「上半期として過去最高の利益を達成しました」。野村ホールディングスの奥田健太郎CEOは12月1日の投資家向け説明会で誇らしげだった。
大規模な金融緩和やそれに伴う株価の上昇もあり、相場活況に沸く証券業界。だが、業界内部には“亀裂”を抱えている。
業界最大手の野村ホールディングスは、コロナ禍の対面営業自粛を乗り越え、国内営業部門の収益が第2四半期以降改善。債券売買の活況もあってホールセール部門の収益が大幅に伸びた。上期の最終利益は2101億円だった。
ネット証券各社も大きな収益を上げた。中でもネット系最大手のSBIホールディングスの最終利益は上半期で331億円。大手証券の大和証券グループ本社(同328億円)をしのぐ好業績だった。
相場活況の追い風を受ける証券界だが、目下最大の亀裂は、同一グループ内の銀行と証券で顧客の情報を共有することを認めるかどうか。いわゆるファイアウォール規制の緩和や撤廃をめぐって発生している。
ファイアウォール自体は、1993年の規制緩和で銀行グループが証券業に参入することが認められた際に導入された規制だ。今日では銀行グループによる利益相反や優越的地位の濫用を防ぐ目的で残存している。
同規制についての議論が急浮上してきた背景には「メガバンクの強い要望」(複数の証券会社幹部)がある。だが、野村証券など独立系の証券会社が資本市場を歪めるとして規制緩和に反対している。
本来、業界団体として意見集約を担うべき日本証券業協会は、メガバンク系証券と独立系証券の板挟みに遭い、各社の意見を集約しただけの資料を金融審議会に提出。同審議会のメンバーから「資料がまとまっていない」と叱られる始末で、機能不全に陥っている。
金融審では2021年1月以降も継続して議論が行われる。だが、系列証券を擁する銀行側は「優越的な地位がそもそもない」と主張。一方で証券側は、「利益相反や優越的地位の濫用という弊害抑制のための議論が必要だ」とする。両者の間の亀裂は深まるばかりだ。
東証売買停止で深まる溝
10月1日に発生した東京証券取引所の終日売買停止では、システム面での証券会社の課題が浮き彫りになった。
11月30日に会見した調査委員会は、売買停止の一義的な責任は東証や富士通にあると結論づけたものの、市場をよりよくするためには「証券会社など市場参加者の協力も不可欠」と注文をつけた。
東証の売買停止問題では、万一の事態により東証が停止してしまった場合、取引を再開するためのルールが整備されていなかった。
売買が停止した当日には東証側が証券会社に対してヒアリングを行った。東証側はシステムの再起動を打診したが、多くの証券会社が対応は難しいと回答したため、最終的には売買が終日停止することになった。
「証券会社に忖度(そんたく)するべきではなかった」(齋藤正勝・auカブコム証券社長)という意見もある一方で、一部のネット証券や対面型証券からは終日停止を容認する意見も数多く、意見が割れている。
取引の再開手順を定めるルール作りはこれから行われることになっている。が、システム投資が新たに必要になる可能性もあり、証券会社の規模や態勢によっては対応が難しい。年明け以降の証券各社の意見集約は難航が予想される。
背景には業態の著しい変化がある。証券会社といっても従来型の対面営業からネット専業、さらにはスマホ専業まで多様化が止まらない。亀裂は21年も簡単には埋まりそうもない。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら