[Profile] Nicholas A. Christakis 1962年、ギリシャ人の両親の下、米国に生まれる。米イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長。医師。人のつながりが個人と社会に及ぼす影響を解明したネットワーク科学の先駆者として知られる。米国を代表するビッグシンカーの一人。
遺伝子という単語は、個人の傑出した才能について語るときに使われることが多い。社会や個人を語る際にこの単語を使用することはセンシティブな問題をはらむが、「○○の遺伝子」という言い方には、努力では容易に到達できない才能に対する憧憬の気持ちが込められているのがつねだ。
しかし、遺伝子を単に才能や特徴など個人レベルの違いの源泉とするのは、一面的な捉え方でしかないと本書は教えてくれる。本書によると、私たちの遺伝子には集団や社会を形成するのに必須となる設計図が刻まれている。そして、どんな集団も、その設計図に則(のっと)って共通の構造を形作っているというのだ。
この設計図、つまり遺伝子が形作る青写真のことを、本書では社会性一式(ソーシャルスイート)と呼んでいる。その構成要素には、アイデンティティ/愛情/交友/社会的ネットワーク/協力/内集団バイアス/学習などが含まれているそうだ。
なぜ、今これが重要なのか。それは、世界があまりにも分断され、対立が激化しているようにしか見えないからだ。経済格差、人種問題、国家間対立。対立する集団同士の違いに焦点を合わせると絶望的な状況にも思える。だが一方で、それぞれの集団が共有している社会性一式は、私たちを分断するものよりはるかに深遠で価値がある。
これを示すエビデンスとして、本書は、さまざまな集団の事例を紹介していく。難破事故の生存者コミュニティから、ある意図の下に作られたユートピア的コミュニティ、南極基地の科学者コミュニティまで。一見、何の関係もないように思えるこれらバラバラの集団の中に、普遍的な共通性が確認される。
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