コロナ下の完全失業率は最悪時の2020年10月でも3.1%とさほど悪化しなかった。しかし、その背景には職を失った人の多くが非正規雇用で、職探しを諦め、労働市場から退出したことや、雇用調整助成金によって休業や労働時間の削減という形で雇用が温存されたという事情がある。一方で、女性の正規雇用増加は人手不足が顕著な医療・介護の比重が大きかった。

緊急事態宣言のあおりを最も受けている宿泊・飲食業はどうか。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長によれば、もともと転職率が他産業に比べて高く、15~19年の平均転職率は9.9%だったという。20年は9.4%で、転職先としては卸売・小売業が全体の3割を占めた。他産業への転職で失業は一定程度抑えられている。
斎藤氏は「経済活動が元に戻らない中で、雇用調整助成金で雇用を維持し続けることは新規雇用、とくに新卒採用の抑制につながるおそれがある」と指摘する。
もともと日本の新卒一括採用では、好況期と不況期で就職に大きな差が出る、いわゆる就職氷河期問題が指摘されていた。新卒偏重から中途採用の門戸拡大へシフトすると同時に、企業内での雇用温存から他産業での雇用創出、転職支援へ政策を変える必要がある。
賃金抑制で沈む日本
日本の雇用慣行の問題は日本の賃金低迷にもつながる。連合によると、21年の春闘は平均賃金方式で定昇込みの賃上げ率が1.78%(5180円)で前年の1.90%(5506円)を下回った。しかし、法人企業統計を見ると、21年1~3月期の企業収益は売上高こそ前年同期比マイナス3.0%だが、営業利益は同17.8%の増益。法人企業景気予測調査では21年度売上高は前期比2.8%増、経常利益は同6.8%増を見込んでいる。
「日本では不況期に雇用を守って賃金を削るというパターンが繰り返され、それが事業構造の転換を遅らせ生産性を低下させた。さらに、それを理由に好況期にも賃上げが抑制され、内需の伸び悩みをもたらすという悪循環だ」と日本総合研究所の山田久副理事長は指摘する。実際に、ほかの先進国と比べて日本の賃金だけが00年の水準を下回っている。

終身雇用制度は労働人口が増加し製造業主体であった高度成長期の成功パターンで、1990年代から機能不全が見え始めたが、続いてしまった。企業は生産性が上がらないから賃金を上げられないと主張し、労働組合もその主張を受け入れてきた。それが、労働人口が減少に転じる中で内需の縮小に拍車をかける結果となった。
アベノミクス下の官製春闘では、政府が賃上げへの働きかけを行ったが、消費増税やインフレ率のプラス定着で実質賃金は下がり続けた。また、円安政策が採られ、国民の対外的な購買力は低下していった。なおかつ、円安の下でも企業は需要の旺盛な海外への直接投資を増やして、国内での設備投資やIT投資、人的投資を減らしたため、生産性はますます下がるという悪循環に陥っている。
コロナ禍やIT化の進展で自由な働き方や労働の流動化は広がるだろう。こうした変化を前提として、雇用制度と賃金体系の改革、労働分配率の是正を進め、就業を支援する積極的労働政策に転換していく必要がある。






















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