まちづくりで「ウェルビーイング」が追求される訳 「ひと中心」の地域づくりの最前線をさぐる

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「まちづくり」というと、これまでは経済性や効率性を重視したハードウェアの整備が中心だった。しかし近年はSDGsの流れもあり、誰も取り残さない「一人ひとりの幸福(ウェルビーイング)」を追求するまちづくりにシフトしつつある。そうした中、NTTデータグループのコンサルティング会社であるNTTデータ経営研究所は、2021年10月に「地域未来デザインユニット」を発足。ウェルビーイング中心の地域づくりをリードしていこうとしている。新ユニット発足の狙いや、新しい地域づくりで同社が担う役割について、代表取締役社長の柳圭一郎氏と地域未来デザインユニット長を務める江井仙佳氏に語ってもらった。

ハードウェア整備から人の幸福の追求へシフト

――新たに発足された「地域未来デザインユニット」では、ミッションとして「ひと中心(ウェルビーイング中心)の地域づくり」を掲げています。そこにはどのような思いが込められているのでしょうか。

NTTデータ経営研究所
代表取締役社長
柳 圭一郎(やなぎ・けいいちろう)氏

 これまでの地域づくりを振り返ると、経済性や効率性が追求された結果、交通インフラや箱物などのハードウェア整備を中心に便利な街をつくろうとしてきた流れがあります。できるだけ多数の人が幸せになれるよう、基準を作ってみんなに等しくリソースを配分するという傾向が強く、その中で基準から漏れる人の幸せは「後回し」になりがちでした。

しかし昨今は、デジタル技術の進展によって、一人ひとりのさまざまなニーズにきめ細かく対応できる環境が整ってきています。そうした中で、「人を起点に地域やコミュニティをつくっていくことが重要だ」という理解が社会の中で共有されつつあり、当社では今こそウェルビーイングの追求という本質的な地域づくりの実現に寄与していきたいと考えています。

江井 一人ひとりの幸せの追求は、経済性や効率性と相反するものではありません。「幸福度の高い人は創造性や生産性が高い」ともいわれ、暮らしやすさだけでなく、地域の経済成長をも後押しするカギになると考えています。

多様な人材が持つ知見から新たな価値を生み出す

――改めて、地域未来デザインユニットはどのような組織なのでしょうか。

NTTデータ経営研究所
地域未来デザインユニット長
江井 仙佳(えねい・のりよし)氏

江井 特徴的なのはメンバー構成です。空間づくり中心のこれまでの地域づくりでは、建築・土木などのエンジニアリング関連の知識や人材が必要とされてきました。一方、ひと中心の地域づくりでは、幅広い領域のナレッジを求めていく姿勢が重要です。

地域未来デザインユニットには、都市計画分野でキャリアを積んできたコンサルタントに加えて、教育、人類学、金融、スポーツ、公務員など、多様なバックグラウンドを持つ人材が結集しています。また社内には脳科学の専門家など多様なエキスパートが在籍しており、プロジェクトごとに連携しています。地域づくりの知見を軸としつつも、そこに多様な視点を加えた、新しい価値創造を志向しています。

 当社ではこれまでもさまざまな地域ビジネスを行ってきましたが、実は「地域」というワード単独でコンサルティングするというケースはそれほど多くなく、ヘルスケアやエネルギー、農業、観光、金融といったテーマと組み合わせることが大半です。そのため、テーマごとにほかのユニットとも連携して課題を解決していく方針です。

江井 ひと中心の地域づくりでは、重要なことが3つあります。1つ目は「共創」。今、地域に残っているのは、1つの専門性だけでは解けない複雑な課題ばかりです。その解決には、さまざまなプレーヤーとの協働が必須です。単に一緒に組むだけではなく、課題感や目標を共有して、成果を持ち寄り、みんなでもう一度考えるという共創サイクルが必要です。

2つ目は「丁寧さ」です。関わるプレーヤーが広がった分、それだけ合意形成のハードルは上がります。未来のビジョンの共有に加えて、編み物を編むようなきめ細やかさや丁寧さをもって、一人ひとりの納得感を積み重ねることが求められます。そこは以前からの地域づくりのノウハウが生きる分野であり、チーム内の経験が発揮される場面です。

3つ目はデジタルなど「新たな技術の活用」です。地域課題には、多くの地域に共通するものと、その地域ならではのものがあります。共通する部分には情報共有や効率化を進めつつ、一人ひとりの生活者やまちに根づいた情報を拾い上げ地域の個性を伸ばしていく、課題解決型DXが重要です。当社ではこの3つをキーワードに地域づくりを推進していきます。

日本初のスマートシティの国際認証「ISO37106」取得を支援

――実際に、どのような地域づくりのプロジェクトを行っていますか。

江井 代表的なのは、NTTグループで推進する「サステナブル・スマートシティ・パートナー・プログラム」です。地域・住民のウェルビーイングの最大化を目指した地域づくりについて考える共創型のプログラムで、都市計画や人類学、医学、文化、芸術など幅広い分野の有識者と、自治体・大学で構成されています。当社は事務局のメンバーとしてプログラムの運営や企画の一翼を担っています。

その一環で、スマートシティに関する国際認証「ISO37106」(BSI認証)の取得支援も行っています。1例目として今年2月、NTTアーバンソリューションズ株式会社、日本電信電話株式会社とともに、名古屋市東区東桜一丁目エリアにおける日本初のISO37106の取得についてプレスリリースを行ったところです。

また、本プログラムではウェルビーイングを軸にしたまちの豊かさを評価する仕組みも準備しています。地域のさまざまなデータと満足度などをつなぐことで、施策とひとの幸せとの関係を可視化したいと考えています。

――ほかにも特徴的な取り組みはありますか。

江井 全国のさまざまな地域で地域づくりに関わる「共創ラボ」の企画や運営のサポートをしています。京都市の「KYOTO CITY OPEN LABO」をはじめ、秋田県横手市や新潟県長岡市川口地域、淡路島などでプロジェクトを進めています。

ユニークなところでは、ブロックチェーン技術を活用して関係人口を可視化する実証実験を内閣府補助事業として3地域で展開しています。近年は、移住促進に加え、関係人口から持続的なつながりを育む自治体も多くなっています。自分の地域がどのような人々とつながりがあるのか、それぞれの方々がどんなアクションをしているかを可視化し施策の効果検証につなげるなど、価値ある取り組みだと考えています。

――実にさまざまなことに取り組んでいますね。今後の展望もお聞かせください。

 地域づくりは全国一律ではありません。それぞれのエリアの特徴を生かしたアプローチが必要な一方、お住まいの方は地元のよいところに案外気づいていないことも多いように見受けられます。私たちは、それぞれの地域のよさを見つけて、特徴を生かす戦略づくりを支援することを心がけています。

一方で、コンサルティングの仕事も「ひと中心」。地域づくりに思いを持ったさまざまなバックグラウンドを持つ人たちと力を合わせ、ひと中心の地域づくりを進めていきたいですね。

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