中小経営者の必須任務「決断する」「プロを頼る」 WAmazing加藤氏が語る投資の手段と目的

日本ではなかなか進んでこなかった中小企業のIT投資だが、新型コロナ禍で状況は一変した。リモートワークの導入や非接触対応など、業種、業界を問わずデジタル化を推し進める必要に迫られている。そんな中、猛スピードでIT投資を果敢に実施するスタートアップベンチャーは、どのような考え方を持っているのだろうか。オンライントラベルエージェンシー、WAmazingの加藤史子CEOに話を聞いた。

スタートアップは躊躇なくIT投資に踏み切る

WAmazingは旅行者と観光事業者をマッチングするプラットフォームサービスを手がける、2016年創業のスタートアップ企業だ。訪日外国人旅行者に必要な情報やサービスを、スマホアプリ、ウェブサイトを使ってワンストップで提供してきた。自社のサービス開発について、加藤史子CEOは次のように語る。

「当社はオンライントラベルエージェント事業を手がけており、多岐にわたるソフトウェア開発を内製で実施しています。全国22カ所の空港に設置している無料SIMカード配布マシンや外国人向けインバウンド鉄道切符の受け取りができる専用機といったハードウェアも開発しています」

新型コロナウイルスの感染拡大まで訪日外国人旅行者は右肩上がりで増え続け、19年には3188万人にまで達した。その市場は約5兆円あり、その8割はアジアからやって来た20~30代のスマホ片手に個人自由旅行をするFIT(Free Individual Traveler)と呼ばれる人々だ。WAmazingの事業は、ニーズを確実に捉えて成長していった。

だが、観光業界において、これは一部のスタートアップに限られた話だ。約3000万人の外国人が日本に押し寄せていても、日本の旅行業界ではDXが進んでいなかった。なぜなら、日本人市場のほうが約24兆円(国内外合算)と大きく、その顧客はシニア層が多いため、4大メディアを使った従来型マーケティングが主流だったからだ。

WAmazing 加藤 史子CEO

そして新型コロナウイルスの感染拡大が2020年から本格的に始まる。

WAmazingの動きは早く、訪日外国人が日本に入ってこられないと見るや、注力分野を変え、今では観光事業者のDX支援に大きなリソースを割いている。例えば、山形市および蔵王温泉スキー場が推進していた観光DX事業の事例では、スキー場でゲレンデと駐車場のリアルタイム混雑状況や飲食店情報、オンラインでのリフト券販売などを集約したウェブプラットフォーム開発を支援した。オーバーツーリズムによる混雑の緩和や、リフト券のキャッシュレス販売および自動発券の導入で、利便性の向上や感染リスク低減に貢献している。これらのリソースの転換や思い切った投資ができる背景には、加藤CEOが明確な目的を持って行動していることがある。

「開発や投資を決断する際に重視しているのは、ユーザーの価値向上です。例えば、現場のオペレーションの負担が減り人手不足解消に役立つ、あるいは駐車場の大混雑が解消しスムーズにスキー場に行けるようになるといった、何らかの顧客価値を観光業者や旅行者に対し生み出しているかどうか。デジタル化はあくまで手段であって、目的ではありません。『はやっているからうちも遅れないように』といった理由で投資をしていたら、何をもってROI(投資収益率)を測定すればいいかすら、わからなくなってしまいます」

中小企業経営者でも必須となったITリテラシー

そもそもスタートアップは中小企業の一形態ではあるが、TAM(Total Addressable Market:獲得できる可能性のある市場全体)で急成長する事業モデルを描き、投資を先行させて市場を獲得しにいくスタイルだ。赤字続きになっても、投資はスピード重視でトップラインを伸ばすほうが優先される。

したがって、「周辺にいるスタートアップで、IT投資が遅れている企業は見たことがない」(加藤CEO)となる。そうした視点からはスピードが遅いと指摘されがちな、一般的な中小企業のIT投資はどのように映るだろうか。

「われわれはデジタルネイティブな旅行者と、ホテルや旅館、集客施設といった事業者を結ぶプラットフォーマーです。接点のある事業者は中小企業が多いのですが、お声がけしても基本的には『よくわからないのであまりやりたくない』というスタンスの企業が多い。もちろん世の中がデジタルの方向に動いているのは理解していても、未知なものへのチャレンジはコスト負担やオペレーションへの影響などがあり、心理的なハードルも高いためです」

しかし、こうした状況は新型コロナ禍で一気に変化したという。ITへの投資なしに、コロナ禍で事業を継続することが難しくなったからだ。

「ウェブ会議を開催できる環境がなければ誰ともミーティングができませんし、テーマパークが入場者を制限するにはネットで事前に予約できるようにする必要があります。いわば強制的にIT投資への姿勢を変化させられたのですが、その結果、IT投資の重要性やメリットを理解された企業は少なくないと思います」

今後、IT業界だけにとどまらず、あらゆる業種、業態がITとは無関係ではいられない。例えば介護業界のような労働集約的で一見、ITとはあまり関係がなさそうな世界でも、介護記録入力の効率化や、介護施設でのセンサーによる健康管理や見守りなどが進んでいる。その結果、自然とデータがたまっていき、それがさらなる付加価値を生む重要な資産となりうる。

だが、ここで注意したいのはその管理方法だ。さまざまな手法の中でも、顧客データなどの機密性の高い情報であれば、自社内にサーバーを設置するという、より安全な選択肢がある。さらにその不具合もケアすべきであれば、必要に応じてバックアップも可能だ。サーバー1つとっても、環境や用途によってさまざまな手段があり、自社の事業にベストな手法を検討したほうがいいだろう。

では、経営資源が限られ、知識や経験も不足している中小企業がIT投資を適切に実施していくにはどうすればよいか。

その第一歩は、経営者自身がITに対する理解や感度を高めることだと加藤CEOは指摘する。すべての業種がITとは無関係ではない状況下では「ITリテラシーは経営者にとって財務諸表の理解と同じレベルで必須のスキル」であり、「自分で判断を下せないようであればITリテラシーのある人材をボードメンバーに迎えるべきだ」とも。

つまり、適切な判断を下せる体制を整えることが、中小企業がIT投資を進めていくために重要というわけだ。そのうえで、経営資源に限りのある中小企業は社外のプロフェッショナルを用いたアウトソーシングの活用も有効になるという。

「社内に情シス担当者をたくさん配置できる企業は、世の中にそうはありません。自社ですべてIT開発を行うのも、ハードルが高い。そうなると、コストとの兼ね合いなどを考えながら、必要な業務や開発を外部のプロにアウトソーシングしていくことは、中小企業にとって非常に有用な手段になると思います。事前にIT投資を実施した際のシミュレーションはできても、実際にどんな結果になるかはわかりません。その難しさはありますが、経営は不確実な未来に対して何らかの判断を下すことの連続です。この人を採用したら会社にどれだけ利益をもたらすか、確実にはわからないのに社員採用を行っているように、現時点では不確実性があっても、大きな方向性を間違えずに適切な判断を下し、実行していくのが経営者の仕事だと思います」

観光業界に限らず、不確実性が増す現代では中小企業のIT投資は待ったなしだ。自社のIT投資を考えるとき、真偽不明な口コミや一部の情報を頼るのではなく、知見を持つプロを頼ることが最初にすべき経営者の判断なのかもしれない。

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