東京ガスが「M&A」で実現、責任あるDX事業の凄み 世界が目指す「脱炭素社会」の実現に向けて

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1885年の創立以降、都市ガスの製造・供給・販売を主力事業に、電力事業へも参入し、日本のエネルギーインフラを支えてきた東京ガス。同社は脱炭素社会の実現に貢献すべく、ソフトウェアテクノロジーを強みに顧客のDX支援に本腰を入れている。なぜ東京ガスがDX支援に本腰を入れるのか。キーマン2名に詳細を聞いた。

エネルギーインフラ企業が、DX支援に本腰を入れる訳

「日本資本主義の父」である実業家・渋沢栄一によって創立された東京ガス。渋沢が提唱した「マルチステークホルダーとの共存」をDNAとして受け継ぎながら、一般消費者、地域社会、ビジネスパートナーとともに価値共創を重ね、社会価値とともに経済価値も高めてきた。

同社の大きな転換点の1つは、今から約50年前、新たなエネルギーのリーディングカンパニーとして、アラスカからの液化天然ガス導入という一大プロジェクトを達成し、国内外で天然ガスの時代を切り開いてきたことにある。ところが昨今、脱炭素化の潮流やデジタル化の進展など、市場環境は目まぐるしく変化し、同社を取り巻く環境も激変している。

東京ガス エネルギーソリューション本部 ソリューション共創部長
清水精太氏

「当社事業の核である天然ガスは、安定性・環境性・経済性に優れていることから、役割と価値は今後もさらに拡大していくと考えています。一方、脱炭素社会においては、化石燃料の供給だけでは大きな成長は見込めません。そこで2030年の事業ポートフォリオ構成においては、エネルギーおよび海外事業以外で収益を上げるソリューション事業の利益比率を全体の25%まで高めることを掲げています」と話すのは、東京ガス エネルギーソリューション本部 ソリューション共創部長の清水精太氏。

「脱炭素化を推進するには、民間の生産現場において『エネルギーを大切に使う』姿勢が必要不可欠です。そこで、全国に広がる製造業のお客さまが、エネルギーの使用状況をモニタリングし運用最適化できるシステムの提供を検討するに至りました」

その答えの1つが、東京ガスが現在、販売と開発を手がける『Joyシリーズ』だった。『Joyシリーズ』は、日本たばこ産業(JT)傘下のジェイティエンジニアリング(JTE)によって開発され、21年12月に東京ガスがM&Aで取得したソフトウェア製品だ。なぜ『Joyシリーズ』を選び、取得するに至ったのだろうか。

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工程監視やロット管理、在庫計画などさまざまな機能を有する「Joyシリーズ」の全体像

「19年からシステムインテグレーション事業を通じて『Joyシリーズ』の取り扱いを始め、製造業をはじめとしたお客さまへの導入サポートをしていました。そうした中で、『リーズナブルな価格帯でフレキシブルにシステム運用できるこの製品であれば、お客さまの課題解決に貢献できる』と確信し、このたびM&Aで製品を譲り受けてソフトウェア事業にも参入。システムインテグレーション事業とソフトウェア事業の両輪でお客さまのDXの加速を目指すことになりました」(清水氏)

東京ガスには、エネルギーインフラの普及を通じてつながった数十万を超える法人顧客との接点がある。さまざまなDXや脱炭素に関するニーズや課題を聞いて把握していたことから、『Joyシリーズ』のベストオーナーとしてさらなる改良や開発を進めることを決断できたのだろう。

「『Joyシリーズ』を構成する商品群の1つに、SCADAを構築するソフトウェアがあります。SCADAとは、大規模工場・プラント・ビル設備など、あらゆる施設・設備の監視・制御を行うシステムです。工場などの生産現場では、機械の稼働状況やエネルギーの使用状況の確認が人手や目視を介して行われている部分が多いですが、SCADAを高度に活用すれば人手をかけずにデータを収集できるようになります。収集されたデータを経営判断に生かすことで、経営の要諦である生産性の向上や脱炭素化の実現にもつながっていきます」(清水氏)

SCADAは各種設備や機械の情報を把握し、経営判断に生かせるデータを生成する

多彩なプロダクトで生産現場のDXを後押し

SCADA構築ソフトウェアの『JoyWatcherSuite』は、『Joyシリーズ』の中でもいちばんのヒット商品だ。各所に散らばった温度等の現場データを収集し、工場や機械の状況を可視化するシステムを構築。可視化されたデータを連携・活用することで、「生産性低下」「不良品発生」「人材不足」などの問題を解決することが可能になる。

ほかのSCADA構築ソフトウェアと異なる特徴について、ソリューション共創部Joy事業グループのマネージャー、浦田昌裕氏は次のように説明する。

東京ガス ソリューション共創部
Joy事業グループ マネージャー
浦田昌裕氏

「『JoyWatcherSuite』の真骨頂は、プログラミング不要(ノーコード)で、ユーザー自身でシステムを構築できるところにあります。これまで中央監視システムは、ソフトウェアメーカーとシステムメーカーによって、個社ごとにつくり込まれることが通例でした。ただ、工場の増設や設備の移設などがあると、その都度ベンダーに変更を依頼しなければならず、費用もかさんでしまいます。現場で実際にシステムを使うオペレーターの方々が工場の状況に合わせて手軽にカスタマイズできる柔軟性が、『JoyWatcherSuite』のメリットだと考えています」

多彩なグラフィックやアニメーション機能も秀逸で、ユーザーは一目で工場の稼働状況を把握することができる。主要メーカーのPLC(製造業の装置などの制御に使用されるコントローラー)のドライバを有しており、連携もスムーズだ。

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部材を用いて簡単にグラフィック作成が可能

「これまでは、機械や半導体の組立工場での導入実績が多い『JoyWatcherSuite』でしたが、最近では食品・医薬品・化粧品など三品業界や、地方のエネルギー会社からのお引き合いも増えています。各社さまの生産性向上はもとより、エネルギーの使用量を精緻に把握することで、脱炭素化の取り組みにもお役立ていただけると考えています」と浦田氏は自信をのぞかせる。

『Joyシリーズ』は『JoyWatcherSuite』以外にも、DX実現を推進する多岐にわたる関連ソフトウェアで構成されている。書類のやり取りが多い製造業における電子帳票化ツール『JoyCoMES Re(ジョイ・コメス・アールイー)』は、既存の紙帳票を表計算ソフトと同じ操作でスマートフォンやタブレットなどから入力できる電子帳票にすることで、作業員の点検や書類作成時間を大幅カット。承認されたデータは自動的にデータベース連携されるため、本社での作業も効率化され、ペーパーレス化の推進にもつながる。また、マルチデバイスで遠隔地(多拠点)の情報を一元管理する『JoySmartView』は離れた場所にある工場や太陽光発電、水処理設備などでも、場所を選ばない遠隔監視を可能にする。

「『Joyシリーズ』の普及に応じて大規模なデータが集まるので、新たな製品の開発にも取り組んでいきたいです」と意欲を見せる浦田氏。

東京ガスはエネルギーの供給にとどまらずDXのパートナーとして、『Joyシリーズ』を足がかりに次世代に求められる価値創出に向けて新たな一歩を踏み出している。

製造業の生産性向上や脱炭素化を支援する『Joyシリーズ』の詳細を見る