史上初の米朝首脳会談が、来る6月12日に開催の予定である。しかしなお予断を許さない。開催できるかどうかもわからないし、たとえできたとしても、その成果は未知数である。……と書いていたところで、中止のニュースが舞い込んできた。案の定といったところである。
そんななか、日経ビジネスオンラインでコラム「早読み 深読み 朝鮮半島」を連載する鈴置高史氏の5月15日付記事(http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/051400177/)に寓目した。琴線に触れたとでもいうべきだろうか。
半島研究プロパーからすれば、筆者はまったくの門外漢にひとしいので、旧知の氏からはかねて多大な示教をいただいている。くだんの記事は、目前の北朝鮮問題のうち、南北首脳会談を終え、米朝首脳会談に向けたシナリオを解説、論評する体裁の文章だった。しかしその実、圧巻は韓国の奇妙な動きを鋭く指摘したくだりにある。
非核化と核の傘
北朝鮮の非核化をめぐって米朝が鋭く対立しているのは、周知の事実なのかもしれない。ところがそうした争点は、去る南北首脳会談で、韓国がむしろ先んじて「朝鮮半島全体の非核化」をもちかけたことにより、いよいよ顕在化した。
半島全体の非核化とは、北朝鮮の非核化だけでなく、韓国に対するアメリカの核の傘をもとりはらう、つまり米韓同盟をも事実上、破棄しようとするにひとしい。こうして、先にアメリカに対する拒絶を示したにもかかわらず、当の韓国はなお、アメリカの軍事支援や「核の傘」を期待する姿勢を改めない、というのである。
こうした氏の指摘に讃歎しつつ、端なくも数百年前の歴史を思い出した。朝鮮王朝の時代である。
朝鮮王朝は中華王朝の属国だった。もちろん儀礼的に君臣の礼をとるという意味で、全く主権がないわけではない。それでも上下関係はあるし、一朝有事の際には、軍事的な保護も辞さない間柄である。たとえば、日本人もよく知る豊臣秀吉の朝鮮出兵では、亡国に瀕した朝鮮を救ったのが中国明朝の援軍にほかならない。これを朝鮮王朝では、再生させてくれた恩義・「再造の恩」といって、感謝の念が絶えなかった。
矛盾を矛盾とみない
その明朝は17世紀半ばに滅び、清朝が代わって中国に君臨する。朝鮮王朝はこの清朝の属国でもあった。ところが清朝はもともと、朝鮮も野蛮視していた満洲人の政権であり、かつて敵対し武力で屈服せしめられた過去がある。だから侮蔑・敵視もやまなかった。朝鮮王朝はかくて、清朝に臣礼をとって保護を頼りながら、亡き明朝を追慕して対清復仇を祈念する、という矛盾に満ちた態度・行動をつづけたのである。
この種の矛盾を矛盾とみない意識構造・行動様式は、われわれにはわかりづらい。しかし半島の現南北政権はその点、期せずして共通する。まさに保護を頼りながら反撥するという中国に対する北朝鮮、アメリカに対する韓国のそれであって、朝鮮王朝以来のDNAかもしれない。
小欄第72回で、南北首脳会談を「歴史的」だと表現した報道を批判した。しかし南北そろって、朝鮮王朝の遺制・意識・習癖を受け継いでいるのだとしたら、それはやはり「歴史的」ではあろう。前言は撤回しなくてはならぬかもしれない。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら