医療現場でAI(人工知能)の実装が浸透し始めている。100を超える製薬企業やIT企業が参加し、2016年に創薬AIを開発する産学連携プロジェクト「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」が発足。代表を務める京都大学大学院の奧野恭史教授に、AIの活用が創薬や医療に与えるインパクトについて聞いた。
──AIと医療の相性をどうみていますか?
新型コロナ禍による医療現場の逼迫は、日本の医療の将来の姿を見ているようだった。対応できる医療従事者と患者のバランスが崩れ、医療体制が逼迫した。これは、高齢化によって患者が増えて医療従事者の負担が増す未来の日本の医療の状態を表していたといえる。
高齢化と医療従事者の逼迫は徐々に進むので、適応するために医療の質が段々と切り下げられていき、気がついたらそうとう質が落ちていた、ということになりかねない。少人数でいかに質の高い医療ができるか、という点でAIの活用で補える余地は大きい。
AIによる診断が普及すれば、診断の確度が上がって不必要な治療が減り医療費の増大を抑えられる。医師の負担も減るだろう。
──LINCでは創薬AIの開発に力を入れてきました。状況は?
一般的に、医薬品の開発には10年以上の歳月と1000億円以上の費用がかかるといわれている。最も時間も費用もかかる臨床試験の効率化にAIを活用するのが理想だが、簡単ではない。一部の試験のデータしか公表されていないなど、製薬会社の臨床試験のデータのうち外部にオープンになっているものが限られているからだ。
一方で、分子や細胞を使った、臨床試験に入る以前のさまざまな実験データは世界中のものが公開されている。こういったデータで構築したAIの活用は、とくに創薬の初期段階に有効だ。
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