つい最近まで、世界は丸ごと「トランプ劇場」だった。が、にわかに大統領のトップスターの座を脅かす新星が現れた。その名を「社会主義」という。
そんなばかな。1989年、ベルリンの壁が崩壊した時点で社会主義は死語になったはずではなかったか。ところが、そのベルリンで今、住宅最大手企業から20万軒の住宅を“没収”し、“社会化”しようという運動が起こっている。住民投票が実施されれば、ベルリン市民の55%が賛成票を投じるだろう、と現地紙が伝えている。
トランプ大統領のおひざ元、米国でも社会主義はにぎにぎしくよみがえった。「民主社会主義者」を標榜し、前回の大統領選挙でヒラリーさんと最後まで民主党候補を争ったサンダース上院議員が早々に再出馬を表明。77歳の社会主義者の一番弟子は、昨年、史上最年少(29歳)で女性下院議員になったAOCことアレキサンドリア・オカシオ=コルテスさんだ。
AOCが発表した政策要綱「GND」(グリーン・ニュー・ディール)。10年以内に再生エネルギーに完全転換し、国民総保険加入を実現し、富裕層の所得税率を70%に引き上げる。大統領の政策を180度ひっくり返し、民主党の大物議員たちから喝采を浴びた。
行き着く先は雪隠詰め
「地球温暖化はフェイク」と言い、プアホワイトの味方を装いつつ格差拡大に目をつぶる。大統領のポピュリズムはまやかしだ。「左」から修正運動が起こるのは、極東の「一強」政治より、よほど健全だろう。ただし問題がある。
富裕層の所得税率を70%にしても、GNDの所要資金の0.2%しか賄えない。所得に加え富裕層の資産に大課税し、企業の経営権にも介入することになる。実際、民主党の一部から「取締役の4割は労働者側が選ぶべし」という提案が出されている。こうなると、「階級闘争」突入である。
そうはならない、という「理論」が用意されている。ニューヨーク州立大学のケルトン教授など「左」の経済学者が唱える「MMT」(現代貨幣理論)だ。MMTによれば、財政赤字で国が破綻することはない。バブル崩壊後の日本を見よ。だから、増税はせず、紙幣を印刷し、ばんばん財政を拡大させる。インフレになったとき初めて引き締めればいい──。
確かに、30年間超放漫財政を続けた日本はインフレにならなかった。が、結果、最低賃金は韓国・台湾以下、国民の幸福度は世界58位。この先、景気が悪化しても、政策余地はゼロ。雪隠詰(せっちんづ)めである。この日本の現在が米国の新・社会主義の未来なのだろうか。
そういえば、昔々、この国は「世界で最も社会主義的な国」といわれていたっけ。
(マイダイ)



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら