知ってた?スイミングスクールの「AI革命」 親子にもたらす、かけがえのない財産と思い出
課題を乗り越えた経験が、子どもの一生の財産に
ソニーネットワークコミュニケーションズが展開するスポーツICTソリューション「スマートスイミングレッスン」。2021年に導入を開始し、すでに全国約80店舗に展開する大手フィットネスクラブ・ルネサンスに続き、22年4月1日より同サービスを本格導入するのが、「コナミスポーツクラブ」が展開する運動塾 スイミングスクールだ。本店を皮切りに、その後全国に拡大し、来年3月までに約100店舗への導入を目指す。
気になるスマートスイミングレッスンの内容は、こんな流れだ。まずはレッスン前に、次のレッスンテーマとお手本動画が送られてくるので、子どもと保護者はそれで予習する。レッスン中も、コーチはお手本動画を見せながら子どもにレクチャー。さらに子どもは泳いだ直後に自身の動画を見て泳ぎを確認。そして進級テスト時は、水中を含めた複数のカメラで自動撮影・自動編集した動画が各生徒に配信される。
最新テクノロジーを活用したこのレッスンプログラムは、果たして子どもや保護者にどんなメリットをもたらすのか。その大きな一つが、水泳技術の習得のハードルを大幅に下げることだ。運営に携わるコナミスポーツ株式会社 施設運営サポート部 統括マネージャー・大石貴士氏はこう話す。
「水泳は水中ということもあって視界が限られ、自分の泳ぐ姿を客観的に見るのが難しいスポーツです。したがってこれまでは、コーチの言葉を聞いて想像するしかありませんでした。でもスマートスイミングレッスンなら、自分の泳ぎをその場でつぶさに客観視できます。それにより、コーチの言葉の響き方も大きく変わるでしょう」
実際、スマートスイミングレッスンを導入したある店舗では、これまでどう説明してもなおらなかった平泳ぎの脚のクセが、動画を見せたとたんになおったという事例が報告されている。また、子どもが「能動的」になることによる上達効果も大きい。映像を見れば、自然と「ここは違うな」「もっとこうしたい」という思いが出てくる。それが上達への意欲となり、自ら考え、工夫するようになる。まさに「アクティブラーニング」の状態だ。
「水中映像を自力で撮影するのは大変なので、それが自動で撮影でき、編集も自動化されるのは極めて画期的です」(大石氏)
続いて二つめに挙げられるメリットが、人間形成への寄与だ。今回のスマートスイミングレッスン導入を統括するコナミスポーツ株式会社 執行役員・岡田潤氏は話す。
「映像を見ることで子どもが課題を見つけ、その後工夫をして課題を解決する。それが“可視化”されることが、大きなポイントです。そうして幼いうちから『やればできるんだ』ということを実感できることは、その後の人生の大きな財産となるでしょう」
さらにもう一つ岡田氏がメリットに挙げるのが、親子のコミュニケーションの促進だ。
「『進級テストどうだった?』『受かった』『よかったね』で終わることが多かった親子のコミュニケーションも、レッスンのテーマや泳ぎの映像を親子で共有することで、お子さまは『見て見て、こんなに泳げたんだよ』と言いたくなるでしょうし、それを見た保護者もモチベーションとなるような言葉を返すことで、一層お子さまの意欲が増します。
一度しかない子ども時代に、親子で一生懸命に取り組んだ記憶は、双方にとってかけがえのない思い出になるでしょう」
難しい“水泳レッスンへのICTソリューション導入”が
なぜ実現したか
では、実際にスマートスイミングレッスンを受ける子どもとその保護者は、どう感じているのか。同サービスを先行導入したルネサンスのスイミングスクールに通う親子に話を聞いた。
「まずは映像に大変驚きました」と話すのが、小学3年生の娘を同スクールに通わせるお母さん。
「泳いでいるところを、斜め上からだけでなく水中からも撮っていて、ここまで見られるの!?とびっくりしました」
対して、娘さんは
「自分の泳いでいる姿を見て、『こんなふうに泳いでいるんだ』というのがわかりました。言葉で言われるだけだとわからないこともあるけど、動画だと『できていること』と『できていないこと』がよくわかります」
そしてお母さんが、一番の変化に挙げるのが「意欲」だ。
「以前はプールの日にレッスンに行くだけでしたが、今はレッスン前に動画が送られてくるし、いつでも自分の泳ぎを見返せるので、レッスン日以外にも水泳に触れる時間が増えました。そして本人から『もっとうまくなりたい』という意欲を感じられるようになり、実際に進級テストで不合格にならなくなったんです。
本人からはよく『プールに見に来て』とも言われるようになりました。習いごとは本人に意欲があるかどうかで成果が全く違うものになるので、意欲が高まったことが何よりです」
娘さんは、少しはにかみながらこう言った。
「水泳大好き。早くきれいに泳げるようになりたいな」
実は数あるスポーツの中でも水泳は、こうしたスマートレッスンサービスの開発ハードルが高い。開発元のソニーネットワークコミュニケーションズ 法人サービス事業部・田村錬志氏はこう明かす。
「進級テスト時の自動動画編集を行うには、泳いでいる人物を認識し追跡するAI技術が必要ですが、水中では視界がぼやけ、かつ水泳では服装の特徴もなくなるため、非常に認識しづらくなります。かつ塩素や高温多湿といったプール特有の過酷な要因もあります。したがってスマートスイミングレッスンの開発は、当社としてもチャレンジングでした」
開発を強力に後押ししたのが、ソニーグループのAI技術の蓄積だ。同グループでは、今やどんな事業においてもAI技術が不可欠ととらえ、R&D(研究開発)部門を筆頭に実践的AI技術を積み上げてきた。加えてハードからソフト、クラウド、セキュリティ、運用にいたるまでを一括してまかなえる点も、同サービスの具現化に大きく寄与している。
AI技術の導入などで、いま大きく進み始めているスイミングスクール革新。それは、テクノロジーのめざましい進歩や、スクールの経営改善といった話だけにはとどまらない。子どもと保護者の双方にかけがえのない財産と思い出をもたらし、ひいては日本の競泳レベルを大幅に高めるといったところまでが地続きになった、革命的なソリューションだ。