──新型コロナウイルスが猛威を振るっています。
事業承継セミナーのダイレクトメールを全国の中小企業に送っているが、反応率はコロナ前の8倍に上っている。将来が不透明な中で、事業承継に関心が高まり、検討を始めている証左だろう。
──日本M&Aセンターの強みはどういうところでしょうか。
創業から29年やってきて、数万社に上る買い手企業を把握していることだ。売り手1社に対し、30〜50社の買い手を紹介することができ、マッチング(仲介)能力は、世界一だと自負している。
今のままでは、事業承継できず倒産してしまう企業が増えてしまう。そうなれば地域経済にとっても大打撃だ。われわれはそうした企業を救うことができる。
──売り手と買い手の両方と契約を結ぶ「仲介」は、M&Aの常識からかけ離れているとの指摘もあります。
創業者である私も分林(保弘会長)も金融業界出身ではないからではないか。そもそも仲介を始めたのは、前の会社にいたときに会計事務所と縁があり、地方の中小企業が事業承継できず困っていると聞いたからだ。証券会社や銀行から見捨てられている、と。ならば、われわれが相手を見つけてきてマッチングさせようというところからスタートしたのだ。
とはいえ、われわれも利益相反に関しては注意を払っており、社内では売り手と買い手をはっきり分けている。当初は私一人で仲介をやっていたが、調整できなかったから担当者を分けた。利益相反との批判は間違っている。
FAのほうが恣意的
──とはいえ、中小企業はM&Aの素人。報酬を引き上げるため、価格を恣意的に決めているのではないかとの見方もあります。
価格については、過去の実績や企業の業績を入力すれば自動的に算定するシステムをつくり公平性を担保している。最近では、AI(人工知能)も導入して適正な価格をはじき出している。私に言わせれば、片方の要求だけを主張するFA(ファイナンシャルアドバイザー)のほうがよほど恣意的だ。
──2006年に上場する際、問題になりませんでしたか。
確かに上場前、証券会社から「仲介業は上場できない」と言われた。そのため役所と何度も議論を重ね、大手弁護士事務所から意見書をもらって体制を整えた。売り手と買い手の担当者を分けたのもそのときだ。課題をすべてクリアしたから上場できているのだ。
──候補のリストを見せる前に着手金を取ることについても疑問の声が上がっています。
中小企業のM&Aでは社長の考えが途中で変わり、破談になってしまうことがよくある。中小企業の社長は印鑑を押し、お金を払うことで意思が固まる。弊社の利益のためではなく、中小企業のために着手金をいただいているのだ。
仲介は中小企業のためのビジネスモデルだ。事業承継が待ったなしの状況で、われわれが果たす役割は大きいと考えている。
(聞き手 田島靖久、野中大樹)





















