DXによる変革で、製造業の競争力向上を支援 日本の製造業が国際競争力を持つカギとは
ハードとソフトの一体開発を強みに成長
――高い技術力に裏打ちされたシステム開発を基盤に、長年にわたり製造業をサポートされていますね。
上野 世の中の技術に付加価値をつけた商品を作りたい。そんな思いから1985年に創業しました。メーカー向けの組み込みソフトの受託開発からスタートし、ポケットベル、その後の携帯電話、スマートフォンの普及に合わせて、事業が拡大。最近では、カーナビゲーションシステムやカーオーディオなどの車載機器に加え、先進運転支援システム(ADAS)関連の開発も増えています。
また、システム開発だけでなく、半導体検査装置などのハード面でも、仕様検討から装置製造までをワンストップで開発対応し、製品開発のパートナーも担っています。
一方、市場では自動車でCASE(ネット接続・自動運転・カーシェア・電動化)が進展し、また、民生機器も高速通信規格の5Gなどの普及により、デジタル家電や、あらゆるモノがネットにつながるIoT化が加速するなど、大きな変化が続いています。当社の強みはソフトとハードの両面を一体で開発できること。この変化は、当社が活躍できる舞台をさらに広げていくと感じています。
――製造の「現場」を支援するソリューションも提供していますね。
上野 現在、世界トップシェア(同社調べ)を誇る3次元CAD/CAMシステム「Mastercam」の正規輸入代理店権を90年に取得し、これまでに日本全国で4500社以上に活用いただくなど、製造現場向けに輸入販売・サポートを行うエンジニアリングソリューションを提供しています。また、世界で累計約6万ライセンスを販売している、生産ラインや倉庫などの生産性の向上や省エネを実現する3Dシミュレーションソフト「FlexSim」の日本総代理店も務めています。これらのソリューションで、日本の製造業における課題解決に貢献していきたいと考えています。
ちなみに、製造業にフォーカスしたものではありませんが、位置情報を活用した防災・見守りアプリ「ココダヨ」事業も展開しています。緊急地震速報など、緊急時・災害発生時の警報発令に連動して、心配な家族や大切な人の最新の居場所を自動通知するスマートフォンアプリで、累計ダウンロード数は68万件(2022年1月時点)を突破しています。社会課題への挑戦は企業の使命だと考えています。
日本の製造業が国際競争力を持つカギとは
――日本の製造業が国際的な競争力を発揮するためには、どのような取り組みが必要でしょうか。
上野 まずは、製造プロセスを可視化することが大切です。原料の調達から部品、人、機械、設備、さらには物流まで、すべてのプロセスをデジタル化し、一元管理します。そうすることで、ボトルネックも見えてきます。
ただし、それを人の経験と勘で行っては、分析や判断に時間がかかります。そこで役立つのが、当社が提供している「FlexSim」です。米FlexSim Software Products社が開発した製品で、生産ライン設計における加工・組み立て、倉庫管理などを3Dモデルでシミュレーションできます。機械や設備だけでなく、物流のトラックや人の動きまでを含めてシミュレーションできるのが特長の1つです。日本の製造業や物流業に導入が広がりつつあります。
――「FlexSim」の活用は、どのような効果が期待できますか。
上野 「デジタルツイン技術」を活用した製造プロセスの最適化により、生産性を少なくとも30%以上向上させることができます。「デジタルツイン(デジタルの双子)」とは、現実の世界を3Dモデルで仮想空間に再現することです。機械、設備、人員の位置情報など、現場のデータをデジタル化して取り込み、コンピューター上に現実を再現します。「FlexSim」では、シミュレーションと実機の稼働とをリアルタイムで連動させることも可能です。
また、21年10月には、NECをはじめとする6社によって設立された、BIRD INITIATIVE社との共同開発により、「FlexSim」に同社が持つAI(人工知能)技術を統合することで、高精度かつ高速にデジタルツインのモデリングと仮説検証が行える新たなソリューション「iPerfecta」も発表しました。生産性を劇的に高めることで、排出エネルギーの削減から、脱炭素(カーボンニュートラル)も推進できます。
――日本の製造業を元気にするだけでなく、くらしや環境にも貢献していきたいということですね。
上野 私たちが提案するソリューションでお客様の課題を解決できれば、環境問題をはじめSDGsなど社会的に求められる取り組みにも貢献できます。ここに、お客様の課題に精通している当社の強みが生きてくると思っています。今後はこれまで蓄積してきた知見を基にコンサルティングにも力を入れていきたいと考えています。
そのカギになるのが人材です。当社自身の業務の最適化も推進し、働きやすい環境づくりを行い、このやりがいのある仕事に強い思いを持ち、共感してくれる人材を採用することで、お客様、社会の期待に応えられる企業でありたいと思っています。
引き続き、日本の製造業をはじめ、各産業の価値創造につながる取り組みを進めていきます。