欧州を覆う3つの「暗雲」が世界経済に深刻な影響を及ぼしつつある。それらは相互に作用しながら問題を複雑化させ、視界を一層悪くしている。
1つ目の暗雲が、英国の欧州連合(EU)離脱問題だ。離脱期限が延期され、急転直下で離脱協定が承認されたとしても、不透明感は消えない。離脱後のEUとの通商関係を決める交渉はこれからで、離脱協定以上に難航が必至だ。移民などの移動の自由を制限しながらEU単一市場との自由貿易を維持しようとする英国の「いいとこ取り」を、EUは許さない。宗派対立が絡むアイルランドとの国境問題の解決策も依然見えない。
世界の企業は対応に苦慮している。英国はこれまで、EU単一市場への「ゲートウェー(玄関口)」として外国企業を積極的に誘致してきた。英国で製造される自動車の5割強がEUに輸出され、英国で行われる金融業務の約4分の1がEUの顧客に関連している。だがEU離脱で英国進出メリットは失われるおそれがあり、各企業は投資の延期や在英拠点の移転・縮小など戦略見直しを迫られている。
国際金融センター・ロンドンからほかのEU諸国へ資産と人員が分散すれば、金融機関のコストは増え、効率性は低下する。英国が地盤沈下するだけの問題ではない。
2つ目が景気失速だ。とくに欧州最大のドイツ経済に対する懸念が強まってきた。3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は44.7と、好不況の境目である50を大きく下回り、2012年以来の低水準を記録。世界的な株価急落の一因となった。実質国内総生産(GDP)成長率は18年第3四半期に前期比マイナス0.2%、第4四半期も同ゼロ%と景気後退の瀬戸際にある。10年物国債利回りは再びマイナス圏に沈んだ。
ドイツは自動車など製造業と輸出への依存度が高く、とくに中国の景気減速は大きな痛手だ。サプライチェーンで関係の深い英国のEU離脱も企業心理を冷やしている。イタリアは昨年後半から景気後退に入っており、財政と銀行に対する不安もくすぶる。英国や「黄色いベスト運動」で混乱が続くフランスでも景気減速感が強まる。
企業の世界戦略が転機に
そして3つ目の暗雲が、ポピュリズム政党の勢力拡大だ。昨年6月、イタリアで反移民を掲げる極右「同盟」と、ばらまき財政を志向する左派「五つ星運動」が反EUで一致し、連立政権を発足させたことは世界に衝撃を与えた。だが今や、欧州でポピュリズム政党が表舞台にいない国は皆無に等しい。
当面の焦点が5月下旬の欧州議会選挙だ。伊仏独などの反EU、反移民のポピュリズム政党が議席を増やす可能性が高い。反面、与党の中道右派・左派が過半数を失うとみられ、英国の離脱で揺らぐEUの求心力が輪をかけて弱まるおそれがある。EU結束の要であるべきマクロン仏大統領とメルケル独首相も、国内問題で指導力を十分に発揮できない状況だ。
こうした欧州の混迷に日本も無縁ではいられない。日本の輸出総額に占める英国向けは2%弱、EU向けは11%。一方、日本からの直接投資残高では英国は全体の7%と、米国に次ぎ中国並みに多い。EU全体では26%を占める。米トランプ政権の通商政策の影響と併せ、今年は日本企業のグローバル戦略の転換点ともなりうる。
「これからの世界は何が起こるかわからない。欧州の混迷も、どんな状況にも対応できる強靭さを鍛える機会と考えるしかない」。海外戦略を担う重電大手幹部は語る。国際金融市場のショックを含め、危機再発への備えが重要だ。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら