カゴメが今取り組むハイブリッド型営業とは Dynamics 365×Teamsが生む新たな営業体験

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カゴメが変革に挑んでいる。「トマトの会社から、野菜の会社に」をビジョンに掲げて事業領域を積極的に拡大。新たな営業支援ツールとしてMicrosoft Dynamics 365を導入し、営業スタイルの根本的な改革にも取り組んでいる。日本を代表する食品メーカーで、コロナ禍でも業績好調な同社がなぜそこまで本気で改革を進めるのだろうか。その背景と、取り組みの成果を取材した。

日本の「野菜不足」を解消するために

カゴメの歴史は、1899年に創業者の蟹江一太郎がトマトの栽培に挑戦し、発芽を見たときにスタートしている。当初は全く売れなかったトマトをトマトソースに加工するなど、「新たな食のあり方」を提案するとともに、農業から生産・加工・販売まで一貫したバリューチェーンを構築してきた。

「現在、2025年のありたい姿として『食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる』を掲げています。様々な野菜の栄養価値やおいしさを活かした商品をお届けすることで、健康寿命の延伸や農業振興・地方創生、そして持続可能な地球環境といった社会課題の解決に貢献したいと考えております。

そう話すのは、営業本部 営業推進部 営業推進グループ 課長の山下恭一氏。例えば、2020年1月には、野菜摂取推進活動『野菜をとろうキャンペーン』を開始。野菜を摂ることの大切さや上手な摂り方を全社一丸となって広めている。また推定野菜摂取量を測定できる機器『ベジチェック®』の開発では、2021年度の日本栄養・食糧学会技術賞を受賞している。最近では、植物性領域の商品も拡充しており、近年マーケットが拡大している植物性ミルクの新ブランド「畑うまれのやさしいミルク」を2022年3月29日に新発売。健康的でサステナブルな食品として注目を集める『プラントベースフード』にも力を注ぐ。

カゴメ株式会社
営業本部 営業推進部 営業推進グループ 課長
山下 恭一

「現在、日本の緑黄色野菜の消費量のうち17.9%、淡色野菜を含めた野菜全体だと4.7%をカゴメが供給しています。この数字を上げていけば、生活者の皆さまにお届けできる野菜の量を増やすことができますので、営業としても非常にやりがいを感じています」

その一方で、従来の営業スタイルのままでは行き詰まるだろうと山下氏は考えていた。

「時代の変化と共に、お取引先様を取り巻く環境も変わっており、従来の提案方法は通用しなくなるのではと危機感を持っています。『お客様の課題を解決する』というビジネスの原点を今一度見直さないと、提案を受けて入れてもらえなくなるのではないかと感じていました」

この危機感の背景にあったのは、営業管理の課題だ。営業本部 営業推進部 営業推進グループ 主任の鈴木哲平氏は次のように説明する。

「従来は組織ごとに独自のExcelファイルなどで営業情報をまとめていましたので、統一の指標で現状を把握できない問題がありました。顧客情報の共有や営業プロセスが可視化できていない問題もあり、営業マネジメントの基盤を構築するため、SFA(営業支援システム)導入の検討を始めたのです」

Dynamics 365の導入で営業ロスも改善

カゴメ株式会社
営業本部 営業推進部 営業推進グループ 主任
鈴木哲平

複数のSFAを検討した結果、カゴメが選んだのはマイクロソフトのDynamics 365だった。選定のポイントは大きく2つだったと鈴木氏は明かす。

「まず、カスタマイズのしやすさが選定のポイントでした。自社特有の営業の業務フローに合わせやすく、必要な機能を取捨選択しながら活用していけるのが大きな魅力でした。そしてもう1つ、すでに社内で定着していたMicrosoft Teams(以下、Teams)やMicrosoft Outlook(以下、Outlook)と連携できる点も決め手となりました」

この選定ポイントからは、混乱をできるだけ防ぎつつ、根本的に営業スタイルを改革しようとする強い意思が見える。実際、導入の際には全国の支店や営業所を行脚し、「営業のやり方を根本的に変えるためにDynamics 365を導入する」という目的を説明。同時に、OutlookやTeamsの使い方も改めてレクチャーしていった。

「Outlookで予定表を共有するメリットを頭では理解していても、紙の手帳でスケジュール管理している人もいます。そういった部分を今一度見直し、情報を共有しながら働くことが生産性の向上にもつながるということを改めて伝えていきました。結果、営業部員が全体的に『変わらなければいけない』という意識を持てるようになりました」

そう振り返る山下氏は、営業情報をDynamics 365に蓄積することを徹底したことによって、ミーティングで語られる内容も変わってきたと話す。

「従来は、『今月は数字がいけそうです』などと漠然とした話がなされることも多かったのですが、営業情報が可視化されたことで『こういった案件を何%獲得できているため今月はこういう状況です』と定量的に語られるようになりました」

キャンペーンなどピンポイントの成果も見えるようになった。例えば、カゴメでは1月31日を『愛菜の日』として毎年さまざまなキャンペーンを打っているが、従来は定性的な総括に偏っていた。定量的には月間の売上実績に留まり、『愛菜の日』自体の取り組みがどの程度の成果につながっているか検証できない課題があったが、Dynamics 365の導入によってそれが解決した。

「キャンペーン企画の総括だけでなく、マーケティング投資を含めた見直しができますので、営業とマーケティングを一体化できるメリットを感じています。また、以前は担当営業に属人化していた情報が標準化されたことで、異動などに伴う引き継ぎが非常にスムーズになり、営業ロスを防げるようになったのも大きな導入成果だと感じています。お客様からも、『情報の連携がスムーズで助かった』と高く評価されました」

最新AI「Context IQ」でコラボレーションを加速

TeamsとDynamics 365を一緒に使うことで対面とリモートを掛け合わせた「ハイブリッド営業」を実践しているのも成果の1つだ。

「コロナ禍でオンライン商談が一般化しましたが、弊社では以前からハイブリッド営業を推進してきました。例えば、商品をお客様先ですぐ試食・試飲できるよう事前に送付し、商談はTeamsを活用してオンラインで行うといった形です。今後、この取り組みをさらに強化させていきたいと考えています」(鈴木氏)

見逃せないのは、カゴメのハイブリッド営業が対面営業の代替手段にとどまっていないことだ。担当営業が顧客先に訪問中に、フードプランナーがキッチンで調理しながらTeamsで商談に加わったり、イタリアの畑と繋ぎながらプレゼンテーションをしたりと、対面とリモートを組み合わせることで、ユニークな顧客体験を提供している。

実際、カゴメ社内においても、部門を超えた連携は増加傾向にあるという。変化する市場のニーズに応えるため、フードプランナーなど、社内の他部門と密に連携しながら営業活動を展開する際、Teamsが社内コラボレーションの情報ハブとして利用されている。

このデジタル時代の新しい働き方と、Teamsを中心としたコラボレーション増加の要請に応じて、マイクロソフトは新たなAI機能「Context IQ」を搭載した。これによって、コミュニケーションツールのOutlookやTeamsと業務管理ツールのDynamics 365が相互に連携しあって、必要な時にその場で業務のコラボレーションを可能にする。

日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部 プロダクト マーケティング マネージャーのサンタガタ麻美子氏は次のように説明する。

日本マイクロソフト
ビジネスアプリケーション事業本部 プロダクト マーケティング マネージャー
サンタガタ麻美子

「Dynamics 365内の業務データやダッシュボードをTeams上で共有できるだけでなく、各業務に即した関係者や過去の関連するチャット履歴をAIが抽出し、Dynamics 365の画面に自動で表示してくれます。営業はいちいちツールを切り替えることなく、一つの業務フローの中で、必要なコラボレーションが負担なく取れるようになります。関係者のプレゼンス状態(オンラインかオフラインか)も常にDynamics 365上に表示されていますので、どこにいても、すぐにコラボレーションを図ることができます」

デジタルシフトが加速し、爆発的にデータ量が増えている今、適切な情報や人を瞬時に探し出すのは決して容易ではない。また、複雑多様化するニーズに応えるためには、複数部門・複数職種との日常的なコラボレーションも欠かせなくなってきている。だからこそ、Context IQのような、コラボレーションを軸としたAI機能が必須となってくるといえよう。

「そういう時代だからこそ、人間らしい温かみも重要になってくると感じています。Dynamics 365のようなシステムで効率性を高めつつ、例えば試食サンプルを送付する際に手書きのメッセージを一筆添えるなど、デジタルとヒューマンタッチの両面を大切にしていきたいと思っています」

そう山下氏が語るように、どこでも誰でもシームレスな営業活動が可能になる効果は、単に生産性を高めるだけにとどまらない。業務上のムダを省き、その企業独自の競争力を磨くことにもつながれば、まさにカゴメが目指す「持続的に成長できる強い企業」へと近づけるのではないか。
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