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揺れる資本主義、労働者権利回復の背景 感情を抜きにした正論は支持を得られない

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日本におけるコンビニの24時間営業問題と、米国のウーバー・ドライバー問題。地理的にも業界的にも異なる2つの事象は地下茎でつながっている。

コンビニの24時間営業問題は、1人のフランチャイズ店オーナーが声を上げたことから、あっという間に社会問題化した。本部とフランチャイズ店オーナーの衝突は過去にもあったが、従来は契約など法的な正しさが正義だった。

しかし、今回は環境が違った。人口減少が鮮明な日本では、従来とは比較にならないほど「働ける人」の価値が上がっている。外国人の勤務が当然になり、つねに疲れた顔でレジに立つオーナーもいる。オーナーがさまざまな苦労を背負っていることを、一般市民も皮膚感覚で理解しているのだ。一般市民がオーナーに対し感情面で理解を示した瞬間、契約を背景とする法的正義は、市民の敵に転化した。

ウーバーのドライバー問題も同様の構図だ。400万人前後いる同社のドライバーは社員ではなく、個人事業主。労働組合もない。5月にドライバーがウーバーから得られる報酬の水準ヘの不満を訴え、デモを行った。それを受けて、9月にはカリフォルニア州議会がインターネット経由で単発の仕事を請け負うウーバーなどの労働者を「従業員」と認めることになった。

感情が法や産業に影響

かつてヨーロッパの農奴の権利回復や市民革命への道筋をつくったのはペストによる人口減少だった。現代の少子高齢化は、程度の差こそあれほとんどの先進国で発現し、個人や個人事業主の交渉力増強の土台となる。契約や所有権といった法的関係を積み上げて存在している現在の資本主義は、ボディーブローを受け続けるだろう。

携帯情報端末が普及したことによる情報発信能力のフラット化も大きい。個人、個人事業主、社会的弱者、社会的マイノリティー。彼らも時と場所を選ばず情報発信できるようになった。映像や写真で切り取られた彼らの情報発信は、時に扇情的で情緒的だ。しかし、それらこそが、人々の心を揺さぶり、法体系や国・産業のあり方に影響を与える時代になったのだ。

為政者や経営者は、法律や契約に照らして正しいという判断だけでは、物事を動かすことができなくなる。情報を統制し、上からの情報発信だけに限定もできない。

われわれが共感し合う社会的な動物である限り、感情を抜きにした正論は支持を得られない。法律や契約が、人間の感情から疎外された状態から、人間の手に戻りつつあるのかもしれない。

(みかん)

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