5月3日に105円台半ばまで下落したドル円は、その後、一転して上昇基調で推移。同月19日未明に4月26~27日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表されると、ドル円は110円台を回復した。しかし4月28日の高値(111円台後半)を上抜け一段高となるには、6月15~16日開催のFOMCでの利上げ実施が必要。それまでは108~111円のレンジで方向感に欠ける動きが続きそうだ。
4月のFOMC議事要旨でドル買いの動きが強まったのは、メンバーの多くが6月会合での利上げが適切と考えていることが明らかになったためだ。議事要旨が発表されるまで、市場関係者のほとんどが6月の利上げは見送られると見ていただけにサプライズとなり、「年内は利上げがない」といった極端なハト派期待は大きく後退した。
ただメンバーの多くは利上げの条件として、今後発表される米経済指標で(1)第2四半期(4~6月)の成長率が上向いていること、(2)雇用情勢の改善が続いていること、(3)インフレ率が2%の目標に向かって上昇していることの3点を指摘。6月の利上げが確実に実施されるかは、米経済指標の結果次第となる。
利上げ疑問視の声も
6月利上げの可能性を的確に見通すのは非常に難しい。アトランタ連邦準備銀行の経済モデル「GDPナウ」では、5月17日時点の第2四半期の米成長率見通しは2.5%増の見込み。だが連銀によるGDP予想「ナウキャスト」では、5月20日時点で1.7%増と2%割れ。6月の利上げが確実視されるほどの強い伸びとはいいがたい。
雇用情勢の先行き不透明感も強まっている。議事要旨後に発表された4月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が16.0万人増と市場予想を下回り、7カ月ぶりの低い伸び(図1)に。労働参加率は62.8%と前月から低下したものの、失業率は5.0%と前月から変わらず。平均時給の伸びこそ前月から加速したものの、総じて弱い結果となった。
拡大する
インフレ率は伸び悩みの様相を呈している。4月のコア物価は生産者物価が前年比+0.9%、消費者物価が同+2.1%と前月から小幅鈍化。この程度では、米国連邦準備制度理事会(FRB)が物価指標として重視するPCEコアデフレータも同+1.6%程度にとどまる可能性が高い。
利上げ実施の3条件が明確にクリアされておらず、6月会合での利上げを疑問視する声も根強い。フェデラルファンド(FF)金利先物から算出する6月利上げ確率は、議事要旨発表を受けて6%から30%に上昇したが、その後は同水準でもみ合っている。
議事要旨発表後に強まったドル買いの動きは一服感を強めている。一部報道によると、日米財務相会合で麻生太郎財務相は、最近のドル円相場は秩序立った動きとはいえないと指摘、一方ルー米財務長官は、無秩序とはいえない状況と発言している。4月の日本・通関統計では、貿易黒字が8235億円と、2010年3月以来の高水準を記録。ともに円売りの動きを抑制し、ドル円の重しとなっている。
とはいえ中国経済の悪化に歯止めがかかり、原油価格が2月の安値から50%以上も上昇したことを踏まえると、ドル円相場に対する日米の見解の違いや日本の貿易黒字の高さだけで、ドル円が再び105円台をつけるほど大きく下落するとも考えにくい。108円に近づけば6月の利上げ再開が意識され、ドルを買い戻す動きも出やすくなる。
日本の対外収支の改善などを根拠に、ドル円が再び下落基調に転ずるとの指摘もあるが、FOMCメンバーが利上げを意識している以上、ドル円の下値が堅いのは事実だ。






















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