NTTアーバンソリューションズがめざす未来 「人(ヒト)中心」の街づくりとは。

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NTTグループは中期経営計画「Your Value Partner 2025」における柱として、「街づくりの推進」「地域社会・経済の活性化への貢献」を掲げている。グループの街づくり事業の中核となるのがNTTアーバンソリューションズだ。ヒト中心の街づくりを支える技術「街づくりDTC®(デジタルツインコンピューティング)」をはじめとするNTTグループならではのICTにも特色がある。

次世代型先端オフィスなど、街づくりを推進

2022年1月、名古屋市営地下鉄「久屋大通」駅より徒歩1分(地下街直結)の立地に、これまでのオフィスビルとは一線を画した次世代型の先進オフィスビル「アーバンネット名古屋ネクスタビル」が竣工した。

撮影:Forward Stroke inc.

このビルは、NTTアーバンソリューションズとNTT都市開発が開発を行った次世代型先進オフィスビルの第1号物件だ。NTTグループのデジタル基盤を生かし、ワーカーの多様な働き方を支援する点に特色がある。例えば、新たに導入された自社開発のアプリ「tocoto™」にてビル共用部や飲食店、屋上のスカイテラスの混雑状況を確認することができ、目的に応じて働く場所を自由に選択できる。それだけでなく、ランチ予約、トイレの満空情報、イベント情報等の確認も可能だ。

さらにエレベーター前のゲートで顔認証をすると、行先階が自動で認識され最適なエレベーターを案内するなど、タッチレスでの入館だけでなく、エレベーターの効率的な運行、待ち時間の最小化なども実現する。

同物件の環境対策にも注目したい。共用部・専有部すべての商用電力でトラッキング付き非化石証書を利用し、竣工時から実質再生可能エネルギー100%とすることで入居する企業は実質CO2排出量ゼロの電気を利用することができる。ワーカー一人ひとりのパフォーマンスの最大化だけでなく、SDGsに貢献するビルとしても注目されている。

NTTグループの街づくりの中核を担うNTTアーバンソリューションズ

読者の中には「アーバンネット名古屋ネクスタビル」を開発したNTTアーバンソリューションズの社名になじみのない人もいるかもしれない。それもそのはず、同社は2019年7月に発足したばかりのNTTグループの主要会社の一つだ。総合不動産会社のNTT都市開発と、建築・エネルギーの専門集団であるNTTファシリティーズを傘下に、NTTグループの総合力を活用した、NTTグループならではの街づくりを推進するのが役割だ。また、2021年7月には街づくりのシンクタンク機能を担うNTTアーバンソリューションズ総合研究所、街づくりのマネジメントサービスを担うNTTアーバンバリューサポートが加わった。地域社会が抱えるさまざまな課題と向き合い、NTTグループがもつICT、不動産、エネルギー、環境技術などのリソースを最大限に活用することで、地域の皆様の街づくりをサポートする企業として事業を推進する。

NTTグループは全国に大きな不動産資産を有している。グループが有する電話局は7000拠点、オフィスビルも1500拠点に達する。従来、これらの資産の一部は有効活用することを求められてきた。そこで、NTTアーバンソリューションズが中核会社となり、これらのリソースを最大限に活用した街づくりを展開する考えだ。

NTTグループの街づくりの特長の一つとして、地域の自治体、行政、企業などと、コラボレーションしながら開発していく点がある。これらとのパートナーシップを重視しながら、各都市・地域の課題を解決し、歴史や文化など地域の個性を生かした街づくりをめざしてきた。

すでに特色ある事例も生まれている。例えば、京都市の「新風館」(2020年3月竣工)は、京都市指定・登録文化財である旧京都中央電話局を生かしたホテル・店舗・映画館の複合ビルだ。アジア初となる「エースホテル京都」をはじめ、20のショップ&レストラン、ミニシアターをそろえ、隈研吾氏デザインの建物とともに京都の街の魅力をさらに高める。

撮影:Forward Stroke inc.

同じく京都市に2019年10月に竣工した「The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu(ザ・ホテル青龍 京都清水)」は、昭和初期に建築された小学校校舎を上質なヘリテージ(遺産)ホテルに生まれ変わらせたものだ。館内の随所に小学校時代の面影を残し、居ながらにして語り継がれてきた歴史・文化を体験できるホテルとなっている。

撮影:Forward Stroke inc.

NTTアーバンソリューションズがめざす未来の街づくりを伝えるキーワード「わが まち みらい」

まるでSF映画に出てくるようなサービスが、同社が手がける街づくりにおいて実際に展開されようとしている。利用者のお気に入り店舗などの嗜好や、オフィス・街区における行動履歴、注文情報などを収集したうえで、その時の状況や飲食店の混雑状況を加味し、最適なランチをリコメンド(推奨)する。さらに行動を先回りし、移動手段や建物の空調などの環境も整える。

これらはNTTグループが保有する東京・品川のオフィス施設で2021年から取り組んでいる、実証実験「街づくりDTC®」の一環だ。まさに街そのものが一人ひとりに合わせて「パーソナライズサービス(おもてなし)」を提供する、そんな未来が間もなくやってこようとしている。

NTTアーバンソリューションズでは、そうした街づくりDTC®によるプロモーションのメッセージとして「わが まち みらい」(https://www.ntt-us.com/waga-machi-mirai/)を掲げ、イメージキャラクターに鉄腕アトムを起用し、最新の情報を提供している。

街づくりDTC®を活用し、成長し続ける街づくりを実現する

NTTは2030年ごろの実現をめざして、次世代コミュニケーション基盤「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」の研究開発を進めているが、「DTC」はその主要技術分野の一つに位置づけられている。「DTC」とは、デジタルツインコンピューティング(Digital Twin Computing)のこと。現実世界からリアルタイムにデータを取得して仮想空間に再現したデジタルツイン(DT)同士を掛け合わせてシミュレーションし、それを現実世界にフィードバックすることで、分野を横断した価値の実現をめざす。

このように、街づくりにデジタルを活用することが新たな価値創造につながることは改めて言うまでもないだろう。前述したランチのリコメンドのほか、街区管理、店舗運営、モビリティ、飲食フードロス、テナント運営など、さまざまな領域でDTCを活用していく。さらにはこれらを連携することで、街全体の成長も加速できる。

NTTグループは街づくりDTC®をはじめ、ICTによって複合的なソリューションを提供できるのが大きな強みだ。ただし、決して「テクノロジーありき」ではない。NTTアーバンソリューションズがめざすのはあくまでも「人(ヒト)中心の街づくり」である。また、街の価値の持続には「街の運営」が大切だ。主役は人・街であり、デジタルはサポート役なのだ。ICTを意識せず使っているもの、使いたくなるものであることが重要だ。

NTTアーバンソリューションズでは、自治体、企業、交通機関、商店街、店舗、教育機関、医療機関、文化施設など、街づくりに関する多様なステークホルダーとの協力関係・信頼関係をベースに進めていく考えだ。特に企業においては、流通、エネルギー、小売り、ヘルスケア、ロボットなど、さまざまな産業のプレイヤーの参加を歓迎している。多くの賛同者が集まり、未来の街づくりが加速することが期待される。