入山章栄「正解なき時代、勝てる人材になる方法」 戦略策定を担うなら「人材ビジネスが面白い」訳

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定年まで1つの企業に勤めることが当たり前だった時代から、転職やパラレルキャリアといった選択が何ら特別ではない時代へ突入した。とはいえ不透明な情勢を前に、身動きが取れないでいる人も少なくないだろう。「持続的な成長を期待できる企業とは」「これから自分はどのような会社で、どのような価値を生み出すべきなのか」――キャリアを展望するヒントを得るため、経営学者で早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授と、ビジネスの最前線に身を置く3人を直撃した。

今こそ「人材ビジネスが面白い」理由

激しい時代の変化に左右されず、持続的に成長する企業に求められることとは何だろうか。入山章栄教授は企業が発展を続け、経営を長く維持するために必要な理論として「両利きの経営」を挙げる。この理論によると、重要なのは2つ「既存の事業の深掘り(深化)」と「新たな事業機会の発掘(探索)」だ。日本企業は深化に優れているが、探索は手薄だと入山氏は指摘する。

「人間には認知の限界がありますから、イノベーションはつねに『既存の知と既存の知』の組み合わせで生まれます。よって目の前にある知、少し遠くにある知など幅広い知を組み合わせることが求められます。両利きの経営は深化と探索のバランスを取っている状態が望ましいわけです。例えば中途採用や社内ベンチャーの推進、新規事業の立ち上げなども知の探索の一種。ただ、多くの企業は知の探索がうまくいっていません」(入山氏)

早稲田大学大学院経営管理研究科
早稲田大学ビジネススクール教授
入山 章栄
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。 19年から現職。専門は経営戦略論、国際経営論。19年『両利きの経営』(東洋経済新報社)監訳

では、個人はどうだろう。求められ続ける人材になるためには、どのようにキャリア形成を考えていくべきなのか。

「これからは一人ひとりがキャリアオーナーシップを持つことが求められる時代です」。入山氏はそう強調する。キャリアオーナーシップとは、自らのキャリアはどうありたいか、どのように自己実現したいかを意識し、自分自身が納得のいくキャリアを築くための行動や努力をすることを指す言葉だ。

「かつては有名大学を出て、大企業に就職することがキャリアの“正解テンプレート”でした。ところが今、これだけ変化が激しい時代を迎え、キャリアの正解はどこにも存在しなくなりました。じゃあ、働く個人はどうすればいいか。1つは自分自身でキャリアのビジョンやパーパスを確立させること。もう1つは、それらを達成するための意思決定力を持つことです」(入山氏)

こうして雇用の流動化が予想される中、いよいよ日本の中堅社員にも「大転職時代」が到来すると入山氏は見ている。とくに転職市場でニーズが高まるのは、「人材戦略を描ける人材」だろうと入山氏は語る。

「あらゆる観点から、企業は人材に投資する重要性を理解しています。企業の非財務情報である人材戦略を社内外に向けて明らかにする『人的資本開示』も、近年とても注目されています。だからこそ、今面白いのは『人材ビジネス』。結局のところ組織の肝はヒトですから、得られるやりがいは大きいでしょう。顧客となるさまざまな規模・業種の経営者や人事責任者と同じ目線で、各社の組織・人事課題の解決に携わる経験ができるうえ、顧客企業で働く社員の成長を目の前にできるので、肌触り感もあります

キャリアオーナーシップで自分の価値を最大化

実際に両利きの経営を実践し「知の探索」に邁進している企業が、パーソルキャリアだ。転職や、同社内での職種転換といったジョブチェンジを経験しながらキャリアオーナーシップを発揮している社員3人に話を聞いた。

東海林孝之さんは、新卒で大手コーヒーチェーンに入社。コンサルティングファームや通販業界を経て、パーソルキャリアに入社した。現在は、企業に上級役職経験者や専門家を紹介するサービス 「i-common(アイコモン)」を主要プロダクトとするタレントシェアリング事業部で、事業企画全体を管掌している。

東海林 孝之(しょうじ・たかゆき)
タレントシェアリング事業部 事業企画統括部 エグゼクティブマネジャー

「当社の基幹事業は人材紹介事業と転職メディア事業ですが、i-commonは業務委託をメインとする、非転職領域の事業です。具体的には、経営課題を抱えている企業に、上級役職経験者や専門家などエグゼクティブ人材を紹介するサービス。個人のスキルを生かして、企業の課題解決に導くというビジネスモデルですから、広義の意味では、副業やフリーランス人材の活用支援ともいえます」(東海林さん)

正規雇用によらない働き方の創出を目指し、現在も新たなプラットフォームの構築にチャレンジしていることに、仕事の面白さを感じているという。

「企業と個人をつなぎ経済的な価値を高めるという人材ビジネスの基礎構造に、自分が直接的に関われていることに喜びを感じます。この人材マーケットを開拓して『新しい当たり前』をつくれることや、自分の手がけた事業が世の中に価値をもたらしているという実感があり、非常に刺激的で面白い仕事です」(東海林さん)

また、同じくタレントシェアリング事業部に所属する吉原貴子さんは、社会的意義のある人材ビジネスに携われることを誇りに思っているという。

吉原 貴子(よしはら・たかこ)
タレントシェアリング事業部 事業企画統括部 カスタマーサクセス部 ゼネラルマネジャー

「今、働き方の多様化が急速に進んでいます。個人事業主や副業人材の労働環境、今後整備・拡充が進むであろう関連法規を注視しながら、自社のサービス規約やオペレーションを整備していく職務には、とても社会的意義があると感じています。また当社は政府や公的機関から意見を求められることも多く、こうした世の中の大きな変化に立ち会っているという臨場感があります」(吉原さん)

採用活動は、多くの企業にとって「非日常」だ

もちろん同社は、新規事業のみならず、既存事業のアップデートにも積極的だ。パーソルキャリアの中核事業である転職・採用サービス「doda」では、対企業には採用力の強化、対個人には機会の最大化という価値を提供してきた。石上篤史さんは、メディア営業、営業企画といった職種を経て、現在は事業企画全体を統括している。

石上 篤史(いしがみ・あつし)
採用ソリューション事業本部 採用ソリューション企画統括部 エグゼクティブマネジャー

「多くの企業にとって、採用は非日常の活動です。だから、日常的に顧客との接点を深めておくことで企業の課題解決に役立てるのではないか。そう考えて新サービスを検討しています。競合も多い分野ですから、ただ既存事業を維持するだけでは、顧客体験を向上させることはできません。これまで当社が築いてきたノウハウや顧客との関係性をベースに、『知の深化』と『知の探索』を深めていく。これが、私の組織のテーマです」(石上さん)

3人は、「パーソルキャリアは意思決定の速さに特徴がある」と口をそろえる。「経営層とフランクかつフラットなコミュニケーションができる点にも、風通しのよさを感じます。事業企画・営業企画といった職種で新しいことにチャレンジしたい人には、まさにぴったりの社風。人が好き、どんなことも面白がって取り組もう、というメンバーがそろった職場です」(石上さん)

ベンチャースピリッツを維持し、両利きの経営を地で行く組織で、自分の能力を開花させ生き生きと活躍する3人。先行き不透明な時代をもろともせず、まさに入山氏の言う「キャリアオーナーシップ」を持って、力強くキャリアを切り開いている。

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