女性活躍推進の目的は、1つに多様な視点を取り入れ、中長期的に企業価値を上げることだといわれる。女性の存在は企業価値に結び付いているのか。
興味深い研究を1つ紹介しよう。1989年から2014年までの25年間に実施された、日本を含む世界35カ国の140の研究を対象にメタ分析したところ、企業の女性取締役の存在と企業業績の間には、プラスの関係があった。
株価、株価純資産倍率(PBR)、株価利回りなどに関しては、男女格差の小さい、つまりジェンダー平等が進んだ国ほど、女性取締役の存在が与える正の効果が高い。対してジェンダー平等が遅れた国では、女性取締役の存在は市場成果に負の影響があるか、あるいはまったく影響がなかった。この研究によると、ジェンダー平等が遅れている日本では、女性の取締役がいても価値を創造していない。
その原因を説明する変数はいくつかあるが、よく指摘されるのが、「女性には経営能力がない」というものだ。女性が、男性と同様の経営スキルを養えるキャリアを歩んでこなかったことが原因とされるが、社外取締役の増加とともに、男性でも弁護士、公認会計士、大学教員など経営経験のない取締役が増えている。どうもキャリアだけが原因ではなさそうだ。
取締役会が創造する価値には、①対内ロジスティクス(信頼性・ネットワーク)、②実効性(助言と支援)、③イノベーション、④資源配置(戦略コントロール)、⑤リスクマネジメント、⑥対外ロジスティクス(アウトプット・CSRコントロール)があるという。「女性に経営能力がない」という主張は、これらを行う際にスムーズな意思決定を重視するからだろう。
端的な例が「同じようなキャリアを積む者同士のあうんの呼吸で決議すべし」という考え。取締役会で多様な意見を期待するより、ボトムアップで策定された議案を原案どおり承認することを重視する意思決定スタイルは、起案者である社内の意欲を向上させ、実行時の抵抗が少なくなるメリットがある。多様な意見を勘案する土壌がないため、③のイノベーションにつながらないのは当然だ。
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