植本一子(写真家)、円城 塔(小説家)、王谷 晶(小説家)、大和田俊之(音楽評論家)、香山 哲(漫画家)、木下美絵(出版エージェント)、楠本まき(漫画家)、栗原裕一郎(評論家)、田中誠一(映画館経営)、谷崎由依(小説家)、辻本 力(ライター、編集者)、中岡祐介(出版社・書店経営)、ニコ・ニコルソン(漫画家)、西村 彩(カフェ経営)、速水健朗(ライター)、福永 信(小説家)、マヒトゥ・ザ・ピーポー(ミュージシャン)
新型コロナウイルスは私たちに人類史上初めての体験をもたらした。世界中の人々が同じ危機に遭遇するという体験である。
感染したかどうかにかかわらず、今回のパンデミックが引き起こした事態からは誰も逃れられなかった。確実にいえるのは、誰にとってもこれが初めての体験だったということだ。何が正しいのかわからないまま、私たちは右往左往しなければならなかった。だからこそ、他者がどうコロナ禍と向き合ったかを知ることには大きな意義がある。
本書は日本および世界各地で暮らす17人がコロナ禍に見舞われた日々を綴(つづ)った日記のアンソロジーである。登場するのは小説家、漫画家、ミュージシャン、評論家、店舗経営者ら。コロナ関連の日記のアンソロジーは他にも出版されているが、本書の魅力は一人ひとりの日記が長いこと。ある程度の長さがあるからこそ、書いた人の感情の揺れや思考の軌跡が見えてくる。
大学で教鞭をとりながら小説や翻訳も手がける谷崎由依氏は、生後2カ月の赤ちゃんを抱えてコロナ禍を経験した。初めての育児と感染への不安が重なる中で次第に神経をすり減らしていく様子が綴られた日記は、読んでいて胸が痛くなる。同じ思いを抱えた母親は彼女だけではないだろう。
だからこそ政府にはしっかりしてほしいのだが、残念ながら本書に記されているのは失政の記録でもある。ミュージシャン・星野源氏の人気に便乗した安倍首相(当時)のコラボ動画には、多くの執筆者が驚きとともに言及している。
韓国に住み日韓で出版される書籍の版権仲介の仕事をしている木下美絵氏は、「国として一刻の猶予も許されない大事な時期に、こんなのほほん動画を企画して全世界に公開してしまう無神経さ。想像力のなさ」に憤りながら「韓国だったら光化門広場でデモが起こるレベル」という韓国人の夫の感想も記している。
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