J.P.モルガンが考えるESG投資の「判断基準」とは ネットゼロ時代、迫られる運用戦略の再構築

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近年、グリーンボンドやソーシャルボンドなど持続可能性を意識した、いわゆる「ESG債券」の発行額が世界的に急増している。ネットゼロ時代に向けて、ESG投資に高い関心を示す機関投資家や年金基金等のアセットオーナーも増えたが、一方で、明確な基準やガイドラインがなく、投資判断に難しさを感じる人は多い。彼らに道筋を示すのが、J.P.モルガン・アセット・マネジメント。すべてのアクティブ投資戦略において、ESG要素を組み込んだ運用を行うという。その投資判断の「基準」に迫った。

ESG投資の本格化で戸惑う機関投資家

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
機関投資家営業部サステナブル・インベスティング担当
岡田 千枝

金融市場において、気候変動リスクなどを投融資の判断材料に加えるESG投資がスタンダードとなりつつある。これまでの投資運用方針・戦略が通用しない部分もあり、「日本でも2021年に入ってから、機関投資家や年金基金などからの問い合わせが非常に増えています」と話すのは、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下、同社)の機関投資家営業部サステナブル・インベスティング担当、岡田千枝氏だ。問い合わせの内容は、どのような基準でどのような投資判断をすればよいのかなど、いまだESG投資の定義が不明確であることに起因するものが多いという。

J.P.モルガン・アセット・マネジメントは、グローバル総合金融サービス会社、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(以下、JPモルガン・チェース)傘下の資産運用部門だ。JPモルガン・チェースは、ニューヨークで1799年に創業※1され、現在では世界100以上のマーケットで事業を展開している。世界の銀行時価総額でもトップクラスの規模を誇る※2

J.P.モルガン・アセット・マネジメントは、世界約30カ国・地域にネットワークを持ち、運用資産残高約287兆円を有する※3、世界有数のアクティブ運用会社である。

JPモルガン・チェースおよびグループ各企業は、グローバルな総合金融機関として気候変動問題の解決に重要な役割を担っていると考えている。そのためJPモルガン・チェースは国連環境計画・金融イニシアティブが発足させた「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」に参加するほか、気候変動対策および持続可能な開発の促進のための資金として21年〜30年末までの10年間で2.5兆米ドル強の提供を金融機関として後押しするなど、主体的にESGに取り組んでいる。

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
専務執行役員
小松 薫夜

J.P.モルガン・アセット・マネジメントもグループの一員として、世界の資産運用会社大手が集まり投資先企業へ脱炭素化を働きかける「ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ」に参加するなど、ESG推進に積極的だ。同社専務執行役員の小松薫夜氏は「ESG投資という言葉が今日のようなトレンドになる以前から、JPモルガン・チェースはグループ全体として、つねに自分たちの業務が長期にわたり取引先や投資先のためになるのか、社会によい影響をもたらすものになるのかという視点を持ち続けており、ESGは私たちのDNAの一部となっています」と言う。それほど同グループのESGに対する思いは強い。

※1 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーの前身の1つであるザ・バンク・オブ・マンハッタン・カンパニーが1799年に設立された。
※2 グローバルトップ500の銀行・金融株時価総額ランキング。
出所:Bloomberg  2021年9月末時点。
※3 2021年9月末現在。1米ドル=111.58 円で換算。

専門チームが導くESG投資の正攻法

その土台となるのが、すべての資産クラスにおける「ESGインテグレーション」と、徹底した「インベストメント・スチュワードシップ」活動だ。

ESGインテグレーションとは、企業価値に影響を与えうるESG等非財務情報を投資判断に採り入れること。同社グループではグローバル全体で1000名以上在籍するポートフォリオ・マネジャーやアナリストが、企業の持続的な成長性を見極める運用プロセスの一環として、企業のESG要素を考慮し、分析を行っている。同社グループではすでに、株式や債券などの伝統資産からインフラを含むオルタナティブ資産まで、アクティブ運用のほぼ全運用資産において、ESGインテグレーションの導入を完了している※4

これに加え、資産運用に関する審議を行う投資委員会の直下に、専任の「サステナブル・インベスティング・チーム」(以下、ESG専門チーム)を設置。ロンドンをはじめ、ニューヨーク、香港、日本などの各拠点で、先述したESGインテグレーションのとりまとめとモニタリング、スチュワードシップ活動等に取り組み、そのデータや調査結果を運用チームと共有している。

さらにESG専門チームでは、データ分析やリサーチを専門とするメンバーが、ESGの観点でさまざまな分析やデータ構築を行い、顧客に寄り添う形でESG投資のソリューション設計を行っている。その際、大切になるのが「根幹となる理念」だと岡田氏は強調する。

「お客様が何に焦点を当ててESGに取り組んでいくのか、理念や目的と一致した行動基準を明確にし、実行していくことが大事です。この点において、私たちが自らのESG投資に対する基本的な考えや方針を開示し、実践していることは重要な意味を持ちます。何よりもお客様と同じ目線で課題を捉え、お悩みに共感することができる。そのうえで課題解決に必要な情報やデータ、ツール、そして自ら積み上げてきた知見をご提供する。さらに、グローバル市場における他の投資家の動向などの情報を共有させていただくことにより、それぞれのお客様のニーズに沿ったESG投資をサポートできる。これら全てが私たちの強みです。ESG関連の投資商品や評価方法のほか、レポーティングなどの実務面でも課題を抱える金融機関や年金基金などの投資家の皆様のお悩みに対して、私たちの経験とグローバルなネットワークがお役に立てると考えています」と岡田氏は語る。

一方、インベストメント・スチュワードシップ活動とは、アクティブ運用会社が自らの知見に基づき、投資先企業の価値向上や持続的成長を促すことを目的として行う、建設的な対話(エンゲージメント)や議決権行使などの取り組みのこと。同社グループは株式の投資判断者として、また同時に、機関投資家や年金基金などの代弁者として、投資先企業の経営陣と直接対話できる立場にある。投資先企業とのエンゲージメントに際しては、対話の焦点を明確にするためにグローバルで標準化した優先事項を設定。「ガバナンス」、「長期目標と戦略の整合性」、「気候変動リスク」、「人的資本の管理」、「ステークホルダーとのエンゲージメント」の5つの優先事項について、中期的なテーマを定めて対話を持ちかけている。また同社グループの実績として、1年間で、優先事項に関するエンゲージメントを約500件実施し、世界の80の株式市場にわたる上場企業の合計約8000回におよぶ株主総会において、議決権を行使している※5

インベストメント・スチュワードシップ活動における5つの優先事項は、同社グループが今も継続的に取り組んでいることでもあるが、「投資先企業にはその企業の独立性、経営方針などもあるので、決して私たちの視点や目標を押し付けることはしません。ただ、課題の解決に向けて経営陣の皆様方がESGをどのように意識し、行動につなげているか継続的に把握することが大事」(小松氏)だと考えている。

※4 2021年3月末時点で、運用資産全体の97%のESGインテグレーションを完了。
※5 J.P.モルガン・アセット・マネジメント 2020年12月末現在。
※6 J.P.モルガン・アセット・マネジメントが注目するESG投資のテーマ。

世界的運用会社の強みと共感力が大きなメリット

すべての資産クラスでESGインテグレーションがほぼ完了した今、「お客様からのご相談、ヒアリングを通じて把握したニーズにお応えすべく、お客様とともにESGやサステナブルをテーマとした投資戦略を考え、新商品の開発を含めて問題意識を共有していきたい」と小松氏は今後の展開に意欲を見せる。

例えば、カーボンニュートラル達成への貢献を意識した実物資産投資など、新たな資産クラスへの関心が高まっていることを受け、森林投資を手がける米国の運用会社キャンベル・グローバル社を21年夏に買収した。また、さらなる顧客ニーズに対応するために、インフラ、生物多様性、食糧問題などサステナブル関連の課題をテーマにした運用戦略や、サステナブルなテーマに合致した銘柄選定にAIを活用した運用戦略などを含む商品ラインナップの強化を図っている。

そもそもJ.P.モルガン・アセット・マネジメントは、取り扱う資産クラスが幅広く、それぞれのプロダクトの運用実績を支える1000人超のポートフォリオ・マネジャーやアナリストといったスペシャリストに加え、別働隊のESG専門チームによって構築されたESG投資のインフラが整っていることは、まさにグローバルなアクティブ運用会社ならではのアドバンテージだ。ESG投資に関するソリューションを求める機関投資家、年金基金などは、この分野の知識と情報、経験が豊富なJ.P.モルガン・アセット・マネジメントをアドバイザーとして活用してみてはいかがだろうか。

本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」という。)が作成したものです。本資料は投資に係る参考情報を提供することを目的とし、特定の有価証券の勧誘を目的として作成したものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。当社は信頼性が高いとみなす情報等に基づいて本資料を作成しておりますが、当該情報が正確であることを保証するものではなく、当社は、本資料に記載された情報を使用することによりお客様が投資運用を行った結果被った損害を補償いたしません。本資料に記載された意見・見通しは表記時点での当社の判断を反映したものであり、将来の市場環境の変動や、当該意見・見通しの実現を保証するものではございません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。
J.P.モルガンは、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーおよびその各国子会社または関連会社のマーケティングネームです。J.P.モルガン・アセット・マネジメントは、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーおよび世界の関連会社の資産運用ビジネスのブランドです。

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