市場のボラティリティ(変動性)が高い状況は、向こう半年から1年程度は続く可能性がある。金融市場や政策担当者の間では多くの誤解が見受けられるからだ。「誤解で絡まったひも」が解けるまでは、投資家はポートフォリオの分散を進めるのが得策といえよう。
誤解の第一は、市場の混乱が「中国発」といわれること。「中国は原因ではなく、結果の一部」と考えられる。
経緯を振り返ってみる。
まず、FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げ観測と、2014年10月末の日本銀行による電撃緩和第2弾、ECB(欧州中央銀行)による量的緩和開始の観測(その後、実施)がドル高を呼んだ。「米国は引き締め、日独(欧)は緩和」の組み合わせは1994年以来、約21年ぶりである。
人民元はドルに緩やかにペッグされており、ドル高ならば人民元高である。中国の実体経済は、対ドルでの人民元高、賃金上昇、原材料の積み上がりや過剰な生産能力によってもともと苦しかったが、14年末以降のドル高進行が輸出や生産にとどめを刺した。この歪みが表面化したのが、今年8月の人民元切り下げだ。
「中国こそ問題」との誤解は最近でも変わっていない。ECBのドラギ総裁は9月3日の理事会後に追加緩和の可能性を示唆し、理由として「新興国の減速」に都合10度も言及した。会見を受け、市場ではユーロ安が進み株価は上昇、低金利のユーロを使ったキャリー取引にいそしむ金融市場は好感した。
しかしユーロ安は裏を返せばドル高であり、人民元高である。問題の根源はドル高であり、ドラギ総裁は自ら、新興国(中国)をリスク要因に掲げながら、そのさらなる減速を呼び込んだに等しい。
9月4~5日のG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議でも、中国が議題の中心となり、声明は「通貨の競争的な切り下げを回避する」とされたが、中国は主要国の切り下げ競争によって「切り下げに追い込まれた」側である。当局者の誤解は政策の錯誤を招き、市場をさらに混乱させる原因となる。
米国に波及するリスク
第二にドル高は「金融市場の問題」と思われているが、「実体経済の問題」であろう。ドル高は中国のみならず、商品価格安や通貨安を通して新興国や資源国の経済活動を停滞させている。たとえば、ブラジルや南アフリカ、豪州、カナダのGDP(国内総生産)が低迷している。さらに、本丸の米国の実体経済も下押し圧力を受ける。こう述べると、米国は雇用や住宅、設備投資の先行指標などが堅調だとの反論を受ける。確かにそうだが、米国の企業業績の低迷は気掛かりだ。
そして第三に、「米国の企業業績は換算の問題」ではなく、「売り上げの問題」に発展しつつある。よく指摘されるのは、ドル換算による海外利益の目減り、原油価格下落による在庫や権益の評価損だ。だが、グローバル企業の主戦場である中国や新興国、資源国の実体経済が下押し圧力を受ければ、米国企業の売り上げの問題となる。これは重要だ。企業は売り上げの見通しを基に雇用を決定するためだ。
米国の雇用拡大のペースは現在1四半期当たり45万人前後であり、世界金融危機前と変わらない。一方で、就業者1人当たりの実質GDPは世界金融危機前の雇用拡大では年率プラス1.5%であったが、今回の雇用拡大局面ではプラス0.8%である。GDPは付加価値の合計で、雇用者と資本家への報酬・補償、税金から成る。雇用というインプットは行ったが、売り上げ=景気は鈍い状態が続く。今後、企業は生産性を回復させるため、新規の雇用を控えるリスクがある。























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