「リード獲得がオンラインの倍以上」納得の理由 大盛況「脱炭素経営EXPO」出展から得た手応え

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「脱炭素の経営」に重点を置いた日本初(※1)の展示会である「脱炭素経営EXPO」。3月16日から3日間にわたって開催されたこの展示会は、3日間で4万人以上が来場し大盛況(※2)のうちに幕を閉じた。今回は、温室効果ガス排出量算定・可視化クラウドのパイオニアであるゼロボードと、大阪ガスの独自技術でゼロエネルギーの放射冷却素材を実現させたSPACECOOLの2社の事例を検証する。

難題のサプライチェーンGHG排出量を可視化

脱炭素化への取り組みをどう進めるべきか――。この命題に頭を悩ませている企業は多いだろう。ただ、どんな対策を取るにしても、「一丁目一番地」として取り組むべきことは共通しているとゼロボードの代表取締役、渡慶次道隆氏は話す。

「戦略の策定には、現状把握が欠かせません。適切に温室効果ガス(以下GHG ※3)を削減するためにも、まずはGHG排出量を算定することが大切です。今後は炭素税などカーボンプライシングの導入が予想されますので、リスク管理の一環としても必要です」(渡慶次氏)

ゼロボード
代表取締役
渡慶次 道隆 氏

厄介なのは、自社のGHG排出量の把握だけでは済まなくなっていることだ。上場企業には、サプライチェーン全体のGHG排出量の開示が推奨されており、原材料の調達から製造、物流、使用、廃棄に至るまですべてのGHG排出量を算定しなくてはならない。

「その解決策として弊社が開発したのが『zeroboard』です。GHG排出量算定の国際基準であるGHGプロトコルに基づいて設計し、ISO14064-3に準拠した検証手順に基づく妥当性の保証を受けています」(渡慶次氏)

2022年1月に製品版をリリースしたばかりだが、すでに上場クラスの企業約110社、関係会社や中小企業を含むと1,000社以上が導入。ソフトウェアベンダーと協業してERP(統合業務システム)やPLM(製品ライフサイクル管理)といった各種システムとデータ連携しているのも大きな強みだ。

導入企業とのセッションが抜群の集客効果を

他方で、先進的なソリューションだけにそれだけの実績があってもストレートに伝わらないジレンマもあったという。そこでゼロボードは、「脱炭素経営EXPO」でzeroboard導入企業とのセッションを展開。インパクトは大きく、ブースには一気に来場者が集結。その状態がさらに人を呼び込み、セッションの後、名刺交換の列ができたという。

「脱炭素経営EXPOの場合、セミナーを同時開催しているのも、効果的だと感じています。今回は、弊社のパートナー企業である関西電力と対談形式で登壇させていただきましたが、約500名の会場は満員状態でした。その後の商談にも多数つながっています」(渡慶次氏)

ブース前で行われたトークセッションも大盛況。来場者の真剣な眼差しが印象的だった

そう話す渡慶次氏は、これらの“仕掛け”に限らず、全体的に「有効リード(見込み顧客)が想定以上に獲得できた」と振り返る。

「前回出展よりも有効リードは5倍近く増え、展示会終了直後に役員決裁まで進んだ大型案件もありました。弊社の認知度も高まっていると思いますが、それ以上に脱炭素化への対応ニーズが急激に増していると感じます」(渡慶次氏)

次回の出展も決定しているゼロボード。次回は出展ブースを今まで以上に拡張し、業界別のユーザー事例を伝えることを予定しているという。

「3月の出展ではさまざまな業種・業界の方が来場されており、脱炭素が多くの業種にとって無縁ではいられないことの表れだと思います。次回の出展も、より幅広い方にアプローチできるチャンスだと期待しています」(渡慶次氏)

ゼロエネルギーで人・モノ・社会の暑熱環境を改善

新たなビジネスを展開する場合、認知度の向上を図るのが常道。しかし、言うほど簡単なことではない。従来になかったイノベーティブな商材ならなおさらだ。その課題に取り組んでいたのが、SPACECOOL。同社のアライアンス本部長、夘瀧高久氏は次のように話す。

「当社は2021年4月に設立したばかりですので、今回の出展は認知拡大を目的としていました。出展ブースへの来場者数は3日間で2400名と満足できる水準でした」(夘瀧氏)

SPACECOOL
アライアンス本部長
夘瀧 高久 氏

SPACECOOLが展開するのは、放射冷却の原理を活用し、エネルギーをいっさい使うことなく物を冷やすことのできる素材。従来の常識を覆す新たな技術を取り込んだ商材だ。

「従来、暑熱環境の緩和策としては、主に遮熱塗料が使われてきました。もちろん、何も塗らないよりも温度は下がりますが、どうしても外気温より温度が上がります。夏などは直射日光下に置くと、外気温より10~20度上昇することもありますが、SPACECOOLは、素材の温度をつねに外気温より2~6度低く保てます」(夘瀧氏)

名刺を獲得した600社の半数が商談へ展開

一方で、革新的な商材だけに、商談だけで放射冷却技術や導入イメージを伝えるのは困難だったと夘瀧氏は説明する。コロナ禍で、商談はオンラインがベースとなったことも難しさに拍車をかけたが、逆にその商談がヒントになったと話す。

「オンライン商談の後にサンプルを送ると一気に契約締結に進むケースが多かったので、実物を体感いただくことが重要だと思い、展示会への出展を決めました。『脱炭素経営EXPO』を選んだのは、ゼロエネルギーで冷却できるSPACECOOLが、脱炭素化へ大いに貢献できるということを伝えたかったからです」(夘瀧氏)

展示には工夫を凝らした。トラックの模型にSPACECOOLを貼り付けた物とそのままの物の2つを用意。模型内部に温度制御ヒーターを設置し、トラックの実証試験の温度差を再現することで、体感できるようにした。反響は大きく、半分ほどは同社の社名も知らない来場者だったにもかかわらず、名刺を獲得した約600社の半数が商談を希望したという。

ブース内には絶えず来場者が訪れており、製品に関する質問が相次いでいた

加えて夘瀧氏は、ゼロエネルギーで脱炭素に貢献できる点や、海外からの注目度の高さも評価されたと分析する。

「暑熱環境に有用な素材なので、中東やアフリカなど海外からの問い合わせも増えています。国内のみならず、グローバルのサプライチェーンでのGHG排出量削減にも貢献できるということは、大きなアピールポイントになると考えています」(夘瀧氏)

また来場者のみならず、出展企業同士の交流が生まれるのもリアル展示会のメリットだと振り返る夘瀧氏。実際、展示品の作製ではテントの生地や分電盤を製造するメーカーとコラボレーション。双方ともに商材の価値向上を図る結果となった。

「主催者のRX Japanさんのサポートが行き届いていたのも、成功の要因です。とにかく対応が迅速かつ的確でした。こういう展示会は、開催日が迫ると徐々に焦りが募るものですが、スムーズなだけでなく、こちらの事情もしっかりと踏まえて動いてくれました。そうしたサポートが、満足のいく結果につながったと考えています」(夘瀧氏)

3日間で4万人以上を動員。脱炭素への注目度の高さを肌で感じた

2社の出展を通じて見えるのは、持続可能な社会を目指すうえで、脱炭素化やサーキュラー・エコノミーへの取り組みはもはや不可欠なものになりつつあるということだ。一過性のトレンドではなく、経営の根幹に関わる内容になりつつある脱炭素。「脱炭素経営EXPO」や「サーキュラー・エコノミーEXPO」といったリアルイベントへの出展が、脱炭素という取り組みそのものの推進力になっていくのかもしれない。

※1 主催者であるRX Japan調べ

※2 4万1761名。同時開催の「第18回 スマートエネルギーWeek[春]」「第4回 資源循環EXPO」と3展合計の数値

※3 温室効果ガス(GHG):Greenhouse Gas。地球の大気および海水温度を上昇させる気体のことで、京都議定書では二酸化炭素やメタンなどが指定されている