茨城県圏央道に「次世代成長産業」が集まるワケ ポスト5G、半導体、EVも引きつける源泉とは
※2 2022年度から24年度にかけて順次開通予定
4車線化が進む圏央道、交通網への高い評価
経済産業省は2021年10月、「令和2年(2020年)通年工場立地動向調査結果(確報)」を発表した。茨城県は工場立地件数(65件)および県外企業立地件数(38件)で全国1位、工場立地面積95ヘクタールも全国2位と強みを見せたが、圏央道沿線をはじめとする県南・県西地域への立地が8割弱を占める。

同地域には、自動車大手の日野自動車(古河市)や食料品大手の雪印メグミルク(阿見町)、電機資材器具の製造を行うネグロス電工(阿見町)や医薬品製造を行う日本ジェネリック(つくば市)など、近年、数多くの大手企業が立地した。
圏央道沿線地域への立地が進んでいる最大の理由は、交通網の整備が進んでいることだ。この地域は、都心への距離が40~60キロメートル圏とアクセスが良好。17年2月には圏央道の茨城県内区間が開通し、東名高速・中央道・関越道・東北道など6つの高速道路と結ばれた。これにより都心を通過せずとも全国各地へアクセスが可能になるなど、利便性が飛躍的に向上した。さらに、久喜白岡JCTー大栄JCTの区間では4車線化工事が進んでおり、22年度から24年度にかけ順次開通予定だ。
また、鉄道網も充実している。つくばエクスプレス(TX)はつくばから秋葉原までを約45分で結び、土浦から東京までを結ぶ常磐線も特急を利用すれば約50分で到着する。
割安な工業用地と茨城県ならではの優遇制度
アクセスのよさに加え、割安な用地も魅力だ。県内の工業地平均地価は1平方メートル当たり2万700円で、圏央道沿線の他県と比較しても安価なことがわかる(令和3年都道府県地価調査による)。つまり茨城県に進出する企業は、同じ金額でより広い面積が確保できるということだ。
充実した優遇制度に注目すると、その核となっているのが「本社機能移転強化促進補助金」だ。これは、AI、IoT、ロボット、次世代自動車といった新たな成長分野の本社機能や研究開発拠点の茨城県への移転を支援するもので、上限50億円という全国でもトップクラスの補助額が設定されている。
本社機能移転については、県内ではこれまでに計22社の企業が認定を受けている。建設機械大手の日立建機(土浦市:インタビューコラム参照)、顔料や着色剤大手の大日精化工業(坂東市)、空調設備大手の高砂熱学工業(つくばみらい市)、化学大手の積水化学工業(以下、いずれもつくば市)、自動車関連の研究開発を行うスウェーデンのオートリブ、製薬大手のエーザイなど、圏央道沿線の県南・県西地域へも多くの移転が実現している。
次世代産業集積地として海外企業からも熱視線
茨城県の圏央道沿線地域を拠点に、次世代産業を見越した新たな取り組みも始まっている。半導体の受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、日本初の研究開発拠点としてつくば市を選んだ。同事業は経済産業省の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(助成)」に採択されたものだ。県は、半導体メーカーや研究機関が集まる同市の県有地を「最先端リサーチパーク」と位置づけ、半導体関連の研究開発・生産拠点のさらなる集積形成を目指すという。
ここでいくつか注目の工業団地を紹介しよう。
「稲敷工業団地」(稲敷市)は、成田国際空港や鹿島港に近接しており、国際物流の拠点として優れている。「仁連工業団地」(古河市)は、圏央道境古河ICまで約7キロメートルという立地で、新4号国道へのアクセスも便利だ。
このほか、境町では圏央道境古河ICに直結した工業団地を造成中だ。なお同町では自治体初となる自動運転バスの公道運転が開始されるなど、先進的な取り組みが注目されている。
また、常総市では、圏央道常総IC周辺で地域農業の核となる食と農と健康の産業団地を形成するアグリサイエンスバレー事業を進めている。高まる企業進出のニーズに応えるため、県は工業団地開発を継続する方針だ。
坂東市の新工場を事業拡大のフラッグシップに

茨城県内での一貫した生産・開発でシナジー創出を目指す

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