「業績低迷を真摯に受け止め、緊張感のある経営を実行していきたい」。5大商社(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)の筆頭格、三菱商事の垣内威彦社長は11月5日の電話会議で、今2021年3月期の決算内容についてこう語った。
同社の上期(20年4〜9月期)純利益は前年同期比64%減の866億円と、苦しい結果となった。通期純利益は2000億円(前期比62%減)と、当初計画を据え置いている。大きな回復は当面望めなさそうだ。新型コロナウイルスの影響で自動車関連事業が足を引っ張り、原料炭など資源事業も市況低迷の逆風を受けた。
住友商事も厳しい。アフリカ・マダガスカルのニッケル生産プロジェクトがコロナ禍で操業を停止。それに伴う大型減損などで、今21年3月期は過去最大の1500億円もの最終赤字になる見通し。三井物産も資源価格低迷が響き、今21年3月期純利益は前期比54%減の1800億円を計画する。
一方、伊藤忠商事は今21年3月期上期(20年4〜9月期)の純利益が2525億円と、前年同期比12%減ながら、上半期としては過去3番目の好業績だった。エネルギー・化学品部門など幅広い事業が健闘した。通期も純利益4000億円(前期比20%減)を計画する。丸紅は食料や金属事業が好調なため、11月4日に今21年3月期の通期純利益計画を従来の1000億円から1500億円に引き上げた(前期は1974億円の赤字)。
こうして純利益が業界トップだった三菱商事は、今期については伊藤忠商事に抜かれて2位になる見通しだ。丸紅との純利益の差も、500億円とわずかだ。

バフェット氏が熱視線
しのぎを削る5大商社は今、世界中から注目を集めている。米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が総合商社に食指を動かしたからだ。同氏が率いるバークシャー・ハサウェイは8月30日、5大商社株式をそれぞれ5%超まで取得したことを発表した。
これを受け8月末の5大商社の株価は軒並み上昇。伊藤忠商事の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は、「世界の金融市場から出遅れていた日本株、とくに商社株に世界有数の投資家が関心を示したことは日本市場全体にとって明るいニュースだ」とコメントした。
バフェット氏が5大商社株式の取得に投じた金額は6000億円を超えるとみられる。今後も「最大9.9%まで株式を増やす可能性がある」としている。
これまで投資家の中には、総合商社を投資対象として避ける動きもあった。資源価格によって業績が大きく上下するリスクがあったためだ。しかし最近の総合商社は、資源事業の体質改善や収益源の多様化を図っている。
00年代、資源ブームに乗り利益を拡大してきた総合商社は、15年度に銅などの価格が急落し、利益が激減。このときの反省から、各社は操業コストの削減や低採算権益の売却など資源事業の改革を進めてきた。

同時に、非資源事業の強化にも努めてきた。三井物産はアジア最大級の民間病院グループに出資。伊藤忠商事はもともと、自動車ディーラーのヤナセや青果生産・販売のドールなど幅広い領域の子会社を持つ。8月には、非上場化を目的に傘下のファミリーマートの株式公開買い付けを成立させた。
こういった施策の効果発現には足元では差が出ている。ただ、それぞれが足腰を鍛えていることから、アフターコロナの経済回復期には全体的に勢いを取り戻しそうだ。各社はさらなる課題対応や得意領域の強化を急ぐ。どのような布石を打とうとしているのか、各社の戦略を追った。






















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