コロナ禍で飲食業に求められるデジタル化とは 「LINEミニアプリ」で変わる店舗運営の可能性
国内利用者数9,000万人以上(2021年12月末)のLINE上で、順番待ち受付・会員証・店内注文・予約などの機能を持つサービスの提供が可能。ユーザーは自社アプリのインストールや会員登録をしなくても、LINEアプリ内でサービスを利用できる。LINEミニアプリを導入する際は企業の要望に合わせて一から構築する「個別開発」と、必要な機能を簡単に導入できる「パッケージ」が利用可能。パッケージ利用の場合、店舗は新たにアプリを開発・導入する手間やコストを削減できるなどのメリットがある。
課題山積の飲食業。デジタル化は待ったなし状態
――コロナ禍をきっかけにさまざまなビジネス領域がデジタル化へとアクセルを踏んでいます。飲食業もデジタル化を進めるべきなのでしょうか?
二杉 進めるべきです。コロナ禍以前からの問題として、飲食業は慢性的な人手不足でした。東京は有効求人倍率が9倍近い水準で推移、飲食店は人材を確保しづらい状況が続いていました。さらに最低賃金の上昇により、人件費は今後段階的に上がっていくでしょう。アフターコロナで人流が戻ってくると、飲食業は活況を取り戻すはずですから、人材不足と人件費高騰は継続的な事業課題になるとみています。
そこで打ち手の1つとなるのが、業務のデジタル化です。例えば接客をロボットに置き換えるだとか、スマホアプリ経由の店内オーダーなど接客業務の一部をセルフ式にするなど。とくにオーダーのデジタル化は、他人との接触や紙のメニュー表の共有を避けたいという公衆衛生的なニーズの高まりに応えることにつながります。
武藤 飲食業の方にヒアリングすると、人材不足や人件費などを課題として挙げられることが多いです。業務効率の向上はもちろん、お客様のニーズに応えるためにデジタルツールを積極的に活用することが、「選ばれ続ける飲食店」になるために必要ではないかと考えています。
二杉 おっしゃるとおりです。ただ、デジタルになじみのない高齢の経営者にとっては、デジタルツール活用のハードルは高い。また、デジタルツールに抵抗感を持たない若い経営者であっても、種類が多くて何を選べばよいかわからないケースがあると思います。どのソリューションなら現在抱える課題を解決に導けるのか、結局わからずに導入を後回しにしてしまう。つまり、技術の進化による“選択肢の多さ”が、逆にデジタル化を阻む要因になっているともいえます。
武藤 「日進月歩で新しいデジタルツールが登場する」「お客様のニーズは変化する」ということを踏まえて、デジタル化に取り組むことが大事だと思っています。ずっと同じツールを使い続けるのではなく、その時々で柔軟に見直すスタンスでいることが重要ではないでしょうか。
LINE上で注文できる店内オーダーは今後の店舗運営の主流に
――具体的にどのような部分からデジタル化に取り組むべきでしょうか?
武藤 コロナ禍で衛生面を気にするお客様が増えていますので、非接触で注文できるセルフオーダーは喫緊に取り組むべき課題だと思います。実際に、スマホを使ったオーダーシステムを採用する店舗が、生活圏内で増えてきているように感じます。
二杉 同意見です。お客様自身が保有しているスマホからオーダーできるシステムは、以前からありましたが、コロナ禍で一気にニーズが高まったと思います。お客様にとって非接触を実現できるという以外にも、「手を挙げたり呼んだりしているのにホールスタッフがなかなか来てくれない」といったデメリットがなくなるわけです。飲食店からすると売り上げのチャンスロスを防ぎ、客単価アップにつながります。
武藤 セルフオーダーは省力化や人件費削減に直結しますから、コロナ禍以降も普及していくはずです。機械的な業務はデジタルに置き換えて、ホールスタッフは浮いた時間をお客様とのコミュニケーションに充てられれば、顧客満足度の向上も期待できます。さらに、スマホを使ったオーダーシステムで得られるデータや、ユーザーとのオンライン接点を活用したリピート率向上などのマーケティング施策も今後ますます活発になっていくように思います。
二杉 マーケティングに活かすという観点では、数あるオーダーシステムの中でも、LINEミニアプリの「店内オーダー」は本命だと思っています。単にシステムだけ提供するのではなく、LINE公式アカウントとも連動させられる点が強みですよね。
武藤 例えば、テーブル上のPOPやメニュー表に記載されたQRコードからLINEミニアプリの店内オーダーを立ち上げると、自社のLINE公式アカウントへ自然に誘導できます(友だち追加はユーザーの任意)。「友だち」となったお客様にメッセージでキャンペーンなどをお知らせし、再来店を促せます。LINEマーケットプレイスから開発企業が展開する「パッケージ※」のLINEミニアプリを導入いただければ、店舗側の設定も簡単です。申し込みから、大体1カ月ほどで運用を開始できるところも強みです。
二杉 利用客に自社のアプリをダウンロードしてもらおうとすると「面倒なのでやめておきます」と断られかねません。その障壁がないというのは、LINEのプラットフォームを活用したLINEミニアプリならではのポイントだと感じます。
新人を料亭の女将に。広がるデジタル化の可能性
――実際、LINEミニアプリの店内オーダーはどのように活用されているのでしょうか?導入事例や効果について教えてください。
武藤 都心にある座席数40席の飲食店の活用事例をご紹介します。オープンからLINEミニアプリの店内オーダーを導入され、3カ月半で利用率は8割近く。それに伴い、LINE公式アカウントの友だちは約7,800人増加しました。予約もLINE公式アカウント経由が多数を占めたことから、グルメサイトの広告費を半減できたそうです。また、LINEミニアプリの管理画面で確認できるお客様の属性に応じて、LINE公式アカウントからキャンペーンを告知するメッセージを配信するなどの工夫をしたところ、リピート率も月を追うごとに増加しているとのことでした。
二杉 LINEミニアプリの強みが表れた事例だと思います。オーダーを入れたときに友だちとひも付き、“会員化”できるところが特徴ですよね。これまで、オペレーションに「LINE公式アカウントと友だちになったら特典があります」というアナウンスを組み込まなければならず、マンパワーに依存せざるをえませんでした。ところが現場レベルで考えると人手不足によってそうしたコミュニケーションが十分に取れないのが現実です。その点、LINEミニアプリの利用により、友だち追加までの導線がスムーズになるわけですから、機会損失を防げる可能性が高まるのではないでしょうか。
武藤 さらに、LINEミニアプリはユーザーが登録した情報や、来店回数などの行動履歴をデータとして取得できます※。そのデータを基に、ユーザーの特性に合ったキャンペーンを告知するなどオンライン上のコミュニケーションを工夫したり、店舗での接客に役立てたりすることが可能です。高級料亭の女将は常連客の顔や名前だけでなく、趣味嗜好を頭に入れた状態で接客をされますが、新人のアルバイトだとそこまでは難しい。しかし、LINEミニアプリで蓄積した顧客情報を活用して、ユーザーの来店時にハンディでこれまでの来店回数やオーダー内容などの情報を確認できるようになれば、職務経験が浅くてもOne to One接客を実現できます。LINEミニアプリは省力化だけではなく、中長期的に顧客満足度を高めるためのツールとして飲食店の経営に貢献できると確信しています。
二杉 本当の意味での生産性向上は売り上げや利益を上げながらも、工数が増えない状態を維持すること。ただ、生産性向上の検討に当たっては業務のムリ・ムダを引き算する話になりがちです。しかし、それだけでは事業の成長を見込めません。その意味でも、LINEミニアプリのように業務の工数を減らしながらも売り上げアップにつながるデジタルツールの有効活用が求められるのではないでしょうか。