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米国を救出できない監視機関 民間部門で膨らむ世界債務

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IMF(国際通貨基金)は5月末、世界の債務に関する新たなデータベースを公開した。政府と民間の両方の債務を初めて一つの統計にまとめたもので、1950年までさかのぼって国別にデータを確認することができる。

この統計によると、世界の債務総額は世界GDP(国内総生産)の225%に達し、過去最高になった。2009年の213%をも上回る水準だ。IMFが指摘するように、世界の債務はリーマンショックの後も、まったく削減されてこなかったことになる。

IMFは、晴れている間に雨漏りのする屋根を直すよう各国に求めている。経済の調子がいい今のうちに財政黒字を積み上げるか、最低でも赤字を減らして今後の景気悪化に備えよ、ということだ。減税を推し進める米トランプ政権やイタリアのポピュリスト政権がIMFと衝突するのは間違いない。イタリアが最低所得保障をはじめとする壮大なバラマキを行うのであれば、IMFとの難しい交渉を迫られよう。ギリシャの債務危機を担当したIMF職員がローマ行きを命じられる日も近いだろう。

だが、世界の債務は民間部門でも大きく膨らんでいる。各国の金融当局が気をもんでいるのは、この点だ。民間債務拡大に端を発したリーマンショック以降、銀行には以前よりはるかに厳しい自己資本規制がかけられるようになった。各国の金融当局はまた、金融システム全体が抱えるリスクを分析し対策を講じるマクロプルーデンス政策を強化してきてもいる。銀行が準備しなければならない自己資本のレベルを引き上げることで信用供給にブレーキをかけ、民間債務が危険水域にまで拡大するのを防ごうとしているのである。

このようなマクロプルーデンス政策が機能しているかどうかを監視するために新たな金融監督機関も設けられた。欧州連合(EU)の欧州システミックリスク理事会(ESRB)、英国の金融行政委員会(FPC)、米国の金融安定監督評議会(FSOC)である。

だが、それぞれが有する権限には大きな違いがある。最も強力なのが英FPCで、リスクの高まりに応じて銀行に自己資本の積み増しを要求できる。少し前には、個人向け無担保融資の拡大スピードが速すぎると判断し、銀行に資本積み増しを求めた。このように突然の環境変化に備えて行われる自己資本の積み増しは「カウンターシクリカル資本バッファ(CCyB)」と呼ばれる。

EUのESRBは、FPCとは違って単独では行動できないが、欧州各国のCCyB適用状況をつぶさにモニターしている。5月時点の適用国はスウェーデン、ノルウェー、アイスランド、チェコ、スロバキアで、6月にはフランスでもCCyBが発動された。ユーロ圏で銀行を監督しているのは欧州中央銀行(ECB)だが、ESRB理事長のドラギ氏はECB総裁でもあるので、いざとなればECBの職権で対処可能だ。

これに比べると、米FSOCの立場はいかにも弱い。まず、CCyBを発動する権限がない。また、FSOCは国際的なシステミックリスクにつながる巨大保険会社への監視を強化しようと試みたが、これも司法当局の介入で頓挫した。米国連邦準備制度理事会(FRB)からは、このままだとマクロプルーデンス政策を機能させられなくなるとの見方も出ている。しかも、トランプ政権による金融規制緩和が現在進行中なのだ。

マクロプルーデンス政策は、スロバキアでは期待どおりに機能しているかもしれない。だが、それを最も必要とするはずの世界最大の金融市場で世界金融危機の震源地だった国、すなわち米国を救い出すことはできそうもない。

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