の別の調査(※2)によれば、越境ECに至っては中小企業の28%しか展開できていない。市場に成長の余地が残っている中、企業はいかにECを活用すべきか。ペイパルに取材し、足かせを解き放つ道筋を探った。
※1 2021年ペイパル海外通販レポート
※2 ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査

シニア世代も増加している日本のEC市場

コロナ禍によって、生活様式もビジネスのあり方も大きく変わった。では、ニューノーマル時代の基盤となったことは何かといえば、デジタルだ。そのため、すでにデジタル技術の導入が進んでいるマーケットほど、「プラスの影響」を受けている。

ペイパルが日本、インド、シンガポール、香港のオンライン販売をしている中小企業に実施した調査(※2)によれば、コロナ禍前にデジタル決済などのフィンテック導入率が最も高かったインドでは、「プラスの影響があった」と回答した中小企業が52%に達している。逆に、フィンテック導入率が最も低かった日本は、14%にとどまった。

ネガティブな結果だが、消費者の行動変化を見ても、大きな機会損失が生じていることがわかる。なぜなら、オンライン販売をしている日本の中小企業の78%が消費者行動の変化を実感。具体的に変化した部分として、33%が「より多くオンラインで購入するようになった」と回答しているのだ。決済方法の変化も27%が実感しており、「ますますデジタル決済に依存した」「さまざまな決済方法を利用した」「高額な買い物にデジタル決済を利用した」といった回答も寄せられている。

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出所:ペイパル「中小企業によるEコマース活用実態調査〜日本におけるECの現状と未来〜 消費者行動が変化した分野(複数回答可)」

つまり、オンラインショッピングが代替手段ではなくなり、期待値が高まっているのに、EC市場が対応しきれていないということだ。実際、調査では既存客の支出は減った一方でリピート購入率が増加したという結果も出ている。さらに、EC利用年齢層に変化が生じたことも見逃せない。シニア世代の利用が増加しているのだ。日本は言わずと知れた世界一の高齢社会。シニア世代がEC市場のホワイトスペースとなる意味は非常に大きい。

RCEPなどの貿易協定も越境ECを後押し

日本国内のみならず、越境ECも成長余地が大きい。背景には、近年の輸出・貿易依存度の低さがある。国内需要に注力してきたため、越境ECを実施している中小企業はわずか28%。「行う予定がある」の16%を加えても、まだ半数に満たないのだ。

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出所:「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査 APAC地域比較」より抜粋して改編

ではマーケットの状況はどうか。アジアをはじめとする成長市場のセールスチームを率いるペイパルのグロースマーケット担当シニアバイスプレジデント、サンバ・ナタラージャン氏は次のように解説する。

ペイパル グロースマーケット担当
シニアバイスプレジデント
サンバ・ナタラージャン(Samba Natarajan)

「アジアは世界中のECの最前線に立っています。アジア全域における可処分所得の増加とインターネット普及率の上昇が、ECおよびデジタル経済の急成長に拍車をかけました。2022年1月に発効された『地域的な包括的経済連携(RCEP)協定』(※3)などの新しい貿易協定の導入も、要因の1つとなっています」
※3 地域的な包括的経済連携協定:RCEP(アールセップ)。日本、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナム、豪州、中国、ニュージーランド、韓国、マレーシアの12カ国で発効。農林水産品や工業製品などへの関税が減免される。

この商機を見逃さず、コロナ禍になってから越境ECを開始した中小企業も多い。前述の28%のうち、実に約4割となる39%がそうだ。「企業にとって、ビジネスを成長させるためには、越境ビジネスを拡大し、世界中の消費者にリーチすることがカギになっています」とサンバ氏が話すように、今こそグローバルのECチャネルを展開するタイミングだといえるだろう。

ECの勝ち組になるために不可欠な要素とは

しかし、いくらチャンスでも、ただECチャネルを用意したところで成功するとは限らない。欠かせないのはリアルビジネスと同じく「顧客理解」だが、コロナ禍による変化も念頭に置く必要がある。サプライチェーンの分断によって商品の品切れを起こしたブランドが続出したが、それによって顧客ロイヤルティーは著しく低下しているのだ。

「そのため、新しいブランドを試そうとする傾向が強まっています。消費者を引き留めるには、ターゲットとなる消費者のニーズを理解し、それぞれにパーソナライズされたインセンティブを提供し、製品のレコメンデーションを最適化することが大切です」

だからこそ、データの活用がカギを握るとサンバ氏は強調する。勘に頼った行き当たりばったりの在庫管理ではなく、ニーズを予測してつねにカスタマイズした体験を顧客に提供し続けなくてはならないのだ。加えて、ECチャネルのUI(ユーザーインターフェース)にも細心の配慮が求められるという。昨今は、商品をカートに入れたものの購入せずに離脱する 「カゴ落ち」の問題も企業を悩ませており、多様化する決済方法や、高まっているサイバー攻撃にも対応しながら、適切な対策を講じる必要がある。

そこで、下記のリンクから無料でダウンロードできるe-bookでは、コンバージョン率を大幅に向上させる「カゴ落ち防止」の方法や、消費者が迅速かつ安心して決済できる仕組みづくりについて、わかりやすく紹介。「どのようなUIであれば顧客離れを起こさずに済むか」「どのように顧客データを活用すればリピーターを増やせるか」などについても網羅されている。EC展開を一から始めたい人も、さらに売り上げを伸ばしたいと考えている人も、ぜひ参考にしてほしい。

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