実力がモノを言う時代に有効な「商談」の勝ち筋 活路は情報の集約、ストーリー化にある
個人が営業プロセスを考える時代に
個の時代が訪れると、各業務を個人の裁量に任せる企業が多くなるだろう。たとえば営業の場合、これまでのように企業が正社員を囲って管理する「中央集権的な組織」であれば、企業の持つ営業ノウハウはマニュアル化され、また営業に使う情報も企業が用意するなど、決められた営業プロセスを全員が一律に再現する世界観が見られた。
しかし、フリーランスの増加やリモートワークによって「分散的な組織」になれば、中央集権の管理とは異なり、個人の裁量で営業プロセスを組み立てる傾向が強くなるはず。個々のやり方に細分化していくと考えられる。
「企業がトップダウンで営業パーソンを管理し、マニュアル化されたプロセスを一律で行う形は減っていくでしょう。今後は、一人ひとりが自身で工夫しながら営業クオリティを高めることが重要になってきます」
そう語るのは、企業やビジネスパーソンの業務支援システム・アプリを開発してきたアステリアの代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎氏だ。
「規律・統制・階層に支えられてきた20世紀を終え、21世紀は、自律・分散・協調の社会になると考えています。今までよりもそれぞれの個が自律し、個人と個人、企業と個人が"ゆるいつながり"を持って活動するケースが増えるでしょう」
一律管理から個人の自律管理に移行するからこそ、それぞれが行うスキルアップや心がけが大きな実力差を生む可能性があるといえる。
一方で、営業パーソンが相対する顧客の事情も個別に細分化されると平野氏は考える。「いまは顧客も大量の情報を持っており、それぞれの抱える課題やニーズは多様になっています」。つまり、営業側もそれを受ける顧客側も、これからは「個」に細分化されるというのだ。
商談の準備時間がないという悩み。商談のストーリー化
このような状況の中で、営業パーソンはどうすればよいのか。平野氏は「商談においては、個々の顧客に合わせた情報を集約し、ストーリー化して提示することが求められるでしょう」と説明する。
こういった考えから、アステリアでは営業パーソン向けの商談支援アプリ「Handbook X(ハンドブック エックス)」をローンチした。
「『Handbook X』はフリーランスや個人の営業パーソンもご活用いただけます。私たちが営業パーソンの悩みを調査すると、商談に向けた準備時間がない、準備の労力が増しているという声が多数聞かれました。その課題に対する解決策でもあります」(平野氏)
アプリの具体的な機能を見ていこう。メイン機能は、商談に使うさまざまな情報やコンテンツを登録し集約できること。アプリをインストールした後、「ブック」(情報を格納するフォルダのようなもの)を作成し、その中にPDF、画像や動画、あるいはYouTubeやWEBページのリンク(URL)など、商談に使うデータをまとめて登録できる。
「ブックに登録したコンテンツは、スワイプで連続的に閲覧していくことができます。また、YouTubeやWEBリンクは、専用の外部のアプリを起動することなく、Handbook Xアプリ上でそのまま閲覧できるのが特長です」(平野氏)
たとえば、PDFの資料を見ている最中に、顧客から質問がありWEBページに飛ぶ場合、ブラウザを起動してブックマークを探してモタつくといった不便もあった。Handbook Xでは、そういった時間のロスなく同じアプリ内で見られる。また、PDFや写真、動画などのコンテンツは、一度ダウンロードしてアプリ内に保存するので通信環境がない場所でも閲覧できる。
Handbook Xは、スマホやタブレットで閲覧できるのはもちろん、オンラインのWEB会議ツールで画面共有することも可能。対面、非対面どちらの商談シーンでも利用できる。
これまでは、営業資料をクラウドサービスやストレージファイルに集約していた人もいるかもしれない。しかし、それらは顧客にそのまま見せる仕様になっていないケースも多い。そういった意味で、従来にはなかったツールだという。
なお、Handbook Xはアプリをインストールすれだけで特殊な設定は必要なく、フリープランから幅広く用意され、誰でも利用しやすいツールとなっている。
このアプリがなぜ「個の時代」の営業を支えるのか
Handbook Xの機能が見えたところで明確にしたいのは、このアプリが個の時代の営業パーソンをどうサポートするのか、ということ。大きくは2つあるという。
1つ目は、顧客に合わせて必要な情報をすぐ見せられる点。相手のリクエストやペースに合わせて臨機応変に対応できることがメリットだと平野氏は説明する。
「情報を見せる際、それぞれのアプリに切り替えずHandbook Xの中で閲覧できるので、たくさんの情報をスムーズにストーリー立てて見せることができるでしょう。商談の決め手はひとつではありません。さまざま資料や情報の積み重ねで成立するものです。多様な情報を使いこなす営業パーソンの味方になるのではないでしょうか」
特に証券や保険の営業など、実物のない『無形商材』を扱う営業パーソンは、実物がないゆえに細かな情報を駆使して、商談の説得力を高めることが重要になる。
「あの資料をもう一度見たいという顧客の要望に対し、簡単なスワイプですぐに戻れる、あるいはWEBページをスムーズに見せるなど、非常に細かな差ではありますが、この差が商談の説得力を上げると考えています」(平野氏)
続いて「個の時代の営業パーソンをサポートする要素」の2つ目に触れたい。先述したように、個が強くなるとはいえ、ゆるいつながりも形成される。そしてそのつながりは、従来のようにわかりやすい企業との雇用関係だけでなく、さまざまな方向に広がるだろう。そこでHandbook Xでは、アプリ内の情報を共有できる機能も備えているという。
「アプリのユーザー同士であれば、ブックに登録した情報やコンテンツを共有することが可能です。たとえば顧客との商談で使った情報をそのまま顧客に共有したり、別の営業パーソンに横展開したりということもできます」(平野氏)
「企業も、営業に情報を個別に提供する時代になる」
ここまでは、営業パーソンの立場でHandbook Xの機能を説明してきたが、平野氏は経営層や企業の上層部に対しても、これからの時代、こういった個人向けツールで営業パーソンを支援することが大切になると伝える。
「個の時代になり、企業はフリーランスや個人事業主と連携する機会が増えるでしょう。そういった人たちの力を生かすことが企業に求められます。といっても、社員のように画一的なシステムで管理することは難しい。企業も情報を個別に提供する時代になるでしょう。その中で、Handbook Xが企業と個人をつなぐ突破口になればと思っています」
「実力主義」が台頭する時代を迎える中で、営業パーソンはどう戦うのか。企業はどう個の力を発揮させるのか。新たにつくられた商談支援アプリHandbook Xが、個の時代における重要なサポート役になっていく。