会員限定

年金炎上! 党派を超えた国民的議論を 超党派の協議へつなげるべき

✎ 1〜 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 24 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

久しぶりの「年金炎上」である。金融庁の報告書に記載された「公的年金だけでは老後2000万円不足」とする内容をめぐって、テレビやネットで年金バッシングが起こった。もはや、数年に一度起きる国民的行事の感もある。

年金問題を10年以上取材してきた身としては、今回の騒動は「半歩前進」と思える部分もある。テレビのワイドショーでは、あるタレントが「100年安心なのは年金制度であって、私の年金は安心ではないのか」と怒っていた。年金への不信感は強いが、「制度自体は安心」と思ってもらえれば、まずは半歩前進なのだ。

少子高齢化の加速により2000年前後に年金不安は本格化し、当時の政府たたきは今の比ではなかった。保険料などの収入と年金給付の支出のバランスが崩れれば、制度は当然、存亡の機に立つ。収支を均衡させようとしても、保険料負担の引き上げは経済界が大反対、年金給付のカットは国民が許さないという状況だった。

年金制度の根幹は、将来の保険料や給付はこうしますという「国の約束」にすぎない。それを守ることができず、当時は国民全員が乗る船そのもの(年金制度)が沈没しかねない状況だった。

小泉純一郎政権時代の04年、年金改革が断行された。三方一両損を地で行く形で、経済界は厚生年金保険料の18.3%までの引き上げをのみ、国は基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げた。ただそれぞれの負担はこれ以上増やさず、今後人口バランスが悪化しても、この総収入内で給付が調整されることを国民はのむ形になった。新しい国の約束は将来変化への対応力があり、「制度自体は安心」に至った。

問題はタレント発言の後半部分の「私の年金は安心か」だ。人口問題のツケは給付だけに回ってくるため、負担を固定しつつ給付をいかに底上げするかは政府に残された課題であり、まさにこの10年余にわたり取り組んできたことだ。

最大の切り札は繰り下げ受給による給付増額(詳細は関連記事へ→)で、年金の受給開始年齢を標準の65歳から67~68歳にするだけで今後の給付の調整分を相殺できることがわかっている。また、非正規雇用者への厚生年金適用拡大、マクロ経済スライド(人口要因に合わせた給付調整機構)のフル発動化など、現在の年金改革案はすべて将来世代の給付底上げに直結するものだ。

海外では超党派で議論

今回の年金炎上では、麻生太郎金融担当相の不用意な発言が火に油を注いだ形になったが、安倍晋三政権が本来、国民に説明すべきは、こうした年金の構造と「あなたの年金も安心」にするため取り組んでいる施策だ。

野党の姿勢も問われる。04年の年金改革以降も「(新年金制度は)間違いなく破綻して、5年以内にまた変えなければならない」(民主党の枝野幸男幹事長〈当時〉、04年4月)と世論をあおり続けたが、今回も「年金の100年安心はウソ、国民は怒っている」(立憲民主党の蓮舫副代表)と、実際の中身より世論喚起に躍起だ。

年金財政はほとんどが人口バランスで決まるものであり、誰が制度を設計してもウルトラCはない。そのため海外では、年金問題を政争の具としないという政党間の暗黙の了解があり、超党派で政策を議論するのが大半だ。

一部で安倍政権による公表先送りも噂される年金の財政検証(今夏発表予定)だが、ここには給付を底上げする改革案が複数盛り込まれており、国民的議論を呼ぶチャンスになる。各党は、これを機に超党派の協議へつなげるべきだ。

関連記事
トピックボードAD