ソフトバンクの社内SE集団が迎えた2つの転機 1.8万人が利用するITインフラ担う「陰の立役者」

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テクノロジーユニット コーポレートIT本部のメンバー。若手社員も多く所属している
約3800万の携帯ユーザー※1を擁するソフトバンク株式会社は、通信事業で大きく成長を遂げ、近年は他社との共創による新規事業でも存在感を増している。従業員数は1万8000人を超え、グループ会社の数は335社にも上る(2021年3月末時点)。同社を支えているのが、社内のITインフラを担うコーポレートIT本部だ。同社のダイナミックかつスピーディーな事業展開を可能にする「陰の立役者」に迫った。
※1 2021年度第3四半期の主要回線数(スマートフォン、従来型携帯電話、タブレット、モバイルデータ通信端末、「おうちのでんわ」など)

社内システムであっても「ユーザー目線」を追求

携帯電話をはじめとしたソフトバンクの通信事業は、社会インフラだ。それをITやシステムの面から支えているのがコーポレートIT本部。

例えば、携帯電話の販売に関するシステム、携帯電話のユーザーが契約プランや料金を確認できるオンラインページ、バックオフィスシステムなど、いずれも業務推進に必要不可欠なものばかりだ。

「弊社はもともとITに理解があり、早くからテクノロジーを使った業務改善に取り組んできました」

テクノロジーユニット コーポレートIT本部 本部長
北澤 勝也

そう話すのは、コーポレートIT本部を率いる本部長の北澤勝也氏。同本部ではこれまで2回、大きな転機があったという。

1回目は2011年。ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ウィルコムの4社別々にあったバックオフィスのERPシステムを統合することになった。

北澤氏がリーダーに抜擢したのが、当時、入社5年目の浅井健太氏だ。

「5年目が統括できる規模のプロジェクトとは思えませんでした。打ち合わせに行くと、『こんな若手で大丈夫?』という視線も感じましたね。しかし、北澤の『何かあったら責任を取るから大丈夫』という言葉が心強く、自分なりに工夫して進めました」(浅井氏)

なんとか周囲の信頼を得て完成させたシステムだったが、社員には使いにくく混乱が起きてしまったという。

テクノロジーユニット コーポレートIT本部 エンタープライズシステム統括部
ERPシステム部 ERPフロントシステム課 課長
浅井 健太

「ガバナンス強化に重点を置いて作ったものだったので、現場にとっては使い勝手のよいものとは言えなかったんです。その状況を見た当時の副社長の宮内から、『情報システム本部だけでもう一度作ってみて』との指示がありました※2」(北澤氏)

宮内氏の指示は、「みんなが笑顔になるもの」、つまりユーザーが喜んで使ってくれるものだ。それを実現するため、北澤氏や浅井氏は現場の社員の使い勝手にとことんこだわることにした。

「社員の80%が満足と答えたものだけを順次リリースする」という厳しい基準を自ら課した。意見を書き込める掲示板を作り、集まった意見を分析してまた直す。これを繰り返すうちに、満足度は確実に上がっていった。

こうして完成したシステムは「Smile」と名付けられ、現在も約1万8000人ものユーザーが日々利用している。

この「Smile」のプロジェクトが、コーポレートIT本部において『ユーザー目線』を第一に考えるようになった転機をもたらした、と北澤氏は振り返る。

※2 宮内氏は、現在の代表取締役会長・宮内謙氏。「情報システム本部」は現在のコーポレートIT本部に当たる

「問題をなくす」から
「問題は起こるもの」へと意識を改革

「Smile」を成功させた後、コーポレートIT本部は2回目の転機を迎えた。

「『ITのシステムは問題なく動き続けるもの』と捉えている方も多い。しかし、人間が作っているものですから、不具合も問題も起こります。そこで、『問題をなくす』から『問題は起こるもの』と意識を変え、トラブルが起こる前提で物事を進めることにしたのです」(北澤氏)

なぜ、そのように変えたのか。

「『問題が起きなくて当然』と考えると問題の発見も報告も遅れてしまいますが、『問題はある』という意識で確認すれば、いち早く見つけられますし、早めに修正することでトラブル対応の時間も減ります。その結果、この3年ほどでだいぶ障害が少なくなりました」

北澤氏はこの意識改革を部署内のメンバーに徹底すると同時に、関係部門にも「問題は起こるもの。その前提で動く必要がある」と説明し続け、理解を得ていった。

さらに、もう1つの意識改革も進めている。それは「自ら課題を見つける」という意識の浸透だ。

「社内ユーザーから求められたものを提供する部署なので、ともすると、言われたことだけをやるという姿勢になりがち。例えばすでにあるシステムを生かせばコストもスピードも改善できるのに、言われるままにシステムを作るといったように。

そこで、『システムを提供しているのではなく、その先にある事業を提供している』『会社に投資してもらってサービスを提供している』という意識を浸透させるようにしました」(北澤氏)

システムには品質と同時にスピードも求められる。それを両立するには、一人ひとりが自ら課題を探すしかない。それまで社内ユーザーの要件書を受け取るだけだったエンジニアも、検討段階から話し合いに参加するようになっていった。結果、品質とスピードの両立もしやすくなったという。

「2021年3月、携帯電話のオンライン専用ブランド『LINEMO』のサービスを開始しました。従来なら半年以上かかっていたシステム構築を、私たちは約3カ月で進められました。意識改革が功を奏しているといえるでしょう」(北澤氏)

「出社・在宅の状況」「オフィス混雑度」がわかるシステムを実現

ソフトバンクでは、働き方改革推進の一環として、「Smart & Fun!」をスローガンに掲げ、ITツールなどを活用してスマートに楽しく仕事をすることで、イノベーティブでクリエイティブな企業として成長し続けることを目指している。

また、育児と仕事を両立させるための各種人事制度や、コロナ禍での在宅勤務の推進など、状況に応じて柔軟に働くための環境が整っている。そんな中、浅井氏は育児のために休暇を取得した。

「2人目が生まれる時期にコロナ禍で上の子の小学校が休校になりまして。妻一人で上の子の面倒も見るのは現実的ではないので、休むことにしました。『男性管理職の僕が休暇を取得すれば部下もみんな取りやすくなるのでは』と思って上司に相談すると、快諾してもらえました」

育児休業を取得することも検討したが、自身に合った働き方や周囲への影響も考え、週5日の勤務日のうち4日は年次有給休暇を利用して休み、週1日だけ在宅で働くスタイルを約1カ月半続けた。

「まず思ったのが『やればできる』ということ。もちろん周りのフォローがあったからできたことですが、こうした働き方ができる体制がすでに整っていたことに気づきました。育児休業制度の利用はもちろん可能ですが、私と同じスタイルで育児に合わせて休暇を取った男性もいます」(浅井氏)

休暇を経て、「こうしたらいいのでは」という提案もできた。誰が在宅で誰が出社しているかが一目でわかるシステムや、出社時にオフィスの混雑度合いを把握できる仕組みを考え、実現させた。どちらも、これまでとは違う働き方をしたからこそ気づけたものだという。

「私の場合、パソコン1台あればどこででも仕事ができますから、業務内容や状況に合わせて、在宅と出社のベストミックスを見つけていきたいですね」(浅井氏)

意識改革や働き方の多様化など、進化を続けるコーポレートIT本部。ソフトバンクの成長によってその重要性はますます高まっている。コーポレートIT本部を率いる北澤氏はこう締めくくった。

「ITは進化が速く、これを知っていれば安泰というものはありません。だからこそ、成長したい人、自ら考え、学ぶ力がある人とぜひ一緒に働きたいですね」